第65話 貴方に憧れて
株式会社フュチュールは俺も何となく聞き覚えがあった。
そこまで大きな事務所ではないが、それなりにメディア露出を開いているアイドルやモデルが所属している事務所だったはずだ。
「出演者情報にWhiteの名前がありましたので、もしかしたらと思いましたが、ここでお会いできるとは光栄です」
「それは、恐縮です」
「よかったら、うちのアイドル紹介させてください」
「はい、是非」
俺は素直に了承した。
会ったことのない人には取り合えず会ってみる、というのが人脈作りのポイントだったりする。
「みんなちょっとこっちに」
荒木さんが少し離れていたところに居た、アイドル3人に手招きした。
そして、そのアイドルたちが少し不思議そうな顔をしながらも俺の方に近づいてきた。
「最近、うちが押し出しているアイドルのブルーシンデレラです」
「おはようございます」
荒木さんがそう紹介すると、彼女たちぺこりと頭を下げた。
「こちら、株式会社フルムーンの四宮渉さんだ」
「初めまして、四宮です」
俺がそう言うと、彼女たちの目が輝いた。
「四宮ってあの四宮ですか!?」
一人の女の子が興奮気味に言った。
「多分、その四宮です」
俺はちょっと距離を取りながら言う。
「あの、影の天才って言われている……」
「プロデュースしたアイドルは絶対に売れるって噂の……」
最近ではアイドル本人たちにも噂が回るようになったのか。
何か、名前だけが一人歩きしているような気がする。
「そんな大そうなもんじゃないかもしれないけど、頑張ってくださいね期待してますよ」
俺は微笑みと共にそう言った。
「すみません、私、リーダーの柊美優と申します。よかったら、お名刺いただけませんか」
美優は恐る恐るそう言った。
「これは失礼しました」
俺はプロデューサーに名刺を渡したことで満足していた。
それに、他事務所のアイドルに名刺を渡すのは何となく気が引けるところがある。
しかし、向こうから欲しいと言われたら渡すべきであろう。
スーツのポケットから名刺を3枚取り出すと、ブルーシンデレラの3人に手渡した。
「ありがとうございます。お守りにしますね」
美優は大事そうに胸に抱えて言った。
「ご利益があるかはわからないけどねー」
「私、ユメミヤに憧れてアイドル目指したんです! なので、感激です」
確かに、ユメミヤは売れていたのでその影響でアイドルを志す人は少なくないと聞いていた。
しかし、それをプロデュースした人間まで知っているのはかなりコアなアイドルファンだけだろう。
「ユメミヤ、ね。確かに売れてたもんね」
俺はあえて過去形を使った。
今後、どう足掻いても再びあの舞台に返り咲くことはきっと無い。
「今日はよろしくね。じゃあ、お互いに頑張りましょう」
「「「はい!」」」
俺が彼女たちと話していると、Whiteのメンバーが姿を現した。
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