第二章 なんだかわからないお付き合い

第3話 お付き合いとは言っても……

 というわけで、お付き合いをすることになった僕たち。

 公園を出て、駅まで一緒に歩いていくことになったのだけど。


「でも、お付き合いと言っても、何をすればいいんでしょうか?」

「そこを僕に聞かれてもね」


 というか、絶対、知ってるでしょ。


「私も、お付き合いの枠組みはわかります。とはいっても、私自身の経験値がゼロなので、実感が湧かないんですよ」

「それで、よく恋愛相談に乗れたね」


 逆に一周して凄い。


「自分のと他人のじゃ、全然違いますよ。結局、他人の恋愛相談というのは、男性側と女性側の心理をうまく読んで、マッチングするようにサポートすることですから」

「また、なんとも、理系っぽい言い回しなことで」

 

 まあ、言い方はアレとしても、間違っては居ない。


「裕二君も理系じゃないですか?工学部卒ですよね。今も、ラインに関するお仕事してるくらいなのに」

「まあね。君にも、昔、理系お兄さんとか言われたね。よーく覚えてるよ」

「何かいじけてる気がしますけど。理系、いいじゃないですか。色々、わかりやすくて、私はそっちの方が好きですよ?」


 慰めてるのか何なのか。


「まあ、とにかく。手でも繋いでみる?」

「そうですね。はい」


 全く躊躇なく、手を繋がれてしまった。

 僕はえらく恥ずかしいんだけど、彼女はといえば冷静なものだ。


「恵ちゃん、その、えらく冷静だね」

「んー。手の感触、ちょっといいかもしれませんね」

「そこ?そこ、分析するの?」


 僕以上に理系らしいんじゃないだろうか。


「冗談ですよ。もう、裕二君は昔から冗談が通じないんですから」

「君が時々、本気でグサっと来る事言うからだよ」


 ほんとに、この子が四歳下というのは信じられない。


「それで、今度は本当ですけど。ちょっと、いいかも、です」

「そっか。僕も、まあ、嬉しいよ」


 冷静だと思っていたけど、胸を上下させている。

 内心、照れくさかったのかもしれない。


「ひょっとして、さっきのって、照れ隠し?」

「わかってても言わないでくださいよ」

「仮にも彼氏だし、知っておきたいんだけど」

「そうです。照れ隠しですよ。照れ隠し!」


 珍しく大きな声の恵ちゃん。


「別に僕だって恥ずかしいし。いいと思うけど」

「だって、恋愛とかあんまり……とか言っておいて、手をつないでみたら、なんだか恥ずかしいとか。中二じゃあるまいし、と思っちゃうわけです」

「いや、別に中二でもいいんじゃない?僕も、社会人なのに、彼女居ない歴=年齢だしね」

「裕二君、そこ、やけに堂々としてますよね。普通、隠したがりません?」

「隠しても、いずればれるでしょ。なら、堂々としてた方がマシ」


 だから、胸を張っていればいいというのが、僕のポリシー。


「私、童貞男子を見分ける能力はあるつもりなんですけど」

「その能力、怖いよ!?いや、恵ちゃんなら出来そうだけどね」


 昔から、客観的に物事を見る性質だったし。


「裕二君は微妙に童貞っぽくないんですよね。ひょっとして、経験ありません?」

「いやいや、無いよ。何、その疑い?」

「だって、せっかくですから、相手が童貞の方が楽しそうじゃないですか」

「そうなの?女子は、相手にリードして欲しいって思うものじゃないの?」

「リードしてくれるなら、リードしてくれてもいいですけど?」


 何やら挑戦的な目つきで見られてしまう。


「いや、やめとく。恵ちゃんにはどうも無理そう」

「あ、そういえば。服買う約束、覚えてますよね」

「ああ、居酒屋でそんな話したっけ」

「ちゃんと、まともなコーディネイトしてあげますから」

「だから、その言葉がいちいち刺さるんだけどね」


 本人は毒舌の意識はないけど、同年代男子にしてみたらきついのでは。

 ま、それも含めて恵ちゃんの愛嬌か。


 と、気がついたら、駅に着いていた。

 彼女たちの住む家は僕の家と反対方面だ。

 だから、ここでお別れ。


「じゃ、改めて、よろしくお願いしますね。ではでは」

「うん。じゃあ、また後で、ライン送るから」


 妙にあっさりとした挨拶で別れた僕たち。

 僕たちの前途は色々と多難だ。

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