題名未定

 せわしなく進む毎日に、私はどう生きていれば良いのだろう。

何をしなくても時間はただひたすら進み続ける。どれだけ怠惰であろうと、過ぎ去ってしまえば取り戻すことは出来ない。

 どうして空は青いの? ってそんな疑問を持っていた幼い頃の記憶が、濁ってしまった瞳に、時々ふいに目をやる空で思い出す。


「おはよう  」

 朝から机に突っ伏していた私に声がかけられる。昨晩の夜更かしのせいで、寝起きの気分は最悪だ。私はゆっくりと、けだるそうに頭をあげて、声の主を確認する。

「うん……、おはよう」

「今日も気分は悪いのね? いい加減早く寝るとかしてみればいいじゃない??」

「うるさいなぁ」

 声の主は私の友人である  の物だった。頭をあげるや否や、毎朝のお説教。同じことを聞き続けるのは厭き厭きで、私はすっかりと聞いているフリが得意になった。

「ねぇ、聞いてるの?」

「うん、聞いてるよ」

「そう、まぁどっちでもいいけれど、この話はもう言ってたかな?」

「何?」

「私、医療では治せない病気になったの」

「え?」

 驚愕、なんて言葉では言い表せない何かだった。

「それってどんな病気なの?」

「うーんとね、記憶を保つことが難しい病気なんだって。簡単に言うなら、いろんな記憶をすぐに忘れちゃうって」

私たちの間に沈黙が走った。どう返していいのか分からない。それに全く頭が追いついていない。ホームルームを始めるぞ、という担任と、背景で鳴り響く蝉時雨。うるさいなぁって、思うその鳴き声が、人生の中で初めて気にもならなく感じた。


 それじゃあ、また授業終わったらね。

そう一言残して  は席に戻っていった。それから始まったホームルームは、何も話が入ってこなかった。ずっと頭が真っ白で。ずっと寝て起きたばっかりみたいな、頭の回らない感じがしていて。

 担任は  の両親からの連絡で、  の事情を理解していた。話によると、今の状態で、発症したと思われる時期から、する前までの数ヶ月の記憶がすでに薄れてきているそうだ。

 記憶の侵食は一日単位と満たなく、気づかない内に、ふと思い出せる何かまでもわすれてしまうそうだ。

 私との思い出も、いずれは出会ったことさえも、全て忘れてしまうそうだ、この病気は還元病と呼ばれていて、生まれて築いてきた記憶が全てなくなるまで続く

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