スタチューモード!
野良メイド3人衆の言うことを鵜呑みにすればこうなる。
まず俺は、欲望にまみれていた。
そして千秋と千春のおっぱいをもみもみした。
すると2人はスタチューモードにチェンジした。
真壁やすばるが俺をヤジるのもしかたのないこと。
だけど違う、違うんだ。これだけは信じてほしい!
「いっ、いや。今のは不可抗力だから。欲望にまみれてないから!」
「本当にぃ? 本当に欲望にまみれていないのぉ?」
と、信じてくれない真壁。
すばるも野良たちも同じで、10粒のジトーッとした眼が俺を睨みつける。
そんな疑いの目を向けるのは辞めてくれ。本当に不可抗力だって!
2人の胸に触ろうだなんて、俺はこれっぽっちも……あっ、思い出した。
ジト目のイケメンが俺を諌めるように続ける。
「そういえば秋山って、おっぱい、好きだよねぇ」
はい、好きです! ノーおっぱい、ノーライフです!
でもあれは不可抗力であって、わざとじゃない。それは信じてほしい……。
でも一方で、1度は胸に触ってやるーって思い行動したのも事実。
俺は、下手な言い訳をせずに、全てを白状した。
「……だって、Gカップだぜ、Gカップ。しかも左右に2組だ。普通のお年頃の男子だったら、触りたくなるのが当たり前じゃんか。でも俺は思い止まったんだ。こんなときにおっぱい触ったら、ダメなんじゃないかって……」
このときの俺にとっては、身の潔白を証明することが全てだった。
寮旗争奪戦があと40秒残っていることなんか、どーでもいいことだった。
「みんなが応援してくれてるのに、自分だけがいい思いをするなんてできない。不謹慎だ。そう思って、1度は手を引っ込めました。けど、偽の寮旗を踏んでしまい、足を滑らせました。そうしたら、こうなってしまったんです……」
5人が互いに顔を見合わせる。間もなく俺への判決が下されるんだろう。
そう思うと胃がキリキリと痛くなる。胸が苦しくなる。
兎に角、生きた心地がしなくって、自分が自分じゃないみたいだった。
「じゃあ、秋山は僕たちのために本気で寮旗を掲げるつもりだったってこと?」
「公式愛しい君がGカップを鷲掴みにしたのは、全くの不可抗力だってこと?」
半信半疑に2人が言う。俺はその目を見ることもなく、黙って頷いた。
それを見て、野良メイド3人衆が喋りはじめた。
千秋と千春の体質については、3人が詳しい。
「でしたら純様、スタチューモードを早期解除して証明してください!」
はい? りえの言う早期解除って何だ? 証明って?
「標準継続時間は2分ですが、もみしだき続けると、早期解除が可能なのです」
もみしだき続けるって、どういうこと? 固まった身体の全てなのか?
早期解除って?
ま、まさか……。
「簡単ですよ。もみしだくのは、おっぱいだけで充分ですから!」
な、なんだよそれ……やっぱり、おっぱいなんだ!
石像の胸をもみしだき続けるなんて、そんなシュールなこと……。
普通に考えて、できる所業じゃないだろう!
隣にいた女子が急に石像になり、解除するにはおっぱいをもみしだけ。
そんなことになって躊躇わない人なんかいないだろう。俺だってそうだ。
でも俺には仲間がいた。応援してくれる仲間だ! 信じてくれる仲間だ!
「そうなんだ。だったら秋山、もむしかないよ。勝利のために、もむんだ!」
真壁、イケメンが台無しだぞ。けどなりふり構っていられないのも事実。
「公式愛しき君が望むなら、私はいつでも両のおっぱいを差し出します……」
と言うすばるは思い詰めたような表情をしていて、続ける。
「……他の誰かのをもむのを見たくはありません。でも、勝利のためです」
何というすさまじい勝利への執念だ。ちびってしまう。
「まだあと30秒残っています。20秒あれば、早期解除が可能です」
りえ、追加情報をありがとう。俄然、勇気が湧いてきた。
「解除後はエクストリームヴィーナスモードに移行します!」
エクストリーム! ヴィーナス! 久美子の言うことが本当なら絶対見たい!
「移行後は2秒もあれば移動できることでしょう!」
何というポテンシャル。人類最速が普通に走って3秒かかる距離なのに。
「さぁ、早くおっぱいをもむんだ!」
「もみしだくのです!」 「勝利のために!」 「私たち全員のために!」
すばるや野良メイド3人衆の言うことはもっともだ。
寮旗争奪戦は、俺ひとりの勝負じゃない。俺の勝利が全員を救う。
屋根のある生活をおくるため、ノマドとならないために勝利は必要不可欠。
だけどなんか違うんだ。勝利のために石像の胸をもむって、おかし過ぎる。
目的と手段があまりにもかけ離れている。だから、俺は本気になれない。
と、真壁が言った。
「これは秋山、君にしかできないことなんだ! 秋山、もむんだーっ!」
その言葉が、俺の心を撃ち抜いた! 俺は決心した。
石像だろうが何だろうが、やわらかくなるまでもみしだいてやる!
________________________
純くんを決心させたのは、真壁の熱い言葉でした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
これからも応援よろしくお願いいたします。
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