逆転生活 ~異世界の魔王と賢者は日本に転生し幸せになる事を夢見る~
シシオドシ
第1話 終わりの始まり
光を全て呑み込んでしまいそうな漆黒の石柱が整然と連なって並んでいる。どこまでも正確に均整の取れた完成された建築美が、この場の広大さと相まって神殿と呼ぶに相応しい厳さを醸し出す。
ただそれは少し前までそうであった、と言うのが妥当だろう。
削り出しで精巧な彫刻がされたその巨大な漆黒の石柱は、その美しさを無残な形で散らしてしまっている。無数に並び立つ石柱のいたるところが罅割れ、砕け、えぐり取られてしまっている。中には根本付近から折れて無くなっているものまである。それは本来すべき役割である天井を支えるという役目は最早果たしているとは思えないほどのありさまだ。それでも高い天井は崩れる事無く耐えているのは、この建造物がどれほど優れているのかがうかがい知れるところかもしれない。
床には表面を磨きあげられた柱同様の漆黒の石畳が敷き詰められていたのだが、こちらも同様に広範囲で砕けて荒れ果てている。酷いところでは背丈を超えるほどの隆起や陥没している場所すらもある。最早そこが本来は平面であったのかすら想像するのが難しくなってしまった状態だ。
ガギィィィーーン ギギィン
漆黒の神殿に次々と咲き散る火花。甲高い金属同士がぶつかり合う音に合わせて満開に咲き乱れる。
薄暗い明かりの中に激しくぶつかり合う人影が二つ。
お互いの鋼と鋼を叩き合わせ、縦横無尽に広い神殿内を人知を超える速度で駆け時には高い天井に届くほどに跳躍するさまは、その者たちが常人でない事を知らしめる。
「ちょっと、賢者のクセに剣技が使えるなんて狡いと思うわよ!!」
その内の一人が不満げな声を上げた。若い女性の声だ。
「俺の勝手だろうが。使える物は何でも使うたちなんだよ」
それにもう一方の若い男性の声が答える。
「あなたが剣を使ってたら、そこで倒れている勇者の意味がないじゃないのよ!! まぁどのみちまともに剣も振れない二流だったけども」
「俺はオールマイティーだから譲ったんだよ。こいつ剣しか使えなかったしな。突っ込むことしか出来ない単細胞な馬鹿だから、どのみち俺はサポートに回るしかなかったんだよ。何だかんだいても勇者の肩書は大事だからな」
「何よその理由。そうやって甘やかして突っ込ませるからあっさりと勇者が死ぬのでしょ!!」
女と男が剣と言葉を激しく交わせている少し先に、3人の男と1人の女が倒れている・・・・・・・・いや、死んでいる。
「お前が殺したのだろ。初っ端に一撃で」
どうやら勇者と呼ばれた剣士は、この若い女に突っ込んで行き軽くあしらわれ結果袈裟切りにされたようだ。
「だって、そんなに簡単に斬られると思ってなかったもの。わたしは悪くないわよ。それにそいつ本気で嫌いだったし」
女は頬を膨らませながら、手に持っていた細身の剣を横に薙ぎ払う。
「勇者形無しだな、おい。まぁ、あいつは勇者と肩書はついていたがどうしようもないクズだったからな。殺したことに恨みは無い」
「え!? 良いのそれで? そいつあなたの仲間でしょ」
男が勇者を見て鼻で笑うとさも平然と死んだことを肯定してしまった。そのあまりの素っ気ない男の態度に剣を構えていた女の動きが止まる。
「仲間? 一緒にいるだけが仲間と呼ぶのはある種の侮辱だ。こいつ街や村の若い女を次から次へと無理矢理手籠めにしやがるクズだよ。幾ら注意してもやめることは無かった。勇者だから何でもしていいと履き違えた唯のクズ野郎だ。その所為でどれだけ人々が不幸になったことか。王国の意向さえなければ俺がとっくに切り殺していたほどの下衆だ。そう言う意味ではお前にありがとうと伝えよう」
男の口から出たのは余りにも辛らつな言葉だった。
その口ぶりに女は若干引きつきながらも「ど、どういたしまして」と答えると、男は疲れたように腰に手を当てると「だがな」と話を続けた。
「流石に有無を言わさずに女魔道士を爆殺したのは俺でもないなと思う!!」
