第七話 霊障
「その男の子の姿をした存在は、おそらく悪魔ですね。妙子さんのお腹の中の赤子の魂を奪いに来たのか、赤子の肉体を器として憑依しようとしていた可能性があります」
「次男が生まれてまもなくなんですが、寝ている時に長男の地球儀が空中から落下して、その時何故か私は危険を本能的に察知し目をさます事ができ次男の顔に落下してきた地球儀から私が庇って怪我をしました。地球儀の土台が重い金属で重りになっていたので、あれが赤子の次男に当たっていたら間違いなく亡くなっていたはずです」
妙子は震えながら言った。
「妙子さん、その元凶をもたらす存在があなたに取り憑いているようですね。どこで魅入られてしまったのか、もしかしたらその市営住宅の部屋に以前から居たのかは分かりませんが……その邪悪な存在は“悪霊”であり”悪魔“です」
「私に悪魔が……どうして……」
妙子の心が純粋であったこと。
悪魔は人間を堕落させたり、不幸にさせたりすること。
孝之によるネグレクトや経済的虐待により妙子が精神的に追い詰められ弱っていたこと。
悪魔は妙子さんの次男の魂の代わりにウサギの赤ちゃんの魂を奪い去ったが、再度次男の魂を奪いにきていたこと。
市営住宅から引っ越して新築の一戸建て購入してからも霊障があるのはその悪魔が一緒についてきたためであること。
響子は段々とこの家族の闇の深さに迫ってきた。
悪魔は長い間、妙子たち家族を苦しめて家庭不和にしていた。
「悪魔の目的は人に巣くうことであり、破滅させること。妙子さんから大切なものを奪えばあなたは簡単に自ら命を絶つ。そうすれば、その魂を支配できる。一戸建てからこのアパートへ引っ越してきても霊障が続くのは悪魔があなたにガムのようにベッタリとまたつこうとしているからです」
「また!? とは?」
妙子は混乱していた。
今回、孝之が亡くなった原因の一つは長年の多量の飲酒や糖尿病等もおそらく発症していたはずである。
だが、孝之の体の異変も家の中の電化製品がことごとく壊れたり、水回りの故障や家自体の劣化が突然激しくなったのは悪魔が原因であった。
いままでは、孝之、妙子、博行、芳生から運気や生命エネルギーをバキュームカーの様に吸い上げて、この家から出られない状況を作り上げていた。
孝之はサラリーマン時代は出張でほとんど家に居ないため霊障を受けるのはわずかであったが、自営業になると仕事と収入が減ったが、家族がその分必死に補っていた。
性格的にも孝之は仕事をバリバリやりたいという性格ではないため、家族に甘えて益々仕事をしなくなった。
次男はひきこもりになり、妙子は脳幹梗塞や糖尿病などの色々な疾病が発症した。
家長の孝之はサラリーマン時代の退職金はギャンブルで失い、自営業の仕事がないため家で酒を朝から寝る寸前までダラダラと一日中飲み続けてインターネットゲームをしていた。
そんな家長の代わりを長男がして、母親の看病や家では家事もしていた。
皆で頑張ればいつかはきっと上手くいくどころか、空回りし続け状況は最悪な方へと転じていく。
そんな状況から脱するため、長男たちは一戸建ての家を出てアパートで暮らし始めたのである。
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