第2話 そんなに居るの!?

アラームで朝の6時に目を覚ますと、横には安らかな寝顔のクレアが居る。


昨晩は5回ほど頑張ってしまった。

魔力を混ぜる行為は最後にした。クレアは気を失ってしまったが、私は魔力を混ぜる行為が3回目という事もあり、私は何とか意識を保つことができ、アラームの設定をして眠ったのである。


まだ休みだが、今日から通常の時間で寝起きすることにしたのだが、アラームを設定した時に、朝からする可能性もあると余計な事を考えてしまい、朝6時にアラームを設定してしまったのだ。


クレアの寝顔を見ると、無理に起こして行為に及ぶのは許されないだろうと反省する。


しかし、地球で知っていた情報と、過去の自分の体力?を考えてみても、5回は不自然だと考えるのだった。


身体強化の影響かとも考えて、一時的に解除しても力は弱くなるが、あの部分が弱くなった感じはしなかった。


そう言えば、主神ノバ様がステータスを確認するように言っていた気がする。


ステータスを確認しようと思ったら、クレアが薄目を開けて目を覚ましてしまった。


「おはよう。まだ時間が早いから、もう少し寝ていても大丈夫だよ」


そう話すと、クレアは微笑んで私の胸に顔を埋める。


そんなクレアが愛おしくて、頭を軽く撫でながら頭にキスをする。


少しするとクレアが声を掛けてくる。


「だ、旦那様!?」


クレア、気にしなくても大丈夫。男は朝になるとそうなる体の構造だから。


黙ってクレアの頭を撫で続ける。


するとクレアがぎこちない感じで握りしめて来た。


そんな事されると、我慢できないよ?


自分は悪くないと心の中で言い訳をしながら、朝の運動を始めてしまう。



   ◇   ◇   ◇   ◇



7時過ぎにクレアと寝室を出ると、夫婦用リビングにはソファに座ってラナがお茶を飲んでいた。


「おはようございます。旦那様」


「おはよう。ラナ」


クレアはいそいそと着替えに自分の部屋に戻って行く。


それを目で見送ると、ラナを抱きしめキスをする。


ラナは一瞬驚いたようだが、抵抗することなく受け入れてくれた。


お互いに名残惜しそうに唇を離すとラナに言う。


「これも夫婦の日課にしようか?」


「わ、わかりましたわ」


こんなに幸せで良いのだろうか?


クレアが着替えて出て来ると、一階のダイニングに向かう。


3人で一緒に朝食を食べて少し休憩すると、クレアは待機所に向かい、ラナはメアベルとメイド二人と仕事に行ってしまった。


みんな仕事中毒だよね?


よく考えてみると自分もずっとそうだったと思い返すのであった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



部屋でのんびり?とレシピを使って生産作業をしていると、9時頃にレベッカ夫人が到着したとエマから文字念話で連絡が入る。


1階の会議室に行くと、レベッカ夫人とセバスさんが一緒に来ていた。


「お休みなのに悪いわね。あら、アタルさん顔つきが穏やかになったわね。結婚する間際は少し険しい雰囲気だったけど、初めて会った時よりも良い顔になったわよ!」


「言われると確かにそうですねぇ。やはり結婚して落ち着かれたのか、気持ちに余裕が出来たのでしょう」


セバスさんにも言われてしまった。

地球にいた時もボッチで何とか現状を変えようと必死だったし、この世界に来てからも色々と焦っていたのも間違いない。


「ありがとうございます。幸せな生活を始められて、落ち着いたのかもしれません。それで、本日はどのような要件で?」


「ふふふっ、そうね、幸せみたいで良かったわ。

それで、要件なんだけど、孤児院や見習いの事を進めるにも面接をしないと話が進まないのよ。

人手が居ない事には何も話は進まないし、この区画を利用し始めるにも、人の出入りを含めて相談もしたいのよね」


確かにそうかぁ。


孤児院も人手を増やす必要があるし、兵舎にも人手が必要である。


「面接に何か問題があるのですか?」


「数が多すぎるのよ。兵士を希望する女性は今のところ少ないけど、文官や錬金術、家事などの雑務なんかを希望しているだけでも数百人は居るわ。

それに見習いまでになると、更に百人単位で増える可能性が高いのよ」


女性が余っているとは聞いていたが、予想以上に多くいるようだ。


町中にも募集を出したのかな?