「そ、それは、あいつがわたしのこと『くそビッチ』って言ったからよ!! 信じらんない。そんなこと言われたら頭に来るわよ」
女は思い出して頭に来たのか地団太を踏むと、思い出したかのように男へと切り込んでいった。
「うをっと」
横薙ぎの剣を一歩引くことで躱した男が手から火の玉を数個放つ。女が飛んできた火の玉を魔法障壁で塞ぐと、同時に指先から雷がほとばしる。
そんな激しい攻防を繰り広げながらも互いの話は続く。
「あぁ、口悪かったからなあいつ。それは悪かったよ、あいつ勇者狙ってたから逆上したんだろ。まぁこいつも酷い奴だったから死んだこと自体はよかったよ。こいつ酒場とかで言い寄ってきた男をだまして路地裏に誘った後金だけ奪って火あぶりにするような過激な悪党だったからな」
男が持っていた剣を上空に投げ避雷針代わりに放たれた雷を受けさせると、そのまま突進し右の拳を女に対して振り抜く。
「勇者の仲間に真面なのはいないの!?」
呆れ顔で迫りくる男の拳を女は手の甲で逸らし、お返しとカウンターで膝を叩き込みにいく。
「あぁ悪いな。俺の力不足だ。こいつら俺が報告の為に王都に戻るとここぞとばかりに悪事を繰り広げていてな、俺も気が付いたのは大分後だった。何度も王に報告はしたのだがな。勇者に臍を曲げられると困ると王自ら隠ぺいに走ったな」
「最低ね」
「あぁ激しく同意する」
「そうなると女魔導士に巻き込まれて爆死したあの二人、武闘家と僧侶だったかしら。あいつらもやっぱり同類なのかしら。いつもわたしを厭らしい目で見ていたから、死んだときいい気味と思ったわ」
「それも謝っとくよ。あいつらいっつも勇者のお零れもらって喜んでいるようなクズだったからな。貧しい村の子供を足蹴にして汚物呼ばわりするような至上主義の精神破綻者でもあったしな・・・・・・・・・・よくよく考えれば・・・・いや、考えなくてもこのパーティーってクソしかいねぇな。死んで良かったのかもしれない。でもお前がそんな事で怒るなんて以外だな。何言われても冷たく鼻で笑うタイプかと思っていたのだが」
男は上に跳び上がることで膝を躱していた。
女と男がそれぞれの腕を掴み硬直状態になる。
「そ、そんなの許せるわけ無いじゃない。わたしビッチじゃない!! それをよりによって・・・・・の前で・・・・なんて」
女が最後の方で声を潜めもじもじと身をくねらせる。
突然の女の変容に男は怪訝な表情を浮かべては「何だよ!」と訊き返した。
女はキッと男を睨みつけると、プルプルと身を震わせて、
「わたしは処女なんだから~~~~~!」
と、痛い叫び声をあげた。
突然のカミングアウトに男は茫然としてしまう。
女は顔を真っ赤にし涙目になりながら徐々に顔を下げていく。言ってしまったものの恥ずかしさに押しつぶされていく。
「うううううううう」
呻き声とも泣き声とも取れぬ声を漏らす。
男も正気を取り戻し、女が言った意味を咀嚼している内に急激に顔を赤くなっていく。
「なななな、何をいきなり叫んでるんだよ。恥ずかしいだろうが!!」
そして2,3歩後ろによろける。そのある種の自爆攻撃は男に今まで一番の効果をあたえたようだ・・・・・・主に精神的に。
女は自分のスカートの裾をギュッと握りしめ俯いたまま「だって・・・・」と微かな声をもらす。
「ど、どうした魔王?」
女は魔王だった。
因みにここは魔王の居城であり、玉座の間である。
男達は王国の命により魔王軍殲滅に駆り出された勇者の一行で、男はメンバーの一人で賢者と呼ばれる存在である。
長年、勇者たちは魔王軍と戦いようやくここまで辿り着いていた。何度か直接魔王と対峙することもあった。賢者はその都度善戦するも魔王の力が強く毎度押されピンチになっていたが、何故か最後は魔王が「バカー」と叫びながら赤い顔で逃げて行くのを繰り返していた。
「だって・・・・か、勘違いされたくない・・・・もの」
「何だよ勘違いって?」
「そ、それは・・・・」
「それは?」
俯いていた女魔王が顔を持ち上げ賢者を指さすと、
