第115話 そして解決へ

 四宮が帰った後の部屋にはしばらく静寂が流れていた。


「親父、あいつ何者なんですか?」


 その静寂を破ったのは若頭の男だった。


「四宮渉って聞いた事ないか?」

「四宮……」


 若頭がしばらく考える表情を浮かべる。


「まあ、お前さんは知らないか。最近は裏社会には関わって来なかったからな」

「すみません」

「影の天才、そう呼ばれたアイドルプロデューサーだよ」

「ただのアイドルプロデューサーって訳じゃないですよね」


 ただのアイドルのプロデューサーが夏目宗一郎などという男と繋がりを持てるはずがない。


「あいつの顔の広は尋常じゃない。アイドル業界から政財界、裏社会どこにでも知り合いがいる」

「じゃあ、親父の言っていた絶対に敵に回しちゃいけないって言っていた男って……」

「ああ、彼の事だ。ワシらみたいなもんが、あいつを裏切ったらこの街、いや、この国ではもうやっていけないだろうな」

「そんなに凄いんですね……」

「お前も気をつけろよ。ただ、あいつほど面白い男もなかなかいないけどな」


 アイドルにしか興味の無いアイドルヲタクかと思ったが、そのアイドルの為なら自分が持てる人脈の全てを使う。

アイドルのプロデューサーという職業はあいつにとって転職なのだろう。


「この件、お前がうちのもん使って調べてくれ」

「分かりました」

「急ぎで頼むぞ。あいつとはこれからも仲良くやって行きたいからね」

「すぐに取り掛かります」



 ♢



 俺が調査を頼んでから三日が経過しようとしていた。

スマホが短く振動する。


『終わったぞ』


 メッセージにはそれだけが書かれていた。

しかし、その一言が全てを表している。


『ありがとうございます。今日の夕方にお伺いします』


 そう返信すると、俺はスマホを机の上に置いた。


 そして、その日の夕方に再び夏目の元へと向かった。


「お邪魔しますよ。親父さん」

「おお、来たか」

「お手数おかけしましたね」

「いや、うちの島で問題起こされたらこっちも困るんでね。それじゃあ、本題と行こうか」


 俺は親父さんの対面のソファーへ腰を下ろす。


「やはり、半グレ連中が裏で糸を引いていた。今回はその半グレ連中を話をつけて来てからもう、うちの島で商売するからことはないだろう」


 実行している連中もバッグに反社会的組織の人間がいたからこそ堂々と動けていたのだろう。

その後ろ盾を無くしたら、もう自分達だけではやっていけないだろう。


「なるほど。これで、当面は大丈夫そうですね」

「ああ、お前さんたちの営業妨害するようなことは無くなるだろうな」

「本当に助かりました」

「気にすんな。また何かあったこっちからも頼むかもしんねぇからな」

「いつでもどうぞ」


 そこから、少し近況を話して俺は親父さんの元を後にするのであった。

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