第80話 女性層を取り込むには
資料を広げている時に、店員さんがアイスコーヒーとカフェラテを持ってきてくれた。
そのコーヒーを飲みつつ俺は話しを進めていく。
「これを見てくれたら分かるように、俺が担当しているWhiteは女性ファンがかなり少ない」
広げてある資料はファンの男女比を示すものである。
これは、特典会に来てくれるようなファンから計算したものである。
「それで、女性ファンを増やしたいってこと?」
「その通りだ。葵は7割くらいが女性ファンだろ?」
元キャバ嬢なのでもちろん、男性のフォロワーも一定数いる。
しかしながら、女性人気もすごいものがある。
「じゃあ、この私が女性ファンを増やす秘訣を伝授しようではありませんか」
「よろしく頼む」
俺はそう言うと、コヒーを一口飲んだ。
「まず、女性ファンを惹きつけるには、外見に対する努力がマストなの。例えば、整形とかダイエットとかメイクが分かりやすいと思うけど」
確かに、可愛い女性というのは女性ファンも付いている印象がある。
「整形は別として、ダイエットの情報とかをSNSで発信していくのは悪くない戦法だと思うわ」
「なるほどな」
俺は、葵の話しをメモをとりながら聞いていた。
「あと、私はあんまりやらないけど、不幸な投稿をして共感を集めて女性ファンを獲得している人もいるね。アイドルには向かない戦略だとは思うけど」
「確かにそれはなぁ。向いてないかもな」
男性ファンもその投稿を目にするので、一定層は不快な思いをすることもあるだろう。
その戦法はかなりリスクがついてくる。
「ここからはさっきに話とかぶる所もあるけど、ファッションやコスメとかの有益な情報発信してり、流行の顔になるってことも女性層の獲得には役立つと思うわ。今だと、韓国系とか地雷量産系とかですかね」
確かに、コスメやファッションの情報は女性目線からしたら嬉しいのかもしれない。
「ありがとう。助かったよ」
「これくらいなら別にいいけど。何? 今度はアパレルブランドでも立ち上げるつもり?」
葵がカフェラテを飲みながら聞いてきた。
「いや、ブランドを立ち上げるまでは行かなくとも、コスメやアパレルの案件も受けられるようになれば幅が広がると思ってな」
「相変わらず凄いね。四宮ちゃんは」
「そうか? 俺からしたら葵の方がもっとすごいと思うけどな。自分でキャバクラ始めたんだろ?」
葵はキャストとしての前線からは退いて、歌舞伎町で自分の経営するキャバクラを始めたと小耳に挟んでいた。
「四宮ちゃんは情報が早いねぇ。よかったら来てよ。サービスするから」
そう言って、葵は名刺を取り出して俺に渡してきた。
「ああ、気が向いたらな」
「それ、絶対こないやつでしょ」
俺は葵の名刺をケースに入れてしまった。
「知ってるだろ? 俺がキャバクラ苦手なのは」
「四宮ちゃんって、インキャみたいなとこあるもんね」
「悪かったな」
事実、キャバクラみたいなキラキラした所は好まない。
まあ、そんな俺がなぜ葵と出会ったのかはそのうち分かることだろう。
「じゃあ、私はこのまま仕事行くから。この辺で」
「ああ、忙しいところ悪かったな」
「いいよ。久しぶりに四宮ちゃんと会えて嬉しかったから」
そう言うと、葵は仕事に向かって行った。
「さて、俺も帰るか」
俺は荷物をまとめると、会計を済ませてカフェを後にした。
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