第6話
「待って下さい、私が悪いのです!」
ミーナは二人のいる部屋の扉を開けてそう訴えた。
それは自分が間違っていた事を認める意味であったのだが、そんなミーナの変化は。
「!????」
言葉にならない疑問がリアナに襲いかかった。
その為彼女は今、なんとも言えない表現を浮かべている。
それは実に当たり前な理由であるが。
(た、対応が暴君から神に変わったのだが……!?)
ミーナの手のひら返し……どころか手がちぎれんばかりの態度の変貌ぶりが、今までの人生で一番の動揺をリアナに与えたからである。
「ミーナ、何が悪いって言うんだい?」
そんなリアナの気持ちを何となく察しながらも、ネルブは落ち着いてそう尋ねた。
と言うのも、ネルブは短く考え。
(黙っていても話は分からないからねぇ……)
そう結論を出したからだが、そんな腕を組んだ彼女に真剣な目で見つめられるミーナは、自分の身分を隠しつつも、リアナに非がない様に述べ始めた。
「私、エドガー君を取られると思ったんです! だから感情的になってしまって……。 でも、さっきの話を盗み聞きしてたら違うと思って……。 そんな事と知らなくて……。 ホントごめんなさい!」
自身の思いを垂れ流すかの様な不器用で感情の籠った言葉だった。
(なるほど……。 とりあえず、面倒な事にならずに済んだみたいだな……)
理解が早かったリアナは、その言葉を聞いて落ち着きを取り戻し、小さく頷く。
そしてもう一人、ミーナの言葉を聞いたエドガーは。
(ミーナさん、僕の事を思って……)
そう静かに喜び、ミーナを見つめつつ微笑んだ。
「お兄ちゃん、ボーッとしてないで遊ぼ~!」
「遊ぼ、遊ぼ!」
「分かった分かった、一緒に遊ぼうか!」
まだまだ元気なレッカーとレイチェルの相手をしながら……。
さて、そんなミーナを見てネルブは。
(これで問題は解決だねぇ……)
「さて、問題解決みたいだし、解散で良いかねぇ……」
と判断、そして笑顔を浮かべ、問題解決を宣言しようとしたのだが。
「「解散やだー、お兄ちゃん、お姉ちゃん達と遊びたい~」」
しかし、わんぱくな子供達はエドガーの手をそれぞれ引きながら、その解散に待ったをかける。
「…………」
その言葉にネルブは困り、腕を組んで無言で考える。
親としては、子供の願いは叶えてあげたいが、だからといって他人に迷惑をかけるのは気が引ける。
だが結局、子供の願いより他人に迷惑をかけるのはいけないと言う思いの方に天秤は傾いた為、子供達のワガママを受け入れなかった。
「アンタ達、ワガママ言って迷惑をかけたら承知しないよ!」
「あの、ネルブさん。 僕は一向にかまいませんよ」
「ネルブさん、私もかまいませんよ。 だって、レッカー君とレイチェルちゃんと遊ぶの、楽しいですから!」
そう気を使ったネルブに、エドガーとミーナは優しい笑みでそう答える。
それは気遣いではなく、二人の素直な気持ちからであるが、特にミーナは子供好きである。
だから問題が解決し、いつも通りに戻った彼女がそう申し出るのは自然な事だろう。
「悪いね……。 それならちょいとお願いするよ。 リアナはどうするんだい? 疲れているなら帰ってもいいんだよ」
ミーナ達への回答の後、そんな問いかけをされたリアナは少し考えた後。
「うむ、私も残ろう」
そう微笑みをネルブに向けるのであった。
(面倒ではあるが、これくらいならかまわないか……)
そんな本音を隠しながら。
…………。
誤解から生まれた騒動の火種はひとまず収束を迎えたのだが、そんな平和を崩しかねない存在が、二人の住むカラカスへと迫りつつあった。
そして、その存在は街に向け、こう呟くのであった。
「兄上、待っていてほしいであります……」
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