殺し屋

これは俺が、捨てたもの。それは、俺が殺したもの。そして俺は、死んだ。俺の知らない町で。

誰かが、俺を殺した。生きてる理由が、俺にはもうないけど、確かに、死んだ。

俺はもう、何も怖くない。いや、怖いのは、俺の胸の辺りに焼け付いてるこの感情だけさ。

俺は今、その感情に溺れれば溺れるほど、楽になれる気がした。

この町は、俺のことを知らない人に教えてくれる、かもしれない。

でも、俺は教えてもらいたい。俺のせいで死んだあの人達に。

俺が殺した人達に教えたい。

俺が、まさに、その時を逃さず、殺したことを。

その日の、終わり──。

感情の波が、泡立って、やがて静まる。

俺は、これで蝉を一匹殺せる気がした。

蝉の寿命は短すぎる。

殺さずとも、すぐに死ぬものを、どうして、この俺が殺せるだろう。

最適の瞬間に殺せるのが、殺し屋だ。

寿命が長ければ長いほど、狙いはつけやすい。

夏の一日はまぶしくて、そうでなくとも、短いのだ。

その晩は眠れなかった。子供の頃のように、翌朝は屈託なく、俺は蝉を捕まえようと、山で草を刈って遊んでいた。

草むらに蝉がいないことを、俺はよく知っていた。

蝉鳴りは遠く、ここは思い出の場所なのか、と思い、俺は少し安堵する。

俺の肉体は、一つの袋をぶら下げていた。

俺はその袋に入っていたものを、蝉の抜け殻と一緒に詰めておいた。

それは、俺の魂だった。

それは俺が、捨てたもの。あれは、俺が殺したもの。そして俺は、死んだ。蝉鳴りのする町で。

──死んだのは、蝉ではない。だから、俺なのだ。

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