吸血公爵に生贄として捧げられます

一週間後、私はツェペシェ公爵家に生贄として捧げられる事になります。


私は馬車に連れ込まれます。


「それじゃあ、よろしく頼むわね」


「ええ……わかりました」


 義母は使用人にそう頼みます。


「それじゃあ、カレン。あなたの顔を二度と見ないで済むと思うとせいせいするわ」


「私もですわ。お母さま。厄介払いができて大変喜ばしい事です。この事だけは吸血公爵様に感謝しなければなりませんね」


「本当ね」


「「おっほっほっほっほっほっほほっほっほっほっほっほ」」


 流石親子というべきでしょう。同じように品のない笑い方をします。


「それでは馬車を走らせなさい!」


「はっ!」


 馬車が走ります。こうして私は吸血公爵家に生贄として運ばれるのでした。


 ◇


 段々と人気がなくなっていくのを感じます。それに周囲が薄暗くなっていっているような。不気味な空気がその界隈を包んでいました。


 雨雲のような厚い雲が空を覆い、雷がゴロゴロと鳴っています。そして、ピカァと光りました。雷が落ちたのでしょう。光の後に遅れて爆音のような音が聞こえてきます。


そして広大な庭があり、奥には大きなお屋敷がありました。間違いありません。あそこがツェペシェ公爵家なのです。吸血公爵家と悪名高い公爵家なのです。


 門が開かれます。


「入れ」


 スペンサー家の使用人に促され、私はその屋敷の中に入ります。


「いいか、決して逃げ出すなよ。スペンサー家の命運がかかっているんだからな」


 そう言い渡され、門が閉められます。そして鍵がかけられました。どうやって鍵がかけられたのでしょうか。魔法のような力でも働いたのかもしれません。


ここは吸血公爵家の屋敷の中です。何があっても不思議ではないのです。外からパカパカと馬車が走り去る音が聞こえてきました。


本当に私をこの屋敷に置き去りにしたようです。周囲には家らしい家もなく、またここに来るまで人とすれ違う事もありませんでした。完全に孤立無援の状況です。


私は屋敷に向かうより他に選択肢がありませんでした。長い時間歩いて、その屋敷までたどり着きます。


そして私はその吸血公爵家の屋敷の扉を開くのでした。


ギィィィ。


軋むような音を立て、屋敷の扉が開かれます。


こうして私はその屋敷に足を踏み入れる事になるのでした。

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