「あなたに勘違いされたくなかったって言ってるのよ!!」
キレ気味に叫ぶ。
言われた賢者はポカンとした後「はぁぁぁぁ!」と叫び声をあげる。
「ななな何で俺に勘違いされると困るんだよ!?」
賢者はベタな慌てぶりを見せる。その口ぶりに魔王は呆れとジト目を賢者に返す。
「ちょっと、本気で訊いているのかしら、それ?」
「何が?」
「分かるでしょうよ!!」
「だから何がだよ?」
魔王が赤い顔で吠えるのを賢者は頸を傾げてみる。魔王は何度か足を踏み鳴らしていたのだがその度に床が抉られていく。
「す、好きな人にビッチだなんて誤解されたくないって言ってんでしょうがぁぁぁ!!」
魂の叫びだった。それはそれは松明の火が何本か消えるほどの。
「・・・・・・・・ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そして賢者は仰け反った。
魔王は顔を背け奥歯を噛み締めている。その時には首まで真っ赤だ。
「いやいやいや、おかしいだろそれ。俺たち敵だぞ。勇者一行と魔王だぞ」
「す、好きになったものは仕様が無いわ」
そっぽ向いたまま口を尖らす魔王。
「だって、これまでも何回も殺し合ってきたじゃないか。それなのに何で?」
「殺してないし!!殺さない様にしてたし!!」
「マジでか!! 道理でいつも追い詰めてくるくせに逃げてくとは思っていたが」
「そ、そういうあなただって本気でわたしのこと殺そうとしてなったじゃないの」
そう賢者は今までの戦いで魔王に致命傷が与えられそうな時、いつもミスを装って助けていた。
「い、いや、それは、その・・・」
賢者がもじもじする。
「何でよ?」
魔王がつま先をトントン付きながら横目で賢者を見る。当然顔は赤い。
「か・・い・・・・かったから」
「え?」
余りの小声に聞こえず不機嫌な声で聞き返す魔王。
賢者は観念したかのように魔王の顔を見つめ。
「魔王がかわいいからに決まってんだろ!!」
堂々と恥ずかしいセリフを口にする。
「にゃあああああああ」
魔王が慌てふためく。
「なななななに、なに・・・・」
言葉に成らない。
「お前が可愛いから倒せなかったんだよ」
真っ赤な顔の賢者が言った。
「ほ、ほんとに?」
「あ、あぁ・・・・・・」
二人の間に微妙な空気が流れる。近くに4人の死体が無ければそれなりにいい雰囲気だ。
「わたしの事・・・・好き?」
上目づかいで魔王が賢者を見る。
「いきなり何言って・・・・」
「わたしは賢者が好き!! 賢者はわたしが好き?」
「・・・・・・・・・・」
潤んだ瞳で見てくる魔王。その真剣な眼差しに賢者は改めて正面を向き直し、
「・・・・・・・好きだよ」
落ち着いた声で言った。
その言葉を聞いた瞬間、魔王の瞳からは大粒の涙がこぼれ出してくる。
「うれし・・・・い、うれしい」
声を殺しボロボロと泣く魔王の肩に賢者はそっと両手を添える。正直何だこれの展開だ。
「泣くなよ」
「だって・・・・だって、わたし」
「ごめん。今まで立場があって言い出せなかった。俺は弱い男だから」
「ううん、いいの。分かってる。わたしも魔王だから言えなくて。会いたいって思っても、会えば殺し合いにしかならないし、つらくてつらくて」
「俺もいつもつらかった。魔王に剣で斬りかかる勇者を何度殺そうかと思った事か」
「賢者・・・・」
「魔王・・・・」
賢者が魔王を抱き寄せると、魔王はそのまま賢者の腰に手を回し抱き合う。
少し時間が経ってきたので勇者の死体から異臭が出てきた。
賢者は静かに手を勇者に向けると炎を打ち出し勇者たちを供養してやる。
暫しの静寂が過ぎていく。
静かに体を離す賢者と魔王。
「ご、ごめん。いきなり・・・・」
「い、いえ。うれしい・・・・です」
お互い目を合わせづらい。恥ずかしくてとても正面から相手を見る事が出来ない。
「えっと・・・・・・どうしようか?」
「ど、どうするって?」
魔王は「どうする」の意味を色々詮索していた。単純に考えてこの後の行動についてだろう、そうなると思いを実らせた相手とすることなど・・・・
