2
生きていく上では、幾度となく夜が来る。
…昼間は空意地で耐えていられることも…
夜になれば、まるでその闇が誘うように…
心を責め、苛む…!
…そんな、とある深夜。
「…将臣…」
可愛いレースのフリルのついたパジャマ姿で、真っ白い枕を抱きかかえるようにしながら、マリィが将臣の寝室に現れた。
「マリィ…?」
マリィの存在を確認し、ベッドから少し体を起こした将臣は、何故マリィがこの時間にこの場に現れたのか、始めは意図が掴めなかった。
「…、あの…」
マリィは、自分の要求をうまく言葉に出来ず、もじもじしている。
「…どうした?」
…こんな時間にこの場に現れるということは…
「眠れないのか?」
「うん…」
マリィは、自らの感情のはけ口として、きつく枕を抱きしめた。
…何らかの不安から解消されたいかのように。
まるで、目には見えない何かに怯えるように…!
「……」
将臣は対応を躊躇した。
状況から考えれば、これは…明らかに、一緒に寝て欲しいということなのだろう。
しかし、幾ら歳が若いとはいえ、マリィは既に大人顔負けの人格構成が出来上がっている。
それ故に、確かに外見や実年齢は幼くとも、現段階では、将臣はマリィを幼子としては認識していなかった。
…だからこそ、弱っていた。
だが、ここで変に拒んだりすれば、それはまたマリィの心の傷へとなりかねない。
現実と葛藤の狭間で揺らぎながら、将臣は我知らず結論を急いでいた。
…そんな折り。
「…将臣、一緒に寝ちゃ駄目?」
意を決したように、マリィが訊ねて来た。
将臣は内心、やはりな、と思いながらも、返答を考える。
しかし。
ここまで来れば否も応もない。
…答えを引き伸ばせば、それだけマリィが傷つくだけだ。
根負けしたように、将臣が呟いた。
「…、構わない」
「!…いいの!?」
「ああ」
将臣が答えると、マリィは嬉しそうに将臣のいるベッドへと駆け込み、そのまま横になった。
…枕を頭に当てながら、上目遣いに将臣を見る。
「良かった…、もし将臣に断られたら、どうしようかと思ってた」
その瞳は潤み、しかしそれに反して体は震えている。
それを目の当たりにした将臣は、マリィが何故こんなことを言い出したのかを理解した。
(まだ、あの二人を恐れているのか…!)
…父と兄を。
その反応を。
その…存在そのものを。
(…無理もない…)
マリィに太刀打ちできる相手ではないことは確かだ。
それも相手は、力のある実の父と兄…!
(ああまで正面から対立したんだ…
当然の顛末だろうな)
…憐れみを含んだ、その蒼の瞳をマリィに向ける。
するとマリィは、将臣に保護されたことで満足したのか、その眼差しを感謝しながら受けた。
「…将臣がいてくれて、良かった…」
「…マリィ…」
将臣はマリィの美しい銀髪を、そっと撫でるようにしてそれを流した。
その手の温もりに安心したのか、マリィがようやく眠りに落ちる。
「…寝たのか、マリィ」
柔らかく微笑んで、将臣は自らも寝ようと体を横たえた。
…その手に、マリィの手が絡まる。
将臣は、それに応えるように、しっかりとその手を握り締め、マリィ同様に眠りについた。
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