小さな王国
と、いうわけで私たちの物語の内容はこんな感じ。
私の部屋に泊まりに来ていた主人公。その帰り道、たまたま通った喫茶店でコーヒーを飲み、小説を眺めていると、その主人公がコーヒーの中で目を覚まし、コーヒーから起き上がり彼は言った。
「ここはどこだ……」
「あっ、ここはちょっと……」
その声に反応する様に、主人公も声の主の方へ振り向く。そこには、長い黒髪をなびかせ、眼鏡をかけた、黒い制服の青年が立っていた。何か話している。
すると、黒い青年は一言言って、主人公の横にコーヒー片手に座った。なにか話してるか……。
そこへ私の部屋のドアが開いて、二人の女性が入って来た。二人とも、白いシャツに黒いスカートに赤いネクタイをつけている。
「あら、おはよう。あなたは確か、あなたたちと同じ高校の……」
「あー、もしかして、あなたたちカメオの友達ですか?」
「そうよ。あなたも女の子なのね?」
「まあ、知り合いだと言えば、一緒に住んでいる人も同じですよ」
「へぇ、そうなんだ」
「それで、あなたは……」
少女たちは、主人公の顔を見、話しかける。
「あの、もしかして、私たち……」
「ええそうよ。さっき助けたお礼をしに来たのは、あなたたちの友達ではないかしら?」
「え、いいんですか?」
「ええ。ほら、あなたたちも彼女たちのコーヒーを受け取って、飲んで」
「はい」
主人公は、コーヒーを受け取って、少女たちに勧める。主人公の家にはコーヒーのコーヒーサーバーもあったので、主人公がコーヒーを淹れても大丈夫、という事だ。
「ありがとうございます。
それで、この世界はどのような世界でしょう?」
「世界?
ここから近い、大きな公園の中で暮らすのでしょう?」
「そうです。でも、私たちは、この世界の事を覚えていないので」
どうやら、少女たちが住んでいる公園に行き、世界の事を知っても、何も理解する事が出来ない、と言う事なのだろう。
彼女たちの顔を見ていると、少女たちは戸惑っているようだった。主人公の顔を見ても動揺しているように見えない。
「あの、お友達の名前、教えてもらえます? あなたたちにとっての、友達、なのでしょ?」
少女たちの顔に動揺が見えた事から、彼女たちが彼女たちの存在を、自分達の知っているように思っているのでしょう。
「あ……いえ。自分は。私は……って、言っても、分からないか」
「分かりません。自分には、友達は……誰もいないので」
そして、主人公は少女の顔をじっと見る。なんとなく、彼は少女の事が気になり出したのだ。
主人公の様子を見ていた少女たちは、主人公の表情を見ると、主人公に表情を見られ、と思って見ていたら、主人公の表情から、感情が消えていた。
主人公が少しずつ怯えた表情となっていく。
「どうしたんですか?」
少女が少し心配になってそう問いかけると、主人公の表情からも怯えた表情が消えていた。
「お助け、下さい」
「え、でも……」
「誰よりも、みんな、大好きです。
私、あなたたちに助けてもらって、本当に良かったと思ってます。
誰よりも一緒にいたい、私も大好きです。
あなたたちには、誰よりも、みんな……」
そう言うと、主人公は少女と同じように涙を流していた。
主人公の様子をみて、恐ろしくなった少女の手を引き、一緒に泣き伏せた。
「大丈夫です。私はあなたのものです。
あなたには、命の恩人です。
だから、安心してください」
主人公にそう言われ、少女も安心する。
「だから、もし何かあったら、すぐに僕のところに来ていただけますか?
私たちを頼ってください」
「何かあったら、すぐに私のところへ……」
少女も主人公も、いつか自分を頼ってくれるようになってくれるだろうかと少女は思っていた。
主人公の言う通り、何があっても自分たちの命を助けてくれた少女を頼っていた方が、主人公のように強くなれる気がした。
主人公に頼ってもらえることは、とても励みになる。
二人は少女が見えていたら、ここにはいないだろうと思った。
しかし違う。主人公はとても強い意志を持ってその場所に戻ってきた。
「ごめんなさい……。
やっぱり、私、この子に恩返しをしたい。
私、この子のことが、好きだから」
少女にはとてもそんな気持ちはなかった。
少女の表情に気づいたのだろうか。
少女の頭を撫でながら、主人公は優しい声で話しかけてきた。
「よかった。
あなた、すぐ近くで私たちを見守っていたの。
ありがとう、よかった……」
その心からの感謝に、少女は本当に涙を流すのであった。
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