頭上から湯気が出る。今にも失神してしまいそうなほどだ。
「あ、あ、あの、まだ・・・・その、早いとは・・・・思うのですが・・・・・・・でも、け、賢者が望むのなら・・・・わたしは・・・・その、いい・・・・ですよ」
指を旋風が起きるほど高速回転させながら、潤んだ瞳で賢者を見る。勇者たちの弔いの火葬の火が魔王を妖艶に彩る。
賢者は照らされる魔王に見惚れていたが、自分が質問した意味と魔王から帰ってきた意味の違いに気付き慌てて訂正を始めた。
「ち、違う。そういう事では無くて、この状況の後をどうすればいいかと・・・・」
そこまで言って、魔王が言った事が実現したら想像したのだろう。賢者は魔王の体につい目が行ってしまった。
魔王は賢者の視線に気づき「そ、そそそれなら、そうと言ってよ!! 恥ずかしいから見ないで!!」と、その場に蹲り両手で顔を押さえる。
もう魔王と言う名の可愛い女の子である。
「すまん。言葉が足りなかった」
頭を下げる賢者。魔王が指の間からチラ見している。
「その、俺たち仮にも敵同士として今戦っていた訳だし。いきなり恋人になりましたっていう訳にはいかないだろ? いや分かっているよ、こうして戦っているが魔王軍が悪いってわけじゃない事は。領土問題の戦争だから善悪がある訳じゃない。ただそれでもこれまで多くの血が流れてきている」
「・・・・うん」
そうこれは善だ悪だのの単純な争いではない。歴とした国同士の威信をかけた争いなのだ。
「今証拠は消したけど、クソどもだが仮にも勇者たちを殺してしまった事でもあるし、王国側も魔族側もはいそうですかって訳にはいかないよな?」
「・・・・うん」
「その意味でのこの後どうしようかってことなんだけど」
そこまで話を聞いたところで魔王がゆっくりと立ち上がる。
「どどどど、どうしよう」
動揺が半端無い魔王が賢者を掴む。
魔王も賢者も場の勢いでお互いの気持ちを言ってしまった手前、後には引けない。今更戦う事なんて以ての外だ。
賢者も魔王も黙り考え込む。
勇者たちが燃え尽きて辺りがまた薄暗くなっていた。
「なんでこうなってしまったかなぁ・・・・はぁ、生まれ変わりたい」
賢者が悲壮感たっぷりの泣き言を口にする。すると、それを聞いていた魔王が目を見開き賢者を指さし「それだわ!!」と声を荒げた。
「どれ?」
怪訝な表情の賢者は何のことか分からず首を捻る。魔王は嬉しそうには話始める。
「それよ、それ!!」
「だから何?」
「今言った事よ。そうよそうだわ」
一人納得したようにはしゃぐ魔王に、全く意味が分からず戸惑う賢者。
「一人で納得してないで教えてくれないか?」
「賢者の言った通りよ。生まれ変わればいいのよ!!」
「ん、なんだって?」
「生まれ変わればいいの!」
賢者は暫く考えた後「ええええええええええ」と驚く。
「ほら、生まれ変わってしまえばわたしたちの敵対関係なんてちゃらになるし。ここで2人とも消えれば相討ちで終わったと思われるんじゃないかしら!? 所詮魔王の名は人間の王族と違って強さによる選任制だからわたしが居なくなっても国としては問題ないし、賢者だってそうなのでしょ?」
賢者は魔王の話を聞きながら「まあ、確かに」と思うがただ一番の難点はそこではない。
「それが出来ればそうなるだろうが、そもそも生まれ変わる事なんて出来ないだろ。どうやってするんだ? 変装してどっか田舎の町で暮らすとかだったら直ぐにバレると思うぞ」
「まぁ、それはそれで楽しそうだけど見つる可能性が高いのは賢者の言うとおりだわ」
「だろ、だから・・・・」
「うん、だからわたしとしてはちゃんと生まれ変わる方向ですすめるわ」
「は? とんでもない事を軽く言わないでくれよ。そもそも生まれ変わりの魔法なんてないし、そんな儀式も聞いたことないぞ」
賢者の言葉に魔王が「ふふん」と自慢げに鼻をならすと、
「わたしを誰だと思っているのよ。歴代最強の魔王と言われた女よ!! わたしに不可能は無いわ」
