3
「じゃあ、5を持ってるのは…」
「…俺だ」
不敵に笑ったカミュは、ハートの5のカードを、ピシッと指先でその場に飛ばした。
これでカミュの手持ちのカードは全てなくなり、彼の勝ちだ。
これに対して六魔将たちは、負けを認めて、がっくりと頭を抱え込む。
「まさか、二重に止めていたとは…」
してやられた…と、表情に貼り付けながら、フェンネルがハートの4を出す。
…これで、フェンネルは2位だ。
続けて、偶然にも3を持っていたカイネル、2を持っていたシンが続けざまに上がり、最後にハートのエースを持っていたサリアが負けとなった。
「やっぱり、付け焼き刃の知識だけじゃ、経験者には勝てないわね。
でも、いい勉強になったわ。次にやる時は負けないからね?」
「その意気と心掛けは結構だがな、サリア…、お前まさか、それだけで済むと思ってるのか?」
「…え?」
その言い回しから、何やら嫌ぁな予感がしたサリアが思わず怯むと、シンが言葉を受けて続けた。
「分かってるだろ? サリア。敗者には罰ゲーム。…定番だよな?」
「そうだな。…では罰はカミュ様に決めていただこう」
あろうことか、真っ先に制止しそうなフェンネルまでもが賛同したことによって、サリアは諦めと共に、がっくりと肩を落とした。
「…無情っていうか…、もう…是非もないわね…
いいわ、こうなったら何でもやるわよ!
罰ゲームは何ですか!? カミュ様!」
…半ばやけくそ気味、もとい、開き直ったように息も荒いサリアを前にして、カミュはしばらく考えていたが…
やがて口を開いた。
「ならばサリア…、一週間の肘鉄禁止だ」
「ええっ!?」
例え他の罰を与えられても、恐らくこれ以上はヘコまないであろう勢いで、サリアがべっこりとヘコむ。
そんな思いがけないカミュの告知に、何となくアテが外れたような表情をしている、フェンネルとシンを後目に…
その一方で、手放しで喜んでいるのは、言わずと知れた、ただひとり。
…いつもそれによって、多大なる被害を被っている、カイネル本人のみであった。
何となくオチがないまま…
†完†
執筆開始日:2006/01/15
執筆終了日:2006/01/16
【後書き】
これは、かなり前の作品ですね。残りの六魔将である、レイヴァンやユリウスが、まだ名前すら本編に登場していない時に書かれたものです。
この時のキリ番は10000。この頃は割と生活(時間帯の意味で)に、余裕があり、書く意力やスピードも今とは違っていたので、今見ると1日で仕上げていますね。
若いって素晴らしい… 今じゃよほど集中して、なおかつ時間が無ければ書けるものではないし、あの長さでも丸々使えるわけではないぶん、1日では厳しいかも知れませんね(笑)。
ちなみに、突っ込みが来る前に書いておきますと、今回の七並べにおいてのここでのジョーカーの使い方は、個々の読み手様が覚えている、個人のやり方とは違うかも知れません。
筆者である私が覚えているジョーカーの扱い方は2つ。
まずひとつは、ジョーカーを持っている人は、出して欲しいカードの所に出す。そしてそのカードを持っている人は、自分の順番になったら必ずそのカードを出さなければならない上、引き換えにそのジョーカーを手持ちのカードに加えなければならない、というやり方。
そしてもうひとつは、ジョーカーの持ち主が、出して欲しいカードの所にジョーカーを出す。ここまでは前と同じですが、そこのカードを持っている人は自分のターンに、『そのジョーカーの上に、必ずそのカードを出さなければならない』ということ。
この場合、引き換えにジョーカーを手にしなければならないことはなく、この短編では、この、後者のルールを採用した形になっています。
前者、または後者以外のルールで七並べを覚えた方には、ジョーカーの扱いで、誤解を招いてしまう可能性があることを踏まえ、その点で消化不良の方々が疑問を持たれるであろうことを考慮し、甚だ無粋ではありますが、後書きという形で捕捉させて頂きます。
【追記】
1ページ目、『叫』のルビは、『さけ』ではないかと思われる方がおられるかと思いますが、あれは『雄叫び』などの読み方に使われている方で表現しておりますので、『たけ』で合っております。
紛らわしくて申し訳こざいません。
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