交換法則を適用(真壁ひかる視点)

 僕の名前は真壁ひかる。

 新聞部発表イケメンランキング3年連続ぶっちぎりの第1位!

 なのにとっても深い悩みを抱えている。好きな人に全く相手にされない。


 その好きな人っていうのは同級生で幼馴染の秋山純。

 新聞部発表の美少女ランキング3年連続ぶっちぎりの第1位。

 秋山は僕のことを大親友と呼ぶ。


 恋愛対象じゃないみたいで、ちょっと複雑……。


 秋山の見てくれは美少女だけど、中身は漢の中の漢。

 潔いというか、竹を割ったような性格。バカがつくほどの正直者。

 堂々としているところは、僕以上のイケメンだと思う。


 ときどき甘えてくるのも堪らない。


 男子からも女子からも大人気。僕も強く憧れる。

 うかうかしてはいられない。大親友に甘んじてはだめだ。

 いつかは勝負しないといけない! 秋山と付き合いたい。




 今日みたいな学期の最終日はちょっとしたおまつりになる。

 告白まつりだ。校内のあちこちで告白が行われる。

 長期休暇前だからお手軽なんだろうな。


 今回は僕も参戦しようと思うんだけど、秋山は朝から忙しそう……。

 最初は朝礼の直後。動いたのは、体育教師の五里先生。


「おい秋山。ちょっと来い!」

「はい……」

 先を越されてしまった。けど、これは心配ない。


 秋山がゴリラに興味を持つはずがない。秋山の好みとは真逆だもの。

 ジャージで告るのとかも、いただけない。デリカシーのない行為だ。

 予想通り、数分後に秋山は独りで帰ってきた。五里先生、無謀過ぎるよ。


 そのあと、ずっと秋山を見ていた。

 好きなものにはつい目がいっちゃうってこと。

 秋山は通知表の返却を挟んで、ずっと告られまくっている。


 僕はそれほど慌てなかった。

 全員、秋山の好みから外れているのを知っている。


 それに、告白のロケーションがよくない。

 トイレの前とか掃除用具入れの前とか、あり得ない。

 階段の踊り場とかは「おおっ」ってなったけど、あの男なら心配ない。


 結局、放課後まで秋山は誰にも奪られずにすんだ。

 よかった、よかった。




 放課後になって強敵出現。美少女ランキング第2位の百合野あきら。

 秋山の方から声をかけていた。これはピンチか?

 


 屋上へと向かう2人。さすがについて行くわけにはいかない。

 僕は下駄箱の前で待つことにした。何とも歯がゆい。もどかしい。


 もし、2人仲良く手を繋いで降りてきたらどうしよう。

 辛くて死にたくなるだろうな。最悪、略奪まで考えておこう!

 僕は誰にも秋山を渡したくない。秋山を僕だけのものにしたい。




 しばらくして、全部が杞憂だったことを知った。

 あきらが顔を両手で押さえて不安定に駆け降りてくるのを見かけた。


 あれ? 告った秋山がフッたのか? わざわざ呼び出して?

 よく分からないが、セーフなのには変わりがない。

 あきらには悪いけど、ホッとする僕がここにいる。


 そして、そのときがきた。


 しょぼくれて歩いている秋山。今にも泣き出しそうな秋山。

 僕は狙いすまして、秋山と顔を合わせる。僕が秋山を守ってあげるんだ。

 いつものように。


「どうしたの、秋山」

「どうしたもこうしたも、かくかくしかじか……」

 今日の出来事を涙目で訴える秋山。


 状況は察しているが、かなり落ち込んでいるようだ。かわいそうに。


「とりあえず、一緒に体育館裏に行こう」

 と、まずは誘う。秋山も少しは元気になったようだ。うれしい。

 体育館裏は屋上と双璧をなす青春の舞台。そこに2人で向かった。


 秋山は美少女だけど背が高く170センチくらいある。

 並んで歩くと上から見られるようになる。

 すごく落ち着く。守られているようで安心する。


 途中、聞こえてきたのは1年女子ダンス部員の声。

 休憩中かサボリ中か、体育館の入り口にたむろしている。


「ねぇ、あの2人、ランキング1位の!」

「うん、間違いない! 3年の……」


 知らない人に騒がれるのは苦手だな。

 そう思っていると秋山が強く僕の手を握る。

 これは駆け出そうのサイン。ついてこいというお達し!


 僕たち2人は、足速にその場から離れた。


 すると今度は1年男子バスケ部員。モップで床を磨きながらのお喋り。


「おいおい。すごい2ショじゃねー?」

「本当、マジスゲー。1位と1位じゃん!」


 2人してまた走った。





 やっと辿り着いた体育館裏。ここまで長かった。今しかないって思った。

 僕の心臓が爆音を鳴らす。もう、ドキドキが止まらない。

 だけど今しかない。さぁ、勇気を出そう!


 僕は思い切って告白した。


「ねぇ、秋山。僕たち、付き合わない?」

「ごめん。その気はないから!」


 と、即答だった。秋山はそっぽを向いている。

 そ、そんなぁ。僕たち、似合いのカップルだと思う。

 周囲にも、そう言ってくれる人が沢山いる。


 僕は追い縋る。ここで諦めるわけにはいかない。

 大親友だなんてゴメンだ! 僕は秋山と付き合いたい!


「そっ、そんなぁ。もう僕、秋山なしには生きられないのに」

「じゃあ死ね! 今直ぐに腹を切れ。告ったことを詫びて死ね!」

 あ、あんまりだ。これほどまでに拒絶されるなんて。


「ひっ、ひどーいっ!」

「ひどいもんか。全部、そっちが悪い。男が告んな。死ねっ!」

 そう言い残し、秋山はその場から走り去ってしまった。


 ……………………。え?


 男? 僕が男だって? たしかに僕はイケメンだけど……。


 ボーイッシュなだけで、男じゃない……。

 いうなれば、女の子だよ……もうすぐJKだって……。

 僕、想い人にずっと男って思われてたのか。ショックだ。




 しばらく茫然自失だった。そんな僕にとっても、それは突然だった。

 つぶやき系のSNS。流れてきたのは運命を変える広告。


 『最高の女子を目指すなら 君も片久里学園高等部に入学だ!』


 僕は、最高の高校と出会った。これで秋山好みの女になれる!

________________________

 見た目が超絶イケメンな女子、真壁ひかるの一途な恋のはじまりです。

 がんばれ、ひかる。負けるな、ひかる。ビバ、ひかる。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 これからも応援よろしくお願いいたします。

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