濡れ衣1
「あ~~~!!もう!!」
帰宅した私は、イライラして携帯をベッドに投げ付けた。
さっきからずっと携帯が鳴りっぱなし。和矢からの着信で、着信履歴が埋まりそうな勢いだ。
「もう着信拒否にしちゃおうかな……」
うん。いっそ、そうしちゃおう。この先もこんな事が続いたら嫌なので、私は最終手段に取り掛かろうと決めた。
そう思って携帯を手に取り操作をしていたら、今度は電話ではなく、ピロンッ♪とメッセージが届いた事を知らせる着信が。
「あ……」
操作の途中でそんな物が入ったんだから、手が止まらなくなっていて弾みでそのメッセージを開いてしまった。
(しまった!)
今チラッと見えた差出人の名前が和矢だった気がする。IPアドレスを拒否設定し忘れていたみたいだ。
「ん……?」
別に、見たくて見たワケじゃないけど、そこにはなんだか物騒な文字が書かれていた気がして、メッセージを読んだ。
そこには、
『何度も電話したけど出ねーからメールにしたわ。婚約破棄で訴える。これ、ウワキの証拠』
と書かれていた。
私は目を見開き、その文面をまじまじと見る。
「婚約、破棄……?訴える……?ウワキ……?」
突然、身に覚えのない事を言われて私は頭を捻った。
和矢は一体なんの事を言ってるの?私と誰かを間違ってる??
(それにしたって物騒な内容のメールを送っているな)
――ピロンッ♪
またメッセージが届き、次に送られて来たメッセージも訳の分からない物だったら、送り間違えてるよ、位は返してやろう。
そう思ってメッセージを開く。と、
「――っ!?」
そこには私と課長が映っている写真が何枚か送付されていた。
このマンションに二人で帰って行く所。
二人で買い物をしている所。
会社で二人で話をしている所。
会社の会議室に二人で入って行く所。
こないだ遊園地に行った時の帰りの写真まで。
「なに、これ……」
私は気持ち悪くなって携帯をベッドに放り投げた。手が震える。
そこで、ハッと気が付く。
もしかして、最近感じていた視線って、コレ……?
――ピロン♪
また着信が鳴り、慌てて手に取り内容を見ると、
『俺、別れ話に納得してねーからまだ別れた事になってないよな?したらこれ立派なウワキだよな?』
と、自分にはなんの非もない、と言う書き方をしたメッセージが送られて来た。
「人違いでもなんでもなくて、私に送って来てる……」
違う人に私達の写真を証拠に送っても意味がない。そうなると、さっきの婚約破棄、訴える、浮気等々は私に当てた言葉で間違いないようだ。
「は?なに?なんで?」
婚約破棄とか浮気とか、意味が分からない。
私と和矢は婚約なんてしていないし、そんな約束もしていない。結婚の話を持ち出すと不機嫌になるのは和矢の方だったし、浮気をしていたのは和矢の方。私は浮気なんて一度もした事がない。それは誓って言える。
じゃあ、訴えるって……?
和矢がなんの話をしているのか、さっぱり分からなかった。今のこの状況が全く理解出来ない。
――ピロン♪
携帯がまた鳴る。
開くとそこには、さらに信じられない事が書かれていた。
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