第2話
ところ変わって、市内松本町にある達郎さんの実家にて…
達郎さんの実家に、アタシのおじが来ていた。
おじは、アタシと達郎さんのお見合いの日が決まったことを達郎さんの両親と兄夫婦に伝えた。
時は、夕食が終わって一息ついた時だった。
おじからお見合いの日時を伝えたが、達郎さんの実家の家族はものすごくあつかましい声でおじに言い返した。
「全く非常識だわ!!」
「ああ、その通りだ!!」
達郎さんのお母さまは、より激しい怒りを込めて怒った。
「私たちの都合も聞かずに勝手にお見合いのセッティングをするなんて、どーかしてるわよ!!」
達郎さんのお父さまは、ものすごくあつかましい声で言うた。
「その日は、友人たちからゴルフに誘われているのだよ。」
兄夫婦も、達郎さんのお見合いには行けないと怒った。
「オレもダメだ。その日は休日出勤が入った!!」
「アタシも、テニスの例会だからダメなのよ!!」
おじは、ものすごく困った声で言うた。
「それはいくらなんでもあんまりですよ!!」
おじの言葉に対して、達郎さんのお母さまはおじに怒鳴り返した。
「うちらは、達郎が結婚することに大反対です!!」
「大反対って?」
「敏郎の結婚の時、ものすごく大変な想いをしたのよ!!」
「かあさん。」
「あんたあの時、なんでおとーさんとおかーさんの言うことを聞かなかったのよ!?結婚相手は神さまが選んでくれるからじっと待っていなさいと言うたのに、どうして勝手に動いたのよ!?」
達郎さんのお母さまとお兄さまが、怒鳴り声をあげた。
おじは、ものすごく困った表情で言うた。
「あなたたち家族は、どうして頭ごなしに達郎さんの結婚に大反対するのですか!?どうして家族みんなが協力しないのですか!?」
達郎さんのお父さまは『なんやと!!家族が協力しろだと!!わしらに命令しよんか!!」とおじを怒鳴りつけた。
怒鳴られたおじは、あきれた表情を浮かべた。
おとうさまは、おじに対して『家族たちの自己都合』を理由に、達郎さんの結婚は無理だと言うた。
それを聞いたおじは『あきれてものが言えん…』と言うてため息ついた。
おじは、周囲から反発を受けながらもお見合いのセッティングを強行した。
時は、昭和の日の昼前のことであった。
場所は、いまこく(今治国際ホテル)の一階のエントランスにて…
ホテルの玄関前に、ホテルバスが停まっていた。
この日は、アタシのおじの家の息子さん(アタシのいとこ)の挙式披露宴が挙行されるので、アタシは両親と一緒に結婚披露宴に出席した。
午前中、大三島の多々羅しまなみ公園にある白い時計台のある広場で結婚式があった。
アタシは、みなさまと一緒に結婚式に立ち会った。
アタシのいとこと花嫁さんは、二人が勤務している会社内で行われたソフトボール大会で出会って、1年間の交際を経て結婚にたどり着いた。
このあと、新婦さんのおじ夫婦のバイシャク人を務める結婚披露宴がいまこくで行われる。
エントランスにあるカフェテリアにて…
カフェテリアでは、ご親族のみなさまと新郎新婦の共通の友人知人たちがたくさん集まっていた。
出席者のみなさまは、お茶をのみながらたのしくおしゃべりをしている。
アタシと達郎さんのお見合いは、エントランスのカフェテリアで行われる予定である。
しばらくして、達郎さんがひとりでエントランスにやって来た。
おじ夫婦は、ものすごく困った表情を浮かべながらぼやいた。
達郎さんの家族たちは、どうして達郎さんの結婚問題に向き合おうとしないのか…
困り果てたおばは、ケータイを手にして達郎さんの両親と兄夫婦のもとに電話をかけた。
しかし、電話はつながらなかった。
「あなた、どうしましょう?」
「ったくもー…達郎さんの実家の家族はどこのどこまでムカンシンをとおす気だ!!」
アタシのおじは、ものすごくイラついた。
結局、アタシのおじ夫婦が達郎さんの実家の家族の代役を務めることにした。
お見合いは、一階の洋食レストランで行われた。
クリーム色のワンピース姿のアタシとダークブラックのスーツに白のネクタイの達郎さんは、コチコチの状態であった。
雰囲気がものすごくよどんでいる中で、おばはやさしい声で達郎さんに呼びかけた。
「達郎さん…何かお話でもなされたら?」
アタシのおじは、達郎さんにお話をするようにとうながした。
「あっ、あのー…はるかさん。」
達郎さんは、あがり気味の声でアタシに言うた。
「はい?」
アタシは、キョトンとした表情で受け答えをした。
「ご趣味は…何でしょうか?」
達郎さんからの問いに対して、アタシは『読書です。』と答えた。
「読書…ですか。」
「はい。」
「どんな本を読まれているのですか?」
「恋愛小説を読んでいます。」
「そうですか。」
話は、そこで止まった。
再びお見合いの席によどんだ空気がただよった。
アタシと達郎さんは、ものすごく気まずい表情を浮かべた。
アタシは、ひっきりなしに腕時計をながめていた。
ひっきりなしに腕時計をながめているアタシをみた母は、心配げな声でアタシに言うた。
「どうしたのよ?」
「ごめんなさい。ちょっと…」
アタシは母に『気分が悪い。』と言うてから席を外して外へ出た。
アタシは、みんなにうそをついていまこくから逃げ出した。
いまこくから逃げ出したアタシは、潤一さんの元へ走って行った。
ところ変わって、東門町のフジグランにて…
アタシは、潤一さんとセンターコートで待ち合わせの約束をしていたが、危うくすっぽかしそうになった。
「はるか。」
「ごめーん、どうしても抜け出せない用事があったのよ…ねえ、許して。」
「分かったよ…じゃあ、一緒に行こうか。」
「うん。」
アタシと潤一さんは、うでを組んでミスドへ行った。
一方、達郎さんもいまこくから逃げ出した。
「はあー、しんどかったな…」
達郎さんは、しんどそうな表情でアーケード街をトボトボと歩いた。
「専務も強引すぎるよ…やっぱり40過ぎの未婚の男に結婚なんかネコに小判だ…お見合いはおことわりしよう…」
達郎さんは、桟橋へ向かって歩き続けた。
さて、それからアタシはゴールデンウィークの期間中は潤一さんと会って、挙式披露宴の打ち合わせをした。
時は、子どもの日の午後であった。
ところ変わって、湯ノ浦のリゾートホテルのカフェテリアにて…
アタシと潤一さんは、お茶をのみながらお話をしていた。
「ところではるか?」
「なあに?」
「はるかの家族には、挙式のことを伝えているのか?」
「ううん?」
「そうか。」
「潤一さんは?」
「ぼくも…まだだよ…」
「そう…アタシたち、これでいいのかしら?」
「何を言い出すのだよ突然…ぼくとはるかで決めた挙式披露宴じゃないか。」
「そうよね。」
結局、アタシは両親やおじさんに言い出せないまま、6月の第2日曜日に潤一さんとの挙式披露宴を予定通りに挙行することにした。
その一方で、達郎さんはゴールデンウィーク期間中はひとりで過ごしていた。
実家の家族たちの猛反対を押し切ってお見合いをした達郎さんは『どのような形でお見合いを断ればカドがたたずにすむのか…』と考えたが、答えが見つからずにコンワクした。
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