第5話 アリスお嬢様にお願い

ハロルド様とレベッカ夫人との話合いが終わると、用意してくれた客室にメイドさんが案内してくれた。


部屋は広く20畳以上はあると思われる部屋で、奥にはキングサイズのベッドがあり、4人が座れるソファとテーブルのセットも置かれていた。


案内してくれたメイドさんは、夕飯の準備ができましたら呼びに来ると言って部屋を出て行った。


エルマイスター家の屋敷は貴族の屋敷としてはシンプルな造りだが、家具は手作りで重厚の感じのするものが多く、落ち着きのあるものが多かった。この国がそうなのかこの領の特色なのか解らないが、アタルの好きな雰囲気の部屋だと思った。


ソファに座ると先程の話し合いを整理しようかと考えたが、肉体より頭のほうが疲れているのか、なるようになれと思うことにした。


スマートシステムを開き、まずは昨日採取したシュガの実をすべて砂糖の結晶に変える。それからウルフを解体する。


さらに竹を使って竹串を色々な大きさで作ってみる。一度出してみたが竈で使ったりするのはイマイチだと思い。持ち手を大きくして長さも大きくしてみた。これが良い感じだと思い、レシピを使って数多く作成した。

作った竹串を使ってウサギ肉を刺し、塩を振り後は焼くだけの状態にしたものを作る。取り敢えず1本だけ焼いてレシピ登録しておく。


丁度終わったところで、メイドさんが夕飯の準備ができましたと呼びに来たので食堂へ案内してもらう。


食堂に到着すると、すでにハロルド様は誕生日席に座っていた。その右手にはレベッカ夫人とアリスお嬢様が座っており、その正面に2人の獣人の少女が!?


シャルとミュウなの!?


シャルとミュウがすでに席に座っていたが、綺麗な服を着ているので最初は2人だと気が付かなかった。


セバスさんの誘導でミュウの隣でハロルド様に近い席に案内されて座る。テーブルには金属製のカトラリーが揃っていることに少し感心してしまう。


自分が席に着くのに合わせたように料理が運ばれてくる。

料理はパンと何かの肉のステーキとスープ、野菜のサラダだったが、やはり味が薄い。


この世界では塩味が全体的に薄い味付けなのか、塩が高価で節約してるのかな?


隣のミュウがナイフの使い方が分からないのか、涙目になっていた。私がナイフでひと口サイズに肉を切り分けてやると嬉しそうに笑顔を見せてくれる。


その奥のシャルはナイフを使わずに齧り付いていたけど、ミュウに切り分ける私の姿を見て少し恥ずかしそうに顔を赤くした。セバスさんがメイドに指示して、ナイフで切り分けさせると嬉しそうに食べ始めた。


貴族の食事ならもっと贅沢なのかと思ったがそうでもないようだ。


食事が終わり、お茶が出されるとハロルド様からお願いされる。


「アタルに教えてもらったライトじゃが、我が家で使いたいと思っているが教えても良いかのう?」


そう言われて周りを見ると、昨日のクレアさんのライトと同じような光が、たくさん出されていた。


「私もアリスに教えてもらったけど、本当に同じライトとは思えなかったわ」


レベッカ夫人は既にアリスに教えてもらったのか。それなら、


「……あまり目立ちたくないので、できればエルマイスター家の人間が考えたことにして広めてもらえれば助かります」


「そうなの? 人の功績を我家が奪ったようで少し気になるけど、教えてもらったライトは、慣れてくると魔力消費が少なく明るいので、広めれば人々の暮らしも便利になるわね」


「私もアタル様のライトを覚えたら、前のライトでは暗く感じてしまって」


「それでは、アリスお嬢様が考案した事にすれば良いと思いますよ。

子供ならではの自由な発想で、色々と試していたら偶然に発見したとすれば、不自然な話ではないと思いますが?」


「確かにそうじゃのう。最初にアタルに聞いて試したのもアリスだったか。よし、その方向で皆にも話しておこう」


「私はもう子供ではなく立派な淑女レディです!」


アリスお嬢様は少し頬を膨らませている。


「アリスはまだ12歳だから子供じゃ。半分だけ淑女レディじゃな、完璧な淑女レディになるのはあと2年は必要じゃ」


ハロルド様の話を聞いて、アリスお嬢様はさらに頬を膨らませる。


「アリスお嬢様申し訳ございません。私は目立つことが苦手で押し付けるような事をお願いして」


「では昨日頂いた甘いのをまた頂けたら許してあげますわ」


アリスお嬢様以外はその返答ではまだ子供だと、温かい目でアリスを見る。


「わかりました。ただあの甘いのも暫くはエルマイスター家の中だけの秘密として、他では話さないようにして頂けましたら、幾つか差し上げますよ」


「本当ですか! それなら秘密にしますし、アタル様の代わりに考案者になります!」


アリスお嬢様がチョロいのか、女の子の甘い物好きのお陰なのか……。


「ありがとうございます」


アタルは感謝を述べて、また一つ自分の非常識を誤魔化せたとホッとする。


「それから、シャルちゃんとミュウちゃんは、アタルさんの住まいが用意できるまで、私のほうで面倒を見ますね。2人は本当に可愛くて、服を着せ替えるのが楽しくてねぇ」


レベッカ夫人は嬉しそうに2人を見て、2人も嬉しそうにレベッカ夫人を見ている。


え~と、私はシャルたちと一緒に住むの?


なぜ、そんな話になっているのか疑問に感じていると、シャルが少し悪戯に成功した子供のような顔で私に笑いかけてきた。


シャルさんは油断できないねぇ。


まあ、妹が2人できたと思えば問題ないかなと気軽に受け入れてしまう。


その後はメイドさんに案内されて部屋に向かう。


部屋に着くとメイドさんが先に中に入り、ライトで室内を明るくする。しかし、やはりクレアさんと同じライトなので少し暗い。


自分も部屋の中に入ると、LED型灯ライトで室内を明るくする。

メイドさんが驚いた表情をしたのが楽しくて、アリスお嬢様に教えたようにやり方を説明すると、1回でLED型灯ライトを成功させてしまった。


この屋敷のメイドさんは、やはり相当優秀なのだろう。

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