最終話は、決意を込めて!

 真壁のやつ、何食わぬ顔で寮生をたらしこんでいるようだ。

 高校生の男女が同じ部屋に住むだなんて、あっていいのだろうか!

 いや、ダメだ。絶対にダメ! うらやまし過ぎる!


 本音を言えば俺だってカノジョと同じ部屋に住みたーい!

 っていうか、カノジョが欲しーい!


 だが、寮長はひとり部屋という寮のしきたりがそれを邪魔する。

 寮長である以上、同じ部屋に住むのは諦めるしかなさそうだ。


「秋山、目を覚ましたんだね。ちょうどいい。みんなも聞いて!」

 と、真壁は珍しく興奮気味。そりゃ興奮もするだろう。

 美少女と同じ部屋に住むことが決まったんだから。


 みんなは相変わらず真壁の言うことにはしっかり耳を傾ける。

 しゃべり口がスマートだし、気が利くし、イケメンだし。

 真壁のそういうところを少しでも真似すれば、俺にもカノジョができるかな。


「いや、実はね。朝礼台の地下に温泉があるんだ! しかも天然!」

「まぁ、それは素晴らしいですわ!」

「早速、みんなで入りませんか」


 うん、それはいい。旅や諸々の疲れを取るにはもってこい。

 一に温泉、二にひざまくらって言うくらいだ。


「天然温泉! 俺も入りたい! 今直ぐに入りたい!」

 と、俺はがっついて言った。

 真壁は苦笑いしながらも、寮長である俺を立てて言った。


「うん。秋山が寮長なんだ。1番風呂に入りなよ」

 ありがとう、真壁。お前は天使か! 他のみんなも即同意してくれた。

 真壁の言いなりだからだ。真壁が俺の大親友でよかった。


 が、問題がある。俺は母さんが言う通り、手ぶらでここまで来た。

 替えの下着を持ち合わせていない。同じのをそのまま着直すのもイヤだ。

 母さんは現地で入手できるって言ってたけど、どうすればいいんだろう……。


「な、なぁ真壁。俺さ、替えのパンツを持って来ていないんだ……」

「なるほど。手ぶらだからおかしいとは思ったけど、どうしようか……」

 さすがの真壁も困り顔。困りついでに流し目でりえを見る。


「あっ、あの。お召し物でしたら、この私めが用意しておきます」

 まじが! めっちゃ助かる。これで心置きなく温泉が堪能できる!


「りえ、本当にありがとう!」

「このようなこと、いつでもお申し付けください!」

 ちょっと引っかかるな。まるで真壁の専属メイドのようだ……。




 兎に角、俺は独りで温泉に入った。


 地下空間に拡がる天然温泉は幻想的な景観で、お湯も素晴らしい。

 ちょっと広過ぎるのが難点かな。数千人は同時に入れそうなほど。

 男湯と女湯に分かれていない。去年まで女子高だったせいだろう。


 それも好都合。将来、カノジョと混浴なんて日も来るかもしれない。


 俺の脳裏にひざまくら女子の姿が浮かぶ。今、1番カノジョにしたい人。

 胸はちょっと小ぶりだけど、透き通るほど白くてやわらかい肌。

 彼女が俺の背中をゴシゴシ。俺も彼女の背中をゴシゴシ。洗いっこだ。


 けど、その顔は湯煙の中ではっきりしない。寝ぼけ眼には映らなかったから。

 どんな顔をしているんだろう……どんな声をしているんだろう……。

 誰だか分からないのが辛い。その姿を思い浮かべるほど、切なくなる。


 寮生ではないようだけど、この学園の生徒ならいつかまた会える。

 そのときには、カノジョになってと、この想いを伝えたい!




 15分ほどして脱衣所に上がると、着替えが用意されていた。

 バスタオルの下には、新しいパンツにシャツに靴下に、浴衣!

 浴衣ひとつで、ぐっと雰囲気が増していく。日本人でよかった。


 温泉を出た俺は、興奮気味にみんなに温泉の様子を語った。

 ひざまくら女子との混浴を想像していたことはもちろん隠して!


「すごいですわ。とても高まります!」

「はい。脱衣所だけでも雰囲気は満点でございました」

「じゃあ、私の公式愛しい君、待っててください。ひかる、行こうか」


 はいはーい、いってらっしゃい……って、なんねーよ。

 千秋やりえは兎に角、すばる、お前は今、なんて言った!


「ま、真壁。7人で入るのか? しかも同時に……」

 それって、混浴じゃないのか?


「まぁね。時間もないし、つもるはなしもあるから」

「な……バカな……」


 絶句とは、このことだろう。

 俺が夢見た混浴を、真壁は入寮初日にして叶えるのだから。


「寮長は邪魔しないでください。急ぎませんと夕食の支度が間に合いません」

 なんてことだ! 真壁のやつ、みんなをこんなに飼い慣らしている。

 着々とハーレムの建設を準備してやがる。許せない!


 っていうか、うらやましい……。


 だが真壁。男の甲斐性は数ではないぞ。

 俺にはひざまくら女子がいる。カノジョなんて、1人で充分なんだ。

 今はボッチでも、いつか俺はひざまくら女子とお付き合いしてみせる!


 そのときになってビビんなよ! 俺のカノジョの素晴らしさに!

 そんでもって、驚くなよ! 吠え面かくなよぉーっ!


 こうして、俺の入寮初日は終わろうとしていた。

 そして俺にはこの学園で過ごす目的ができた。

 それは、ひざまくら女子をカノジョにして、真壁をびっくりさせること!

________________________

 お読みいただき、本当にありがとうございます。これで第1部本編は終了です。

 けど「吠え面かくなよぉーっ!」って、悪役の名台詞ですよね。

 こんな終わり方でいいのでしょうか……。


 そこで後日、真壁視点のストーリーを数話分だけ用意します。

 需要があればですが……お、お楽しみに!


 そして、近々第2部をスタートいたします。

 題して『イケメン大親友のハーレム建設を見ているだけの俺は、大親友が女子だってことをまだ知らない(仮)』です。


 そちらも応援いただければありがたく、よろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋愛方程式 かっこ美少女ぷらすイケメンこっかかける寄宿制学園わる2はつきあえない事情 を解く 世界三大〇〇 @yuutakunn0031

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