復讐者

「今の話を信じるなら、お前の父親は俺を殺すために旅立ったんだろうな。俺が、その父親を殺したのは、何か、理由があると思うんだがな。お前、それをどう思うんだ?」

そう、俺の父親の記憶は確かに、俺と母親の間で結ばれた約束が理由で、失われてしまったんだ。だが、どうしてそんなことがわかるんだ。父親を殺したお前に、どうしてそんなことが言えるんだ。父親は何もしていない。それなのに、殺したんだ。そして、また、どうして母親が殺されるのか。分からない。分からない。

わからない。俺は、何が正しいのか。何が間違っていたのか。

俺は、父親を殺された。その何かの理由が。俺の父親が、死んだ理由が。わからない。わからない。貴様が母親まで殺す理由が、分からない。分からない。分からない。分からない。

「――――――!!」

ふと、気付くと、そこはまた別の村だった。俺のいる宿屋、俺は銃を持って、部屋に立つ。そこには、もう一つの因縁の銃を握った男の姿があった。俺は、男のその人物を見て、驚いた。

白い長髪、白い唇、紫のアイシャドウに頬紅、という特徴のある男で、銃の他に、その彼が持っている剣も、俺が持っていた剣と同じ、日本刀のようだった。

ほほ笑みを浮かべた彼の顔は、俺と同じ、西洋では異邦の人のようだ。日本人? いや、俺と同じではないだろう。彼の体は、白い麻の服とその上に羽織った、よく分からない、中世ヨーロッパ風な感じの服装で、何故かその手に貼りついている扇子が、彼の身分証明のようなものだとわかった。いや、違う。俺は、彼が彼ではないとして、それでも彼とは違う雰囲気の人物ということは、俺と同じだということにならないか? いや、そんなことよりも……! いや、彼の口が、そう言いたげだった。

「お前は何だ」

「え? あ……すいませ? ん?」

「どうして俺のところに」

「えっと……何と言うか。お見せしますよ」

彼が扇子をなぞれば、空中に開いた、箱のような空間の、その部分の中には光るものがあった。

それは、大きく青く、そして明るく輝いている。

「……これは、なんですか?」

「あれの一つを、お前のところに運んできたので、彼に渡してほしいんです」

「……!」

光るものが目に入ったとき、それが何であるかがわかった。

大きな白い箱、その中に、俺と同じ、目が覚めるような白いものが入っていた。

「……斬るのか?」

「……いいや、そんなことは! しない」

黒いテンガロンハットを被った貴様の前に、俺はいる。

貴様は、両親の仇だが、いいさ、かまわない、白く輝くものを携えて、俺自身をも捧げるとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る