第4話 ユニークスキルを創る

転生の女神とその眷属が部屋の中に入ると、騒がしかった部屋は一瞬で静かになる。


生命の女神を先頭にして部屋の一段高いところに歩いていく中で、生命の女神のすぐ後ろにいる転生の女神に皆の視線が集まっていた。


壇上に上がり他の神々の方をみて生命の女神は話し出した。


「神々の皆様には急遽お集まり頂きありがとうございます。転生の間に地球より召喚した人間をお迎えしております。

以前からご相談させて頂いていましたが、ご協力をお願いしたいと思います」


「言っていることが理解できないのだが質問して良いか?」


会場に居た知的な男性が質問をする。


「叡智の神様どうぞご質問ください」


「転生の女神を見るとすでに神力を使用していると見える。ということはすでに転生は完了しているのではないのか?」


それを聞いた生命の女神は転生の女神の耳元で周りには聞こえないように囁いた。


(転生の女神様、正直に話しますよ?)


(頼むのじゃ!)


転生の女神は俯いたまま小さく答えた。それを聞いた生命の女神は軽く頷いて視線を神々に戻した。


「実は今回の召喚は事故によりなされたものです。実は………、」


生命の女神はことの顛末を神々に説明した。


「それでは地球の主神様との約束を破ることになるのではないか?送り返してやり直すべきではないのか?」


今度は厳格そうな男性が発言する。


「秩序の神様が言われることはその通りかもしれません。

しかし転生を完了する前に承諾を頂ければ、地球の主神様の約束を破ることにはならないとも考えられます。

ただ心配なのはやり直すにしても転生の女神様がこのお姿では新たな候補者を見つけることが困難かもしれません」


「そんなのはグレーゾーンではないか!秩序など無いではないか!」


先程質問した厳格そうな男性が興奮した発言をする。


「確かに秩序さんの言う通りだけど、送り返すのは危険かもねぇ。

最悪はその時点で召喚も文化交流も無くなっちゃう可能性がありそうだという事ね。

そう考えると今からでも承諾してもらい転生するほうがまだ良いかもねぇ」


輝くような美しさの光の女神がそう話すと、他の神々は不安そうに騒めいた。


「確かにそれは言えると思うが、文化交流は召喚された人間の資産で継続する話だったはずだ!

その為に候補者の選定が難航していたのに事故で連れてこられた人間の資産で文化交流が続けられるのか?」


そう話すのは芸術の神で生命の女神がそれに答える。


「そのことに関しては心配ございません!

実はその者の資産から考えると、これまでの10倍以上の費用をご用意できるかと。

さらに人里離れた所に住まいを持っており、転生の女神様に地球の主神様に交渉して頂くことになりますが、そこを文化交流の拠点に出来ればと考えております」


その話を聞くと今度は嬉しそうに神々は騒めいた。


「皆の者申し訳ないのじゃ!

地球の主神様にはしっかりと謝罪し、文化交流だけは上手くできるように精一杯交渉するのじゃ!

妾はその為にはどんな罰を受けることになっても構わぬのじゃ!

何とか協力してほしいのじゃ~」


それまで俯いていた転生の女神は目に涙を溜めて懇願した。


それを見た光の女神は、


「あらあら、転子ちゃん可愛らしくなっちゃったわねぇ~、取り敢えずどう協力すれば良いのか話だけでも聞いてみましょうかぁ」


「ありがとうなのじゃ~」


そうして生命の女神はアタルから聞いた新たな権能スキルの話と移動中に話した内容を説明した。


「確かに話を聞く限り、その方法で承諾を貰う方が可能性は高そうねぇ。

とりあえず権能ちゃんと叡智ちゃん、時空ちゃんで直接話を聞きながらサクっと創っちゃって!

