まさかのライバル出現!?3


「ふ~ん。課長が迫田課長をねぇ」


「うん……」


いつものカフェ。いつものテラス席。私と千歳はランチを食べに来ていた。

今日は休日だから学生や家族連れが沢山いて、お店の中は結構ごった返している。先程から国枝さんがパタパタ走り回っていた。


「寝言かぁ」


「普通、なんとも思ってない人の夢なんて見ないでしょ?しかも寝言で名前呼ぶって相当じゃない?」


「う~ん。でも夢って、直前まで考えてた事を見やすいって言うからねぇ。ルイちゃんの命日でそれ関連の事を思い出していただけかもしれないよ?迫田課長は幼馴染でお互いの家を行き来する間柄だったんでしょ?そしたらルイちゃんの思い出に居てもおかしくはないし」


「そうなんだけどさ……」


千歳の言う事にも一理ある。

前にテレビで、「目当ての夢を見たい場合、寝る30分くらい前からその事を強く思っていると見やすくなる」って聞いた事がある。


「聞いてみれば良かったじゃない」


「え、何を?」


「迫田課長の事が好きなんですか?って」


「いや~……それはちょっと……」


あの後、私は何とか課長を膝枕から下ろし、自分の部屋に戻った。

戻った後にずっと考えて、このままモヤモヤしたままだと嫌だったから課長に聞いてみようと思ったんだけど、課長の口からハッキリ「愛実の事が好き」と言われたらもう一生立ち直れない様な気がして、どうしても聞けなかった。

だからなんとなく、課長を避けている。


「てかさ」


「うん?」


「なんでアンタはさっさと告白しないのよ」


「え?」


「アンタがモタモタしてるから、課長が他所の女の事考える隙が生まれるんでしょうが」


「うっ……」


千歳が痛い所を突いて来る。


「だって……」


「だってじゃない。もうこの際、ハッキリ告白しちゃいなさい。んでもしフラれたらウチに来な。酒でも愚痴でもとことん付き合ってやるから」


「千歳……」


千歳のぶっきらぼうな優しさが、荒んだ私の心にじんわりと広がって行く。


(男前だなぁ)


千歳の鼓舞に、なんだか勇気が沸きて来た。


「……うん、分かった。私もこのままだと辛いし、課長に告白してみる!」


「うん。頑張んな。上手く行く様に祈ってるから」


「……ありがとう」


このままの関係を続けて行くのは正直もうしんどいし、決着を付けよう。


「お待たせしました!ランチのBがお2つです!」


「あ……」


国枝さんが注文していたランチを運んで来てくれた。


「美味しそう」


「ホントね」


目の前に置かれたランチのBは、こないだ食べたランチAの別バージョン。メインのパスタは一緒なんだけど、サイドに付いている物が違った。


「ごゆっくりどうぞ~!」


国枝さんが勢いよく頭を下げたと思ったらパタパタと走って厨房へ帰って行った。忙しそうだなぁ。


「腹が減っては戦が出来ぬ。とりあえず食べましょうか」


「うん!いただきます!!」


この後、何があっても空腹で切なくならない様に、お腹いっぱい食べておこう。

その後、食後のケーキも全て平らげ、私は千歳に「頑張んな!」と背中を叩かれ帰路に着いた。


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