第6話 影響与えすぎ?
反省した私はハロルド様から夕食の誘いがきたが断った。旅で疲れたことにしたのだ。
テク魔車内でクレアと一緒に食事を食べたが、元気のない私をクレアは心配そうにしてくれた。給仕してくれたイーナさんも、先ほどの事があり最初は顔を赤らめていたが、途中からは私を心配してくれていた。
食事が終わると早めに寝ると伝えて自分の部屋に行く。クレアは明日の打ち合わせに行くと言って護衛の所に向かった。
私は部屋に入るとベッドの隅に座りうな垂れる。
クレアがすぐに部屋に戻ってきた。
「旦那様、大丈夫ですか?」
クレアが心配そうに尋ねてくる。
「ああ、大丈夫だよ。それより随分と早く戻ってきたね。明日の移動の打ち合わせは大丈夫なの?」
私は元気なく顔を上げて、クレアの事を心配する。
「移動の事は問題ありません。それより妻として旦那様の事が心配なのです!」
クレアは真剣な顔をして私の事を心配してくれている。私は嬉しかったが、申し訳なさで俯いてしまう。
「旦那様!」
クレアが心配そうに近づいてきた。私は思わずクレアの腰に抱き着く。
「旦那様?」
クレアが心配そうに声を掛けてきた。
「私は色々やり過ぎてみんなに迷惑を掛けているよね?」
クレアのお腹の辺りに顔を埋めながら呟いた。
「そんなことありません。旦那様のお陰でみんな幸せになっていますよ」
クレアは優しく私の頭を撫でながら答えてくれた。
「本当?」
腰に抱き着きながら不安そうにクレアに聞き返す。
「本当です。みんな旦那様に幸せにしてもらってますよ。さあ、今日は早めに休みましょう。私は旦那様の好きな服に着替えます」
クレアは顔を赤らめて答えてくれた。
「本当に!?」
もう一度嬉しそうに尋ねると、恥ずかしそうに頷いてくれた。
はやる気持ちをおさえ、収納から部屋着と一緒にちょい大ケモミミと特大ケモシッポを取り出してお願いする。
「だ、だったら、これを着てほしい!?」
あれ、作戦通り上手くいったはずなのに……。
クレアがジト目で私を睨んでいた。
私は動揺して目を逸らしてしまう。
クレアにどうやってこのスペシャルケモセットを付けてもらおうかと、神様と話した後からずっと考えていた。それが上手くいったと、焦り過ぎたかもしれない。
「これは?」
ちょっと冷たいクレアの問いかけに答える。
「ま、前から、試そうと、つ、作っていたんだ……」
くっ、さらにクレアの視線が冷たくなった気がするぅ!
何とか誤魔化そうと自信作の特大ケモシッポをクレアに押し付ける。
「あっ!」
クレアは驚いたように声を出した。
そうだろう、そうだろう!
特大ケモシッポの芯の部分はスライムシリコンを使い、毛の部分は選りすぐった角ウサギの毛を丁寧に、丁寧にスライム溶液を浸透させ、なめらかでありながらモフモフ感を楽しめるようにしたのだ。
クレアも特大ケモシッポの魅力から逃れられないのか、無意識に特大ケモシッポをモフっている。
チャンスだぁー!
「エ、エッチはしなくていいんだ! それを付けたクレアを抱きしめながら添い寝するだけで、元気が出ると思う。頼む!」
ベッドの上で土下座して頼み込む。
クレアはまだジト目で私を睨んでいるが、特大ケモシッポをモフるのは止めていない。
「こ、今晩だけですよ……」
きたぁーーーーーーーー!
