第5話 僕と妹との関係
円と僕の事情を、事故の日の事を知っているのは僕の周りでは両親と妹の
そして、とある事情から……僕はその事を誰にも話していない。
僕は学校から帰る間、白浜 円と同じ学校、どころか同じクラスになった事を妹に話すか迷っていた。
妹の円アレルギーはかなりの物で、以前は円の出ている番組……どころか、円が出ているCMが提供されているだけでチャンネルを変えてしまう程で、朝、僕が円を見ていると、いつもヒステリックになる。
そして半年前、事実上の引退と知った時の妹の喜びようと言ったら……ケーキを焼きご馳走を作り、まるでお祭りの如く三日間、お祝いをしていた……。
まあ、でも、そんな妹のお陰で、円ロスで落ち込んでいた僕は結構早めに回復できたんだけど……。
結局円と会えないのは変わらない……そして、もう妹と円の事で言い争いにならなくて済むって……そう思ったから……。
◈◈◈
登校は妹や夏樹に手伝って貰うが、下校時はそうそう甘えるわけにはいかない。
夏樹は部活、妹とは学校が違うので、そもそも帰る時間が合わない。
さすがに待ち合わせしてまで、鞄持ちをさせるわけにはいかない。
歩くのが遅いせいもあり、放課後はよっぽどの事がない限り、誰かと一緒に帰る事はなかった。
僕は今日あったとんでもない事に、いまだ心の整理が付かず、いつもよりもトロトロと歩き帰宅の徒に着く。
途中、丁度学校と家の中間地点に高く聳える高層マンションがほぼ完成に近付いている様だった。
どんな金持ちが住むんだろう等と一瞬現実逃避をするも、頭の中はまた再び白浜 円で一杯になる。
とりあえず、彼女が僕を覚えているかどうかは置いておき、この事を妹に伝えるべきか……僕はそれを考えていた。
いつもの倍近くかかり、ようやく家に着くも、妹はまだ帰宅していない。
なので、現在家には僕しか居ないって事になる。
この家のローンがある為に両親は共働き、しかも僕と同様妹も来年私立に入る事になる為に、現在必死に働いてくれている。なので帰りは非常に遅い。
だから家事は僕と妹がする事になるんだが、僕が出来る事は限られる。
料理も掃除もこの足では妹の手助けが必要となり、あまり意味が無い。
僕は……ここでも妹に甘えている、妹の世話になっている。
それが悔しく……口惜しくもあった……。
そう……だからこそ、妹に円の事を話すべきか……僕は悩んでいた。
「お兄ちゃん帰ってたんだ」
「うお!」
リビングのソファーでどうするか考えていると、いつの間にか帰って来た妹に後ろから唐突に声をかけられる。
「何よその長年会って無かった人に突然会った様な表情は?」
それってどんな? なんて聞く事なく、僕は妹に「お帰り」と笑顔で挨拶をする。
「変なお兄ちゃん、これから勉強? コーヒー入れるね」
妹は制服の上からエプロンを付けキッチンに入って行く。
どうするか……言うべきか言わざるべきか……悩んでいると、妹はコーヒーを持って僕の向かいに座った。
「勉強はどうだ?」
とりあえず世間話からと、僕は妹にそう聞くと、妹は少々困った顔に変わる。
「毎日会ってるのに何で今それを聞く?」
「いや、まあ……もう1年切ってるし……」
「うーーん、そうだねえ、ああ、今後はちょっと大変かもねえ」
「ん? そうなの?」
「うん、ほらずっと夏樹ちゃんに勉強教えて貰ってたじゃん? でもほら、高等部に入って新1年生になるでしょ? 勉強もそうだけど夏樹ちゃんの場合、特に部活が大変そうだし、かといって休みの日に迄面倒見て貰うってのも悪いし」
中学から高校へ、最上級生から下級生へ、学校の宿命。
僕もそうだったけど、新入部員の仕事は多岐に渡る。
「そか……僕が教えられればなあ」
「いいよ、お兄ちゃんも大変でしょ?」
妹はそう言って気を使うが、実際外部受験組は多分内部進学ギリギリの僕とは学力の差が天と地程あるので、恐らく僕が教えて貰う事になる……。
「ごめんな……」
本当に……何も出来ない兄で……。
「ううん、大丈夫だよ」
妹はそう言って笑顔でコーヒーを一口飲んだ。
でも……僕はここで思い出す……円の事を言おうかどうかを……そして、思った。
僕が伝えない限り、妹はわからないんじゃないかって……。
僕と夏樹以外に妹とうちの学校の接点は無い。
そして今までとは違い高等部は、ほぼ毎日朝練がある為、夏樹が妹と会う事ももっと少なくなる。
そして、前から思っていた事……僕は甘え過ぎているって……。
だからこれを機会に、妹を校門まで付き添わせるのは止めようって思っていた……。
なんだか言い訳じみているが、受験勉強中の今、妹にその事を……円の事を話すのは悪手な気がする。
そして、折角言い争わ無くなった妹とのこの良好な状態を、仲の良い関係を僕は手放したく無いって……そう思ってしまった。
【あとがき】
ブクマ、レビュー★を宜しくお願いいたします。
レビューは文字を入力する必要はありません。最新話の下から★をクリックするだけの簡単なお仕事で、作者のやる気が28%程上がります(当社比)。(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾ヨロシク
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