第4章
紗月も感じる不穏な空気1
「う~ん……」
会社のカフェスペース。
お昼ご飯を食べ終えた私は一息ついていた。
しかし、私の口から出るのは「なんなんだろう?」と言う様な唸り声。
課長との遊園地デート?から数日。その間、私の周りでやっぱりちょっと不可思議な事が起こり始めていた。
まず、何が不可思議な事なのか。
1、新井麗子の不倫現場?を目撃してからと言うもの、新井麗子がちょくちょく私の前に現れる様になった。(普段は受付で見掛ける程度なのにトイレとか帰りが一緒になる)
2、度々、誰かにつけられている感覚&誰かの視線を感じる様になった。
3、和矢から何度か着信があった。
4、課長が妙に甘えて来るようになった。
などなど。
細かい所を上げるともう何個かあるんだけど、そこは割愛。
『4』の、課長が甘えてくる様になった、と言うのは、今までは私が膝枕をされていた側だったんだけど、最近は課長が膝枕を要求してくる様になったのだ。あと、妙に距離が近い時があったり。
(全然イヤじゃないし、むしろ嬉しいからそれは良いのよ。ただ……)
一番意味が分からなく、頭を悩ませているのは和矢からの着信だ。
1の新井麗子も、タイミングがそうさせている、と言われれば納得が行くし、誰かの視線なんて私の気のせいかもしれない。しかし、和矢に関しては別れのメールを送ってからもう一か月以上が経つ。なんの音沙汰もなかったのに、今さらなんの用がある??もし「よりを戻したい」とかの電話なら迷惑だし、私は和矢に話なんてないからスルーを決め込んでいるけど……。
全く気にならない、と言えばウソになるかもしれない。
「お金貸して、とかの電話かな……」
「誰に貸すの?」
横からニュッと顔が現れ、私はわぁっ!と小さく叫んだ。慌てて見ていた携帯のディスプレイを閉じる。
和矢を表示させていたの、見られたかな?
「お金なんて貸したって良い事ないよ。はい、カフェオレ」
自分のコーヒーと私のカフェオレを買って戻って来た千歳が向かい側の席に座り、フーッフーッと冷ましている。
「ありがとう。いや、貸しはしないよ。そんなお金ないし」
「うん、それが良いよ。友達だったら尚更。それがトラブルの元になったりするしね」
友達……。良かった。和矢の表示は見られてなかったみたい。
ホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、
「んで?なんであのクズ男の呼び出し画面なんて見てたの?」
と言う千歳の問いかけに、ギクッとした。
……やっぱり見られてた。
「へ?別に何も?ただ、アドレス消し忘れてたのに気が付いてそれで……」
咄嗟の事に上手く良い訳が見付からず、少し苦しい言い訳になった。
「ふ~ん。じゃあ今ここで消しなよ」
「え!?今!?」
「うん。今。あのクズ野郎の痕跡を全部」
「……分かった」
妙に威圧感のある言い方に私は言う通りスマホを取り出し、千歳の目の前でアドレスと着信履歴、発信履歴、メッセージのやり取り、和矢の全てを消した。
「これで良い?」
千歳が、差し出した画面をのぞき込む。
「……うん。まあ、番号消したって覚えているでしょうけど?絶対に電話に出るんじゃないわよ?」
「はい……」
私の返事に少し納得していない様子の千歳だったけど、それ以上は何も言って来なかった。
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