「予想より随分多いですねぇ。もう町中まで募集を掛けたのですか?」


質問すると、今度はセバスさんが答えてくれる。


「いえ、エルマイスター領に仕えていた人の家族だけです。兵士は跡取りを残すために早めに結婚しますし、複数の嫁は当然います。それでも嫁の行けない者も多いですし、未亡人になった女性も多くいます。

ハロルド様の方針で生活の面倒は領がある程度みておりますが、最低限の保証しか出来ないのが現状です。

そのような家が収入を求めて募集に参加することも多いですし、複数の嫁が居ることで、子供の世話を他の嫁に頼んで、参加を希望する家も多くあります」


あぁ、そう言う事なんだぁ。


「普通は予算的に跡取りの居ないような家は面倒見ない貴族が多いのよ。幸い領にダンジョンがあるお陰で多少は他領より余裕があって、お義父様の方針で無理してでもそう言った家族を大切にしてきたのよ。

だから、恩返しの為にも働きたいという家も多いし、宿舎も用意される可能性があるとなれば当然……」


宿舎はそんなには余裕がない。それに兵士を優先して考えていたので……。


でも、逆に考えてみると、人材は多くなるのは悪い事ではない。それに、働く人の家の為にもなるのかぁ。


しかし、……選別するのが難しそうだなぁ。


面接用の魔道具を作るかなぁ?


でも色々と魔道具を作り過ぎたと思ったけど、今さらだよねぇ。


「では、面接については、魔道具を明日までに用意しますので、それを使って下さい。ただ、個人の能力が判定されますので、事前にその事を伝える必要があると思います。その事も含めて面接のマニュアルを作りますので、それを参考にしてください」


二人はホッとした表情を見せる。


予想以上に大変だったのかもしれないなぁ。


不公平があってはダメだし、家庭の事情を勘案していたら採用基準も大変になってしまうからなぁ。


「それと、お義父様から、訓練施設は何時から使えるか聞いてくれと頼まれましたわ」


う~ん、既に使えるけど、このまま開放するのも問題があるのかな?


「訓練施設は使えますが、……やはり管理も必要になります。クレアや護衛の人達だけでは管理が難しいと思いますねぇ。この区画への出入りの管理や施設の管理、そういった事をする人材が欲しいですね。

女性用の宿舎を先に開放して、その人たちに出入りの管理と警備、施設の管理を先に覚えて貰いたいですね」


「たしかにそれは必要そうね。好き勝手にされても困るし、極秘事項も多いから出入りも管理しないと不味いわね……」


レベッカ夫人は少し考えてから答える。


「その方向でお義父様と相談してみるわ。ただ、お義父様も使いたいみたいだから、先に使う事になるかもしれないわね」


レベッカ夫人はセバスさんの顔を見て話す。セバスさんも頷いている。


「ハロルド様が使うなら、クレアか護衛の誰かに施設の使い方を聞いて頂ければ問題ありません。それに地下通路から訓練施設に入れるようにしておきますよ」


二人は驚いた表情をする。


あれっ、地下通路の出口の説明……、うん、していなかった。


地下通路にある扉の先のひとつが訓練所に繋がっている事と、仮住居に繋がっていて、我々は屋敷からは出入りしない事を伝えると、レベッカ夫人は聞いていなかったとプリプリと怒ってしまう。


「アリスがシャルたちに会いに、何度も待機所から出入りしていたのよ。地下通路なら警備も馬車も要らなかったじゃない!」


「す、すみません」


謝罪をする必要あるのかな?


まあ、話もある程度終わったと思うし、レベッカ夫人を宥める為に今日の話し合いはここまでにするのだった。

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