第95話 エリースの撮影

 翌日、談冬社の月刊少年エーリスのグラビア撮影の当日だった。

撮影の時間に間に合うように俺は準備を済ませると、撮影スタジオがある渋谷へと向かっていた。


 渋谷までは少し距離があるので、電車で40分ほどかかってしまう。

渋谷の駅から今回のスタジオまでは徒歩で15分ほどの場所であった。


 俺はスタジオに到着すると、エレベーターで3階に上がった。


「お疲れ様です」


 スタジオに入ると、すでに関係者が集まっていた。


「お疲れ様です。本日はよろしくお願いします」


 談冬社の編集部の人間が俺に声をかけてくる。


「こちらこそ」


 軽く挨拶を交わすと、俺はスタジオ内を見回した。


「兄貴!」

「おう、お疲れ」


 貴雄も既に準備を始めている様子だった。


「今日も頼むぞ」

「任せてくださいよ! バッチリ可愛く撮りますから」


 相変わらずのおちゃらけた立ち振る舞いをしているが、腕は確かなので何も言えない。


「はいよ」


 俺は左腕につけている腕時計を確認する。

そろそろWhiteのメンバーが到着してもいい頃である。


 メッセージを見るに、迷っているという様子ではなさそうだ。


「おはようございます」


 スタジオの入り口に目を向けると、莉奈たちの姿があった。

時間ぴったりでさすがである。


「おはよう。まず、ヘアメイクしてもらってそれから着替えを済ませてくれ」

「わかりました!」


 そう言うと、メンバーたちはヘアメイクへと向かった。


「終わりましたー」


 それぞれ違う髪型のアレンジをしており、改めて見ても全員可愛いと思う。


「じゃあ、早速始めてくれ」


 今日の衣装はメイド服と高校の制服のコスプレらしい。

一定層には需要のありそうな雰囲気である。


 まずは、メイド服の方で撮影が始まる。

撮影は貴雄に任せておけば大丈夫だろう。


 俺は、撮影の邪魔にならないところで眺めていた。


「兄貴、終わりました。確認します?」

「いや、俺は出版社からの色稿で確認するから大丈夫だ。その辺はお前を信用してる」

「嬉しいこと言ってくれますねぇ」


 撮影は1時間半ほどで終了した。

メンバーの着替えを待って、数分。


 着替え終わったメンバーとスタッフに挨拶をするとスタジオを後にした。


「お疲れさま。俺は少し寄っていくところがあるから」


 駅までメンバーを送って行くと、改札の前で言った。


「わかりました。お疲れ様でした」

「お疲れ様です」

「お疲れ様でした」


 改札の中に消えていく3人の背中を見守る。

メンバーはこれからレッスンがあるのだ。

レッスンの場所まではここから少し距離がある。


 俺はメンバーたちが、見えなくなると俺は次の目的地へと向かう。


 スーツのポケットからスマホを取り出すとメッセージアプリを起動させる。

宮崎琴美の名前をタップするとメッセージを送信するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る