2021/05/30

こぼれた涙に恋文を添えて

 永遠に続く今日を生きている。

 朝を、昼を、夜を。

 起床を、就寝を。

 喜びを、怒りを、哀しみを、楽しみを。

 成功を、失敗を。

 日常を、非日常を。

 たくさんのものを繰り返しながら、生きている。

 退屈な日もあるけれど、慣れすらも愛おしく思える日もある。

 そんな、なんてことない永遠の「今日」の中にある、無数の夜の中のひとつを。

 私は、いつも通りに過ごしていただけだった。


 暗い部屋でひとりきり。

 液晶画面の向こう側に広がる世界を覗き、顔を、声を知らぬ友人たちの言葉を聞いていた。

 優しく傷つきやすい人の涙を、何気ない日常を見せてくれる人の表情を、想像するだけで、なんだかこちらまで心を揺さぶられるような気がして。

 ――気づけば、頰に一筋、流れ落ちるものがあった。


 ネットで繋がった、どこか共通点を持つ人々の世界を垣間見て、私の世界も見せることができる、そんな心をちょっとだけ共有できるような箱庭が愛おしくて。

 けれど、深くネットの海に潜れば潜るほど、孤独で。

 海の底で美しい魚の群れたちを見ることができても、魚たちが私を見ることができても、ちょっとした一体感を覚えるようなことがあっても、結局は私が独りでいることに変わりがないような――。

 そんな、切なさに染まった、涙だった。


 それでも。

 画面から目を離さずに、微笑んだ。

 出会えなかったかもしれない人々と出会えたこと、それは私の幸せだから。

 届かない恋文ことばが、そっとこぼれ落ちる。


「皆さんのこと、大好きですよ」

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