第4話

達郎さんは、最初にうちで夕食を摂った日にうちの近くのマンスリーアパートに引っ越しをした。


達郎さんはうちで朝ごはんと晩ごはんを摂ることになった。


おふろも、うちで入る。


テレビも、うちで見る。


朝の出勤する時は、達郎さんと一緒に喜田村のバス停へ行くことになった。


アタシは、母から『バス停までは達郎さんと一緒に行って、達郎さんをバスに乗せてから会社へ行ってね…』と言われたので、いつもより一時間早く出勤することになった。


アタシと達郎さんは、自宅から歩いて喜田村のバス停まで行った。


けれど、心の中では達郎さんをウザいと思った。


ところ変わって、喜田村のバス停にて…(今治桟橋方面より・広瀬病院のすぐ近くにあるバス停)


アタシは、達郎さんにやや突き放す声で言うた。


「アタシ、達郎さんのお見送りが終わったら歩いて出勤するから…」


アタシがそのように言うと、達郎さんは『エーッ、どうして?』とつらそうな声で言い返した。


アタシは達郎さんに『女々しい男ね!!』と怒ったあと、そのまま立ち去った。


達郎さんは、つらそうな表情でアタシの背中をみつめた。


アタシに置き去りにされた達郎さんは、一人さみしく今治営業所行きのバスに乗り込んだ。


達郎さんは、喜田村のバス停から今治駅までバスに乗った。


今治駅で大西・菊間方面に行くバスに乗り換えて、延喜(えんぎ)のバス停まで向かった。


そんな中で、おじはアタシと達郎さんの挙式披露宴の段取りをトントン拍子で進めた。


アタシの両親も、6月の大安吉日の第2日曜日にいまこく(今治国際ホテル)で挙式披露宴の仮予約を入れた。


アタシと潤一さんの挙式披露宴の日にちと両親が設定した日にちが重複した。


両親に本当のことが言えないアタシは、ものすごく困り果てた。


そして夕方になった。


仕事を終えたアタシは、タイムカードを押して会社を出た。


その頃、達郎さんは会社を出たあと延喜のバス停へ向かった。


アタシは、母から電話で『喜田村のバス停で達郎さんを待ってあげて』と言われたので、仕方なく喜田村のバス停へ歩いて行った。


アタシが喜田村のバス停に到着してから数十分後に、達郎さんを乗せた西条・新居浜方面行きのバスが到着した。


「ただいま…一緒に帰ろうか。」


達郎さんは、ニコニコとした表情でアタシに言うた。


アタシは『悪いけれど、一人で帰ってよ。』と言うて、達郎さんを突き放した。


達郎さんを置き去りにしたアタシは、大型ショッピングセンターへ行った。


アタシに突き放された達郎さんは、ひとりぼっちでアタシの家にやって来た。


それをみた両親は、おどろいた。


「エーッ、ひとりで来たの!?」

「はい…」


達郎さんは、女々しい声で両親に言うた。


「はるかさんはぼくのことが嫌いなのですよ…ぼく以外に好きな男の人がいるんですよ…ぼくはいままでなにもかもガマンして生きてきたのに…チクショーチクショーチクショーチクショー…ううう…」


達郎さんは『チクショー…』とレンコしたあと、女々しい声で泣き出した。


アタシの両親は、過度にやさしい声で達郎さんに言うた。


「そんなことはないよ…はるかは気持ちの整理がまだついていないだけだよ。」

「そうよ…出会ってまだ日が浅いからなにもかもが分からないだけよ…日にちが経てば自然に打ち解けてくるから大丈夫よ。」


しかし、達郎さんはメソメソ泣きながら言うた。


「ぼくは今までなにもかもをガマンしてきたのですよ!!ガマンしてガマンしてガマンしてガマンして…いっぱいガマンしてきたのに…チクショーチクショーチクショー…こんなことになるのであれば、30代のうちに結婚するのだった…じっと待っていれば、神さまが選んでくれるなんて大ウソだ!!」