と、自慢げに胸を張る。
因みに魔王の胸は十分自慢できるボリュームがあるので、賢者の目は必然的にそっちに行ってしまうのは仕方が無い事。
「ホントに? でもそんな生まれ変わっても記憶が無くなってしまったりしたら意味がないだろ。それに魔王とまた一緒になれると限らないし、ちょっと博打要素多くないか?」
賢者の疑問に魔王は「チ、チ、チ」と指を振る。
「わたしの超技術はそんな単純な生まれ変わりではないわ。赤ん坊から生まれ変わるけど、記憶も能力もそして容姿もほとんどそのままに移行される、超転生なのよ」
魔王がどや顔をする。美人はどや顔も美人だ。
「超転生? え、それって・・・・」
「うん?」
「恐ろしく強い赤ん坊になるってことか!!」
「違うわよ・・・・・・違わないけど、違うわよ!!」
「だって、今のままの知識も力も、それに魔力だって持ってんだろ? 破壊的な赤ん坊じゃないか」
「確かにそうだけど、赤ん坊だから絶対量が少ないので赤ん坊並の力よ! まぁでも10歳くらいには魔力とかは今と同じでしょうね。筋力位よ違いが出るとしたら。後、顔やスタイルも育てば今と同じようになるわよ。多少親の影響で髪色とかは変わるかもしれないけど、容姿が大きく変わることはないわね」
賢者が感心する。
「魔王スゲー。マジスゲー」
「でしょう。もっと褒めていいのよ」
ここでふと賢者が疑問に思う。
「でも2人一遍に転生してもその後俺たちはめぐり逢えるのか?」
「いいところに目を付けたわね。ちゃんとこの超転生はそこもカバーしているわ。生まれる時期や場所はある程度特定可能なの。まぁ完全ではないけど、でも、時期はずれても数年くらい、場所は離れていても10km範囲で抑える事が可能よ」
「そこまで可能なのか・・・・・・・ん?もしだけど、俺たち兄妹として生まれたりもするのか?」
「ん~あるかもしれないわね」
「それだと意味が無くなるのでは」
「別にいいじゃない、兄妹だって」
「いや、モラルに反するだろ」
「今更モラルなんてないわよ。わたし魔王だし、勇者殺したし」
「・・・・・・・・」
「どっちにしても今の状況よりはいいでしょ? ましてや兄妹であっても一緒にいれる事には違いが無いわ。と、言うより寧ろ兄妹の方がおいしいのかな!?」
「いやぁそれは流石に、出来れば普通がいいな」
「そう?そうね。普通に賢者と・・・・・・こ、恋人になりたいわね。じゃぁどうする。転生することにする?それとも転生しない?」
「もちろん転生するさ!!」
「ふふ、そう来なくっちゃ!では早速いくわよ」
魔王が手を掲げる。暗かった周囲が青白く光る。床に浮かび上がる強大な魔法陣が光を発していた。魔王がアゲアゲのテンションで極大魔法を行使する。
「転生したら覚悟しなさいよ!!あなたはわたしからもう逃げられないんだからね!」
「ああ、望むところだ。魔王こそ覚悟しておけ。俺がお前を滅茶苦茶幸せにしてやるからな」
「っ!・・・・・・もう。だったら転生したら二人で幸せに・・・・・・・魔法陣展開、次元空間干渉、極致魔法輪廻転生!!」
魔王の声と供に魔王と賢者が光の粒となって消えていった。
漆黒の玉座から誰もいなくなった。残ったのは壊れた柱と白い遺灰になった勇者たちだけであった。
その後魔王討伐がどうなったのか確認に来た兵士が、玉座の間の扉を開けた瞬間風が入り込み、勇者たちの遺灰は吹き飛ばされ、結果全員が行方知れずの身として報告が上がった。ただ、魔王も消息を絶った事で勇者一行と魔王の壮絶な相討ちですべてが掻き消えたのではと噂が流れる。それを裏付けるように魔王を無くした魔族たちは大人しくなり勢力を急速に縮小していったが、同時に勇者一行、と言うよりは賢者が居なくなったことで人間側もそれ以上の侵攻は出来なくなった。
それは奇しくも戦争の終わりを告げることとなったのだ。
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