ほんの小さな幸せ

樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須

ほんの小さな幸せ

『ただいまー』という声が聞こえ、玄関に向かうと夫が色とりどりの花束を抱えていた。

「え?今日って何かの記念日だったっけ?」と私が聞くと、夫は『珍しく移動販売で花屋さんがいてね。綺麗だから買ってみたんだ』と言って、優しい顔で花を見つめている。

私は「移動販売でお花なんて珍しいわね。花瓶に飾るわね」と言って夫から花を受け取る。花束からいい香りがして、夫がいつまでも離さなかった理由が何となく分かった気がした。


花瓶に入れようと花束の包を開けると、白いメッセージカードに花と青い鳥のイラストが入っていた。

そこには【いつもありがとう】という直筆で書かれたメッセージが添えてあった。


ソファに座る夫に「こんな事するなんて珍しいわね」と言うと、花屋のスタッフから直筆で書いてあげたらどうですか、と勧められたそうだ。


スマホが主流の今、こんな些細な言葉でも直筆で書かれると嬉しいものだ。


テーブルに花瓶を置きながら「明日は何が食べたい?」と夫に聞くと『君の特製ハンバーグが良いなー。俺大好きなんだよね』と、これまた嬉しい事を言ってくれた。

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