小さな世界の不適合者

空野

001.始まり。

 忠誠心が欲しいなら嵐の所へ。

 厳しさが欲しいなら晴の所へ。

 親しみが欲しいなら雷の所へ。

 優しさが欲しいなら雨の所へ。

 理解者が欲しいなら霧の所へ。

 行け。


 じゃあ、お前の所へ行く時は?


 金色と銀を併せ持つ青年は暫し沈黙し、それから答えた。


 痛みが恋しくなったら、僕の所へおいで。優しく優しく、傷付けてあげるから。


 ……それは、暗に来るなと言っているのか?


 ふぅん、君にしては察しが良いじゃないか。その通りだよ。


 阿呆! それぐらい誰でも分かるわ!


 分かったなら、来ないでよね。……まあ、本当に傷付けてほしいなら別だけど。君と闘り合うのは楽しそうだし。


 お前……。もう知らん! お前の所へなど誰が行くものか!


 そう。じゃあね、小さな世界の不適合者。


 青年は去り、空が残される。


 世界の、不適合者……。


 呟いた言葉は、風にさらわれた――。


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