期待と喜びで目をキラキラさせて顔を上げると、クレアが少し頬を赤く染めていた。
「だ、旦那様、後ろを向いていてください!」
「はい!」
すぐに言われた通り、後ろを向く。
テク魔車内だから部屋に余裕はない。だから同じ部屋で着替えるしかないのだ。
背後から着替える音が聞こえる。収納も使っているからそれほど音はしないが、想像をかき立てるぐらいは聞こえていた。
「あっ、……これは」
クレアが呟くのも聞こえ、気分は益々盛り上がる。
「ど、どうですか?」
クレアの尋ねる声に振り向くと、そこには理想のケモミミ女神が降臨していた。
「す、素晴らしい!」
思わず声が漏れてしまう。太腿が丸見えのショートパンツに、おへそが出るくらいのシャツ。恥ずかしいのか特大ケモシッポを、お尻側から手前に持ってきて体を隠すように持つ姿も素晴らしい。
この姿で実物大フィギュアを作りたい!
いや、秘かに1人で愛でる為に1/12スケールで内緒にして作ろう!
「ば、ばかぁ……」
可愛い「ばかぁ」いただきましたぁーーーーー!
クレアは恥ずかしそうにベッドの方に歩いてきた。暴走する欲望をねじ伏せ、優しくクレアを抱きしめ寝かせる。
「そ、添い寝するだけだから」
「ばかぁ……」
暴走は止まりませんでしたけど……、何か?
◇ ◇ ◇ ◇
翌朝テク魔車内で朝食を食べていると、ルーナさんがオロオロとしながら謝ってきた。
「き、昨日は余計なことを言ってしまい申し訳ありません!」
ルーナさんの横ではイーナさんが頬を膨らませて怒っている。その表情も可愛いが、今日の私は落ち着いている。
「気にすることはない。旦那様は別の事を考えていただけだ」
そう言いながらクレアがジト目で私を睨んでくるが、私は声を大にして言いたい!
クレアも楽しんだじゃないかぁーーーーー!
特大ケモシッポを間に挟んで添い寝していたが、先にキスしてきたのは、ゲフン。
その後も口ではダメと言いながら、ゲフン。
「ごめんね。色々と考えることもあって、心配させたようだね。もう大丈夫だから」
2人に笑顔で答える。
私の返事を聞いてルーナさんはイーナさんの顔色を確認している。たぶん姉妹で色々と揉めたのだろう。姉妹ではイーナさんのほうが主導権を握っているのだろうか?
「本当にすみませんでした。だからイーナのことを嫌いにならないで下さい!」
うん、ルーナさんは無意識で余計なことを言ってしまうようだね……。
ルーナさんはもう一度謝罪を述べたのだが、余計な事まで言ってしまった。また、イーナさんは顔が真っ赤になり、涙目でルーナさんを睨んでいる。ルーナさんは、なぜ睨まれたのか分かっていないようで、キョトンとイーナさんの顔を見ている。
昨日までの私なら動揺していただろう。昨晩のクレアとの、ゲフン……、今なら冷静に大人の対応ができるはず。
「大丈夫ですよ。イーナさんのことは大好きですから」
大人の余裕のある笑顔で答える。
あれっ、なんか全員が驚いた顔をしている。
んっ、あれれ、やっちまったーーー!
ルーナさんはホッとした表情をしているが、その横でイーナさんは頭から煙を出すほど真っ赤になって俯いている。
私も真っ赤になって俯くのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
テク魔車内には微妙な空気が流れているが、カービン伯爵領に向かって出発した。
出発前にエドワルド様は、何も起きなかったと喜んで私の手を握ってきたが、逆に複雑な気持ちになった。
大通りには朝早くだというのに見送りの人達で溢れていた。獣人族も堂々と大通りに出てきて手を振っている。
本当にいい町になったとホロリとくる。
しかし、歌や踊りを披露するのは止めて欲しい。
門付近で普通に手を振っていた子供たちが、シャニが歌い出すと、まるでフラッシュモブみたいに踊りを始めた。まだ完成度は低いが、それを見た住民たちは大きな声援を掛けている。
ウマーレムとテク魔車は速度を落としゆっくりと進んで行く。門を超えても暫くは踊りながらついてきていた。
凄いけど、やめてくれぇーーー!
教えていないことを次々と披露され、この世界に影響を与えすぎたと、本気で反省しようと思うのだった。
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