夜の姉妹
ずっと考えていた。
こんなものなんか、見て歩いてきたんだと思うと恐ろしい。
──と、思っているうちに私はいつもの場所にいることに。
ただ、駅まで歩いて、
なんとなく、そこにいるのも居心地が悪くて、
人がいる方向を避けておいた。
そんな私に──、
「こんばんは」
と声を掛けた人がいた。
それは、あのとき一緒にいた、
────私。
「こんばんは」
と私が私の前を通り過ぎようとすると
「こんばんは」
と今度は、私の後ろから声を掛けてくる。
「あ、こんばんは」
と私が返事を返すと同時に彼女も同じように声を掛けてきて、
「今日、ここに来たんじゃないの?」
「来たんだけど、こんな時間だし」
と私も彼女に返事をした。
彼女も私と同じ時間に来て、
「ここでなら、二人で話せるかなって思ったんだけど、
どう?」
と彼女は言った。
「で、今日は、また何か予定でもあったの?」
とそんなことを聞いてみた。
────と彼女は聞いてきた。
「あのね、最近、二人とも体調が悪いのよ。
このままだと、いずれ、
いつ自分が倒れそうだって思ったら、
どうしても、自分の体調を自分で保てなくなっちゃって」
「私が言っていることとも、
やって見れば、私にもわかるよ」
と彼女はそう言った。
「そう、よかった。
じゃあ、こういうときは、
一緒に何か美味しいものでも食べて、
この時間を楽しくしたら、
また、元気が出るのかなって思ったの。
──そうよ、せっかく、二人で食べるからには、
ちょっと落ち着こうよ。
──あ、もし、ここで、私たちが、落ち着く場所、
あるなら、いい場所を探そう。
それで、もう、大丈夫かなって……」
「そ、そうね……」
と考えていると、彼女のほうから、
「そう言えばね、今、
二人きりなのは私たちだけになっているわ。
だから、私が隣に来ても、
大丈夫かしら」
と、その言葉を伝えて、彼女は言った。
「え、うん。大丈夫。
それより、あなたが、ここを動かないってのは、
一体どのくらいの意味なのかしら?」
「どうして、私が落ち着かないとお思いなの?」
彼女に質問され、
それを聞いた彼女は、
「うーん、
そうね……。
あ、でも、そんな気もしなくはないわよね──」
そう思いながら、
「そうだね、
私も、なんだか、今の、ここ、
ここに、私が落ち着かなくなっているのが、
不思議なんだよね」
と私は言った。
それから、しばらくして、
彼女は、
「それだと、私たちの気持ちを知った私に、
自分から、わざと、
そんな不適切な言葉をかけてくる、なんてね」
と言った。
「まあ、そういうところは、
自分で自分を認めて、考えることだって、
大切なことだと思うよ。
──ただ、
あの時のことは、許すとしても、
こうして、私自身が、この場所に残ると言うってことは、
もし、もし、その、私の体調が落ち着くのなら、
もう、いいかなとは考えたのだけども」
「そっか、そうよね。
何なら、それで、
いいかなって思った時、また
ここに戻ってきてもいいのよ」
「うん、あの、
今のことをそう言うのも変だと思うけど、
もしあの時のことがなかったら、
また、そうやって、こんな、いつ、ここに……、
あ、この辺で、失礼します、なんてことも、
考えたんだろうしね」
「──そうなのよね、
やっぱり、いつか戻ってくると思ってたの。
でもその時は難しそうだと、
そう思ってた時期があったのよ」
彼女は、そう言って、
私に、また、
「あの時はもう遅くって、
夜も更けてしまって、
これ以上は無理だって、
そう思うのは、早すぎた、そう、
早すぎたよね。
どうしたら、そうなるんだろうか、
どうすればいいんだろうかって、ずっと、
思っていたんだけど、こんな映画なら、
ナイフとフォークがなくても、食べられる、と思う。
そう、じゃないかな」
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