第11話 見透かされていたこと
理玖はしばらく私を見つめた
私は彼から目を逸らしたままで
何も聞けないし
話せない
沈黙の末
口を開いたのは私
「学校・・・遅刻しちゃうよ」
時計を見る
「もう遅刻」
理玖は呟くように言う
「行かないの?」
理玖はしばらくこちらを睨むように見て
「いけない
こんな気持ちじゃ・・・」
そう言って
何かを決断したように
一呼吸置いた後話し始めた
「黙っていようかって思った
何も知らない振りをしようって
聞いたところで
辛いだけなら
鈍感になっていた方が誰も失わないって・・・」
理玖
何を言おうとしているの?
怖い
「以前から
思っていたんだ
だけど
問い詰めたりできなかった
リンが困る顔見たくなかったし
健人の事もさ・・・大切だからさ」
理玖・・・気が付いているの?
私は理玖の方を見る
理玖は私から目を逸らす
「初めは二人が仲良くなっていくの嬉しかった
だって
健人は俺の親友だし
俺が好きになった人には
俺が健人を思うよに
あいつの事を好きになってほしかったから・・・
だけど
リンはそれ以上に
俺が望む以上に
健人を好きになっちゃったんだよね」
理玖はそう言って悲しそうに笑う
「そうでしょ?」
理玖が薄っすら涙をためて
こちらを見る
”うん”なんて言えないよ
だけど
否定だってできないでいる
「ごめんね
リン
そんな事を俺に聞かれたら
困るよな・・・ごめん
でもさ、俺
知ってたんだ
まさか、まさかって自分を疑いながら
だけど
少しづつ
疑いが確信になってさ
そんな目で二人を見てしまう自分が嫌だった」
「・・・どうして?
そう思ったの?」
かすれたような声で私は聞く
「俺を待っていてくれた教室で
二人が手を握り見つめ合って話しているのを見て
気が付いた
だから
二人の手が離れるのを待って
いつも戸を開けるようにいしていた」
理玖が見ていたなんて
全く気が付かなかった
それなのに
私は
理玖の親友を見つめ
手を握り・・・どんな顔してたんだろう?
「健人にも遠回しに忠告したんだ
”クリスマスは絶対にキスする”
”好きで好きでたまらない”
”どんなことがあっても
リンの事を好きでいる”
って
惚気るように話してた
だから
最近、俺たちからアイツは離れようとしてくれているんだって
俺の気持ちに気が付いてくれたんだって
分かってくれたって思ってた
でも、違ったのかな?」
そう言うと
理玖は頭を抱える
「昨日、どうしてもリンに会いたくなって
リンの家の前に行ったんだ」
えっ・・・昨日は・・・
理玖の方を見る私
「リンの家の前で
健人がいた
よく見たらリンもいた
二人は抱き合っていて
健人のあんな顔見たの初めてだったから
俺、どうしていいか分からなくて
家に帰った
その場で話しかけたら
全部
俺の大切なもの全部
壊れてしまいそうだったから・・・
何も見なかったことにしようって思った
だけど
苦しくて
リンにメールした
待ってた
ずっと待ってた
変な妄想してさ
最悪の妄想
メール出来ないってことは
もしかして
まだ一緒なのか?
とか
色々・・・色々さ
考えたくない変な事を考えちゃってさ
昨日は寝れなかった
朝、リンに会いに行こうって思った
何もなく
何も変わらない顔で
”おはよう”って言ってくれたら
また
俺は目を瞑れるって
そうしようって・・・
だけどさ
リン・・・あんな顔するから
俺、もうだめだよ
もう限界」
理玖はポロポロと大きな涙をこぼした
苦しそうに息をしながら
胸を抑える
理玖は全てを知っていた
私の不純な思いも
ズルい心も・・・すべて
優しく誠実な理玖をこんなに悲しませた私は
最低な最悪な女だ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます