第200話 三日後
ポツ……ポツ……。
熱い何かが体に落ちては流れていく。
ポツ……ポツ……。
何が落ちてきているのかはわからない。ただ……
暗い空間をふわふわと漂うルアに、声が響いた。
「ボクちゃん……。」
「レト……さん?」
周りは何も見えないが、ふわりと前から抱き締められたような感覚に包まれた。
「ボクちゃん、良く頑張ったわね。」
なでなでと頭を撫でられるルア。
「でもね、無理はしちゃダメ。ボクちゃんがいなくなったら……皆悲しむことになるのよ?」
「はい……。ごめんなさい。」
「うんうん、素直に謝れて偉いわ。」
素直に謝ったルアに気分を良くしたのか、レトはいとおしそうにルアのことを抱き締める。
「いい?ボクちゃん、これだけは覚えておいて。」
「はい。」
「メタモルフォーゼは便利な力。でもね、強い力は扱い方を間違えると自分を傷付ける原因にもなるのよ。例えば、メタモルフォーゼの重ねがけとかね。」
「で、でも皆を守るためにはあれをやるしかなかったんです。」
「わかってる。わかってるわ。ただ、あれは本当に危険……ってことだけ覚えておいてほしいの。」
「……わかりました。」
「ふふっ、ちゃんとお返事できて偉いわ。……っとそろそろ安全装置の効果が切れる頃ね。」
そしてレトがふわりとルアのことを手放すと、彼の体はどんどん上へ上へと昇っていく。
「ちゃんとみんなに謝るのよ?す~っごい心配してたから……ねっ?」
その言葉を最後に、ルアはどんどん意識がハッキリとしていく。そして目を開けると……彼の顔にポタリと熱い水滴が滴り落ちてきた。
「ル……ア、起きた。ルア、起きたッ!!」
「わぷっ!?」
ルアが起きた瞬間に飛び付いてきたのはリリィだった。瞳から大粒の涙を流しながらルアに顔を擦り付けてくる。
「ご、ごめんねリリィ心配かけちゃって……。」
「ホントに心配したっ!!ルア……ずっと目を覚まさなかった。」
「え、ずっと……って…………。」
「ルア、お主は丸々三日間寝込んでおったのじゃよ。」
「あ、お母さん。」
ガチャリと扉を開けて入ってきたのは、お粥のようなものを運んできた由良だった。
「丸々三日って……ガブリエルはどうなったの!?」
「落ち着くのじゃ。ガブリエルは最後ルシファーが倒した。じゃから一先ずは安心じゃ。……ほれ、お腹空いておるじゃろ?口を開けるのじゃ~。」
「んぁ………んん。」
ルアが口を開けると、火傷しない程度に程々に冷まされたお粥がスプーンで運ばれた。
薄い塩味で食べやすいお粥だ。時折薬草のような香りもすることから、何かしらそういう類いのものが入っていることもわかる。
「どうじゃ?美味しいかの?」
「うん、美味しいよ……スゴく。」
「そのお粥にはリリィが生やした薬草も入っておるのじゃ。回復効果は折り紙つきじゃぞ?」
「リリィの薬草が?」
ルアがリリィへと視線を向けると、彼女は少し恥ずかしそうにしながらコクリと頷いた。
「そうなんだね、リリィありがとう。」
お礼を述べてルアが手を伸ばすが、ベッドに横になっている状態では、リリィの頭に手が届かない。
「あ、あはは……届かないや。」
「……んっ!!」
すると、リリィは膝立ちになって姿勢を下げてルアの手が頭に届くように調整した。
手が届くようになると、リリィの頭の上にポン……とルアの手が置かれた。
「ありがとねリリィ。」
「ふふ♪」
そしてルアがお粥を食べ終えると、由良が今度は衣服を持って現れた。
「ルア、ご飯を食べたあとはお風呂の時間じゃ。」
「お、お風呂!?」
「うむ、一応この三日間濡れた布で体は拭いておったが……やはり汚れはそれでは落としきれんからの。わしが背中を流してやろうぞ~?」
「ひ、一人で入れるよ。って……わ、わぁっ!?」
「ルア危ない。」
ベッドからピョンと飛び降りたルアは、足をもたつかせふらふらと転びそうになってしまう。それをすかさずリリィは蔓で受け止めた。
「ほらの?今お主は病み上がりなのじゃ。無理をするでない。では、リリィやルアを運んでやってくれるかの?」
「わかった。ルア……持ち上げる……よ?」
「うぅ……どうしてこんなことに。」
ひょいとリリィの蔓で持ち上げられ、大浴場へと連れていかれてしまうルアだった。
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