あとは順次必要になったら呼んだらどうかしら?」


「光の女神よ、そんなに簡単に創れる権能スキルではないぞ!」


「権能ちゃんの言う通りだと思うけどぉ、一緒に相談して創れば希望通りでなくても納得はしてくれると思うんだよねぇ」


「ふん!確かにその通りだな。よし、やれるだけやってみよう」


「ありがとうございます! それではご案内します」


生命の女神はそう言って転生の間に皆を案内するのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


アタルは転生の間でのんびりと紅茶を飲んで楽しんでいた。

転生の女神一行が部屋を出ると、残った二人がテーブルと椅子を出してくれ、すぐに紅茶とお菓子を出してくれたのだ。


残った二人もたぶん転生の女神の眷属だと思うが、一人は可愛い系でもう一人は綺麗系であった。


女性とは仕事以外であまり話したことがなかったが、二人は積極的に地球の話を聞きたがり、最初は緊張して会話していたがすぐに緊張がほぐれ会話を楽しんでいた。


暫くすると生命の女神が3人の男性を連れて戻って来た。


アタル様、この方は権能の神様です。新しい権能スキルを創って下さいます。

この方が叡智の神様でこの方が時空の神様になります」


「よ、よろしくお願いします」


アタルが挨拶すると3人は軽く頭を下げて、正面に権能の神が座ると話を始めた。


「大まかに話は聞いているが、直接聞きながら創ろうと思う。早速だが教えてくれるか?」


少し緊張してアタルは説明を始めた。


「え~と、スマフォとか分からないかぁ、」


その呟きを聞いた権能の神は、


「スマフォは分かるぞ!文化交流で何度か地球に行っているからな」


「それなら説明しやすいです! 先ほど権能スキル一覧を見せて頂いて、空中に画面のような物が出たのですが、それをスマフォ画面みたいに使えないかと?」


「とりあえず画面を出してみよう」


そう言って空中に何も表示していない画面のみ出した。


「例えばそこにステータスというアイコンを作成して、それをクリック?意識すると自分のステータスが画面上に表示することは出来ますか?」


「それぐらいは簡単に出来るが態々アイコンなどなくとも、ステータスと意識すれば良いのではないか?」


「確かにその通りですが、たくさんの機能が増えると混乱しますし、慣れればそのようにダイレクトに表示出来れば良いと思います。ステータスはとりあえず単純なので方向性を確認する為にもそれでお願いします」


「そうかならば少し待て」


権能の神はそう言って何か作業を始めた。アタルはその作業を最初は何となく見ていたが途中から集中して見始めた。

それは魔法陣のようなものを修正したり繋ぎ合わせたりしていた。プログラム言語とは違うがまるでプログラムを作成しているようであった。


時々権能の神は叡智の神と相談しながら創っている。


不思議なことにアタルはすぐにその魔法陣が何となく理解出来た。


「とりあえず創ったが試してくれ」


そう言って画面をこちらに表示した。


アタルはすぐにそのアイコンもどきに意識を集中すると、画面にはステータスが表示される。顔を上げると権能の神は少し自慢げに此方を見ている。


「ハイ! ほぼイメージどおりですね!」


更に戸惑いながら権能の神に聞いた。


「先ほどこれを創った時の画面を見せてくれませんか?」


「見せるのは構わないが…、理解できるのか?」


そう言って画面を開いて見せてくれた。


「ここをこうすると効率的になりませんか? それにここもこう変更したほうが……?」


周りの神々は驚き固まってしまった。


「これが理解できるのか!?」


権能の神は驚いて聞いてきた。


「そうですねぇ、最初は何となくといった感じだったんですが、すぐに理解できるようになりましたね。地球ではこういったシステムを作るのが仕事だったからですかねぇ」


そこからはアタルが自分で創り始めた。


「時空の神様、このストレージはこうすれば効率化出来ますので容量が増やせますよね?」


「時間停止より状態保存の魔法陣を利用したほうが、負担が少ないみたいです」


「習熟度により出来る範囲が増えるようにしないとダメなんだぁ」


「最初から高機能だと担当する神様の負担が大きい? でしたら習熟度と機能の割振りは担当する神様に決めてもらいましょうか」


「生活魔法は元々ある? でもコチラでも創ったほうが効率も負担も少ないですよ?」


次々創るアタルに合わせて神々も順番に呼ばれてる。気が付けば新しい権能スキルは完成していた。


「う~ん、想像していたより良い権能スキルが出来上がったな!名前はスマフォを参考にしたからスマートスキル? スキルにスキルと付けるのも………@スマート? ダメかな。スマートシステム? スマートシステムでいいかな?」


アタルは独り言のように話した。


「どうせユニークスキルだから他の人間は使えないから、なんでも構わないぞ!

え~い、それではスマートシステムで登録する━━━登録終了だ!よし早速権能スキルを授けよう!」


権能の神はそう言って手をかざすとその手から光の玉が出てアタルに吸い込まれた。


権能スキルが授けられたことをステータスで確認してくれ」


すぐにアタルはスマートシステムと意識する。するとスマフォ画面のようなアイコンが並んだ画面が表示される。そしてステータスアプリに意識を合わせるとステータスが表示された。


「問題ないか?」


「う~ん、名前の表示がシンドウアタルになっているけど…?」


すると生命の女神が、


「確かにノバでは名字や家名を持っているのは、殆どが貴族や王族ですね。アタルだけにしましょうか?」


アタルはこの会話を普通に受け入れていた。

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