第24話 コスプレ?
とある日の休日……
「ルア、買い物に行くぞ!!」
由良は寝ているルアのベッドへと向かってダイブする。すると、その衝撃で目を覚ましたルアがゆっくりと体を起こした。
「ん~っ……お買い物?」
未だに眠いと主張する目蓋を擦りながら、ルアは飛び込んできた由良に聞き返す。
「うむ、今日は休みなんじゃろ?ならせっかくじゃからいろんな町に物見遊山でもどうかと思ってな。」
「この町の近くにお買い物とかできる場所あったっけ?」
「近くには無いが……少し離れたところには色んな町があるのじゃぞ?」
「ふぇ~……気になるっ!」
ルアはこの歳になるまで、今住んでいる町を出たことがなかった。というのも、今ルア達が住んでいる町の最寄りの町でもかなり遠いところにあるのだ。
それともう一つ、由良がルアの存在をあまり広めたくないという理由もあった。
ただ、当の本人であるルアはこの町の居心地が良いため、大して気にはしていなかったようだが……。
「うむ!!では、支度をして居間に来てたも~。」
「はいは~い。」
ルアの好奇心を惹くことができて上機嫌な由良は、スキップをしながらルアの部屋を出ていった。
その姿を見送ったルアは、のそのそとベッドから降りてパジャマを脱いだ。そして私服に着替えるためタンスの引き出しを開けて、軽くため息を吐いた。
「はぁ……こういうフリフリのとか動きづらいんだよね。」
というのも、オスという存在がいないこの世界では……もちろん服屋でも女性ものしか扱っていない。
例えば、ワンピースだったり……可愛いフリフリがついたスカートだったり……挙げ句の果てにはショートドレス等まで扱っている。
この町の服屋は女性達のニーズに応えるため、多種多様なファッションを扱っているのだ。
しかし、この世界で唯一……ルアにとってはその精神が仇となっているのだ。
「う~……スカートは嫌だし、かといってこの巫女服みたいなのもなぁ~……。」
ルアが開けているタンスの中には、もちろんルアが拾われて来てから由良が購入したもの多々あれば、由良のお下がりも入っている。
その由良のお下がりで代表的なものがこの巫女服だ。由良も巫女服を自分でデザインしなおしたような、オリジナリティに溢れた巫女服を身に纏っている。
手にした巫女服とにらめっこしているルアに、ふとある考えが浮かんできた。
「……いや、案外お母さんの服と似てるし……違和感を持たれないかも?」
そう思ったルアは、試しに白衣に袖を通してみた。
「うん、良いかも。それで……えっとこの袴を穿けばいいのかな。」
ルアは、セットになっている深い緑色の袴を穿いて腰紐を体の前できゅっと結んだ。
そして着付けを終えたルアは大きな鏡の前に立ってみた。
鏡の中には白と緑の巫女服を身に纏った自分が立っている。
「意外と……この袴動きやすい。擦れないし、邪魔にならない。」
もともと袴というのは、武士が自分の足運びを隠すために開発された物だ。命を懸けた戦いに身をさらすのに、動きにくい服を着る理由はない。
故に袴は動きやすく設計されているのだ。
「う~……でもやっぱり恥ずかしいかも。やっぱり……いつものにしよう…………。」
まるでコスプレをしているような気分になったルアは、急に恥ずかしくなり脱ごうとした。
その時…………。
「ルアや~?まだかかるか…………の?」
「あ……。」
なかなか居間に来ないルアを心配して、由良が部屋へとやって来てしまった。
そして二人の目が合うと、お互いに一瞬時間が止まった。
しかし、その止まった時間は長くは続かなかった。
「ぶふっ!!」
「お、お母さん!?」
突如として、由良の鼻から大量の鼻血が吹き出してきたのだ。
「おぅぅ……その姿は反則じゃぁ~。」
「い、今脱ぐからっ!!」
「っ!?!?」
急いで服を脱ごうとしたルアの手を、由良は掴む。
「まっ……待ってたもっ!!そのままで頼むのじゃ。」
「で、でもお母さんの鼻血が……。」
「こんなものすぐに止まるのじゃ!!ふんっ!!」
由良は自分の鼻に回復魔法をかけると、溢れだしていた鼻血がピタリと止まる。
「ほらの?大丈夫じゃ。」
「ほ、ホントに?」
「ホントにホントじゃ。じゃからぜ~~~ったいにっ!!着替えてはならん!!」
「う、うん……わかった。」
半ば由良の勢いに押されて、ルアは頷いた。
「良し!!さぁ、朝ご飯ができておるぞ~、ご飯を食べて今日は買い物ついでに物見遊山じゃ!!」
ルアの手を引いて居間へと向かう由良。そんなことは彼女はこんなことを考えていた。
(くっふふふふ♪よもやルアがわしが
自分のお下がりの巫女服を身に纏ったルアの姿に御満悦な由良だった。
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