達郎さんは、このあと声をあげてワーワー泣き出した。


アタシの父は、カドにやさしい声で達郎さんに言うた。


「達郎さん、つらかったよね…今までずっとガマンしていてつらかったよね…」


アタシの母も、カドにやさしい声で達郎さんに言うた。


「達郎さんは、今までじっとガマンしていたことは、私たちはよく知ってるわよ…大丈夫よ。」


アタシの母は、達郎さんをなぐさめたあと『元気を出して…今日は達郎さんの大好きな麻婆豆腐(マーボーどうふ)を作ったわよ。』と言うた。


達郎さんは、家に上がったあと晩ごはんを食べた。


その頃、アタシは大型ショッピングセンターの近くのファミレスで、潤一さんと一緒にいた。


アタシは、予定通りに6月の大安吉日の第2日曜日に湯ノ浦のリゾートホテルで潤一さんと挙式披露宴を挙げるので、両親やおじには内緒で準備をトントンと進めた。


アタシが帰宅したのは、夜8時半頃であった。


「ただいま。」

「お帰りなさい…はるか、こんな時間までどこに行ってたのよ?」

「友達と会ってた…アタシ『きょうは友だちと会うヤクソクがある』と言うて電話したのよ。」

「それはいいけれど…あんた、どうして達郎さんに八つ当たりをしたのよ?達郎さんがビービービービー泣きよったよ。」

「泣きよった…女々しい男ねぇ。」

「はるか!!なんてこと言うのよ!!達郎さんはなにもかもをガマンして生きてきたので、結婚相手に出会う機会を逃したのよ!!これから幸せになろうと思っている人になんてことを言うのよ!!」

「バカみたいだわ…40過ぎの男は結婚の条件が悪くなることを達郎さんは分かっていないのよ…だからアタシにふられたのよ…」

「はるか!!」

「はぐいたらしい(むかつく)わよ!!もういいわよ!!アタシ、おふろに入る!!」


ふてくされたアタシは、お風呂場へ逃げ込んだ。


アタシの母は、ものすごく困った顔でアタシの後ろ姿をみつめた。


また次の日の夕方のことであった。


アタシは、シブシブとした表情で喜田村のバス停で達郎さんの帰りを待っていた。


それからしばらくして、達郎さんが乗っている西条・新居浜方面行きのバスが到着した。


「ただいま。」


達郎さんは、ニコニコ顔でバスを降りた。


「お帰り。」


アタシは、無愛想な声で達郎さんに言うた。


達郎さんは、アタシに『一緒に帰ろうか…』と言うた。


アタシは、女々しい達郎さんがキライなので80センチ前後離れて歩いた。


「一緒に歩きませんか?」


達郎さんの呼び掛けに対して、アタシは『イヤ!!』と言うて拒否した。


「どうしてですか?ぼくは、はるかさんのおじさんから言われて…」


立ち止まったアタシは、達郎さんを怒鳴りつけた。


「何なのよあんたは一体!!アタシにいいがかりをつける気!?」


アタシの言葉を聞いた達郎さんは、どうして自分のことをきらうのかと問いかけた。


「どうしたのですか?」

「あんたは『アタシと結婚したい。』と言うたわねぇ…どういう目的で結婚したいのよ!?」

「どういう目的って?」

「おじさんの顔色をうかがうため!?」

「違います。」


アタシの問いに対して、達郎さんは女々しい声で否定した。


アタシは、達郎さんにぶっちゃけた質問をぶつけた。


「ねえあんた。」

「はい。」

「あんたの実家は、何人家族なの?」

「実家の家族?ぼくの実家の家族は、両親と兄夫婦と兄の長男とぼくを合わせて6人ですが…」

「あんた、末っ子よね。」

「えっ?」

「えっじゃないわよ…そんなことはどうでもいいけど、アタシはあんたみたいな女々しい男とは結婚したくないから…」

「そんな…ぼくはどうしたらいいのですか?」

「おじさんに頼みなさいよ!!」

「ですから、専務になんて言えばいいのですか!?」

「おじさんに土下座してひたすら頼みなさいよ!!…『違う女性にかえてください…』とひたすら言うて頼むのよ!!それもできんのかしらねぇ…マザコン野郎!!」


アタシは、達郎さんに突き放す声で言うたあと、背中を向けて再び歩き出そうとした。


達郎さんは、アタシに対して『他の女性を探せって…ぼくはどうすればいいのでしょうか?』と訪ねた。


アタシは、また立ち止まってふりかえったあと、達郎さんに言うた。


「知らないわよ!!オカマ野郎!!」


アタシは、達郎さんにどぎつい言葉をぶつけてあかんべーしたあと、達郎さんからうんと離れて歩いた。

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