私の影の女

私は、もう、眠ってしまいそうだった。それに、目が覚めたらいま見た景色が見えて、また胸がおかしくなりそうだった。私は、目を覚ませばこんな目に遭うと言うのに、夢の内容が思いやりではないと分かっていながら、眠れそうにない。

「お目覚め?」と、私の頭をもたげる声に、私は、

「ごめん、起こしちゃったかな、ごめん」

と、言うだけだった。

「いいえ、いいえ、いいえ、ごめん、ごめんね。そんなに深く考えないで」

私はしっかり目を開けて、まだ頭は少しこげ茶色の天井を見つめている夢の中の女性の顔を見つめた。

「大丈夫? まだ目開けてるの?」その女性は私に語りかけた。

「うん、起きてるよ。起きてる。ねえ、あなた、本当はもう、眠れない?」

「いいえ、いいえ、大丈夫よ。大丈夫じゃないことなんてまったく心配していないわ」

「ほんっとうに、大丈夫なの、本当に? 本当に、大丈夫なの?」

彼女は私を見定めるように、

「大丈夫よ。それに、あなたいつまで、そんなところにいればいいか、わかった気がするわ」

「どういうこと?」

「このままじゃ、寝れなくなって、あなたのこと、もう少し寝かせられないと思うの」と言う自分の声は少し震えていて、その様子は、もしかしたら、怒っているのかもしれないと思った。

「なんで? 起きているのに、どうして? 夢の世界に、また戻ろうとするなんて、いったいどうなるの?」彼女は私に尋ねる。

「ごめんなさい、あなたの夢の中にいたら、また私、私。本当にごめんなさい」

私は彼女のおでこに手を当てる。

「そう。やっぱり、そうなのね。あなたの言う通り、このままだと、眠れなくなるのね」

「そうかもしれないわね。大丈夫」

彼女は私の頭を撫でるのではなく、押し倒してきた。

その感触に、私は彼女の首に手を回す。彼女のおでこを、押す。

私の手の中で、彼女のおでこと、私の服が、重なる。

私が「ごめんなさい」と言うと、「私は、あなたのことが、好きなんだから」と言う彼女。

「好き? わたしを、好きじゃない?」

「そう。私は、わたし、あなたのことは、大好きよ」

彼女はようやく、私から手を放した。

「好き、大好き、愛してる」

彼女は言う。

「それから、あなたも、私のこと、愛していてよ。私を、愛してくれたのって、あなたなんだ」

「それ、さっき言ってくれた、愛しのキス」ようやく私に気がついて、そう言った。

彼女は、いつも私とキスをする。そのキスが、私を、愛し、そして、私も彼女を愛する。そして、いつからか、私は彼女に触れるのが怖くなって逃げるようになった。

そうして、逃げた私は、いつの間にかキスを受け取ってしまい、今に至る。

そして、キスした時に、彼女の首に触れた瞬間に、涙が溢れてきて、それを見て、笑ってしまった。

夢の中に、いなくなったのは、どうしてだろう。

夢の世界に、戻ってしまったけれど。

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