第2話 新たな出会い

 俺はそのアイドルグループのライブを見てみる事にした。


「本当ですか!? 嬉しいです! 私、音坂莉奈と申します」


 そう言うと、莉奈はペコリと頭を下げた。


「裏に私のSNSのIDが書いてありますので良かったら見てください」

「うん、後で見てみるね」


 俺はビラを裏返して確認した。


「ありがとうございます! もう、入場できると思いますので一緒にいきましょうか」

「わかったよ」


 そう言って、俺は莉奈について行った。


「ここの5階になります」


 莉奈はエレベーターのボタンを操作しながら言った。


「懐かしいな……」


 そこは、俺はプロデュースしていたアイドルたちもよくライブをしていた会場だった。

そして、エレベーターは5階で停止すると扉が開いた。


「ご新規さんでーす」


 莉奈がスタッフの人にそう告げた。


「ご新規の方ですと、1000円になります」

「はい」


 俺はポケットから財布を取り出して、千円札を一枚スタッフに手渡した。


「はい、確かに。お飲み物はどうされますか?」

「烏龍茶で」

「かしこまりました」


 俺はスタッフから烏龍茶を受け取った。


「これ、メンバーとチェキが一枚無料で撮れるので良かったら」

「ありがとうございます」


 スタッフは俺の顔を見て少しだけ何かを考えるような表情を浮かべていた。

俺が元プロデューサーということがバレたか?」


 しかし、それ以上は何も言われなかった。


「では、楽しんで行ってくださいね!!」


 莉奈はそういうと、その場を離れて行った。


「後ろの方でいっか」


 自由席だったので、俺は真ん中より少し後ろの席に座った。

左手につけた腕時計を見ると、開演の時間まで5分を切っていた。


「始まるみたいだな」


 会場が暗くなり、音楽が流れ始める。

そして、莉奈たちのステージも始まった。


 それは、ダンスといい歌といい何故売れていないのか不思議になるほどのものだった。

約1時間のステージだったが、俺は莉奈の魅力に惹かれてしまっていた。


「今日はありがとうございました!」

 

 莉奈の一言でステージの幕が降りた。

そこから、チェキを撮る時間となった。


 俺は余韻に浸りながらも、ファンの方の後に続くようにしてチェキを撮る列に並んだ。

そして、しばらく並んでいると俺の順番が回ってきた。


「誰と撮りますか?」

「莉奈さんで」


 スタッフの人にそう告げると、すぐに莉奈さんが俺のところにきてくれた。


「今日は色々ありがとうございました」

「こちらこそ、久々に楽しめたよ」

「それは良かったです」


 そんな会話をしながら俺は莉奈さんとチェキを撮る。


「じゃあ、ハートで」

「はいよ」


 俺は莉奈と手でハートを作ると、そのまま撮影した。


「じゃあ、これに落書きして後で渡しますね」

「うん、ありがとう。ねぇ、この業界でトップを目指す気はある?」


 俺は莉奈に尋ねた。


「はい、もちろんです!!」


 莉奈は一瞬不思議ろうな顔をしたが、すぐに力強く頷いた。

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