第6話 ファーストキス

自分の部屋でベッドに転がって

由香ちゃんにもらった袋を見た


指でつまんでスライドするように触ると

ムニムニしていて

なんとなく

気持ちが悪い


スマホが鳴った


”ぴぴぴぴぴ”


驚いて

顔にそれを落とす

慌てて拾ってポケットに入れて

スマホを見る


真田


「はい」


慌てて電話に出る


「あっ出た」


真田から

電話なんて、初めてだった


「慌ててる?

今、ダメだった?」


色んな意味で

私は、慌てている


「いや、そんなんじゃないけど

ビックリした」


真田は、いつもより声が小さい

電話の時って

こんな感じ?

新鮮に感じる


「そっか…電話したのはじめてだしね」


けっこう声がいい


「うん」


気持ちが安定しないから

素っ気なくしてしまう


「今から会える?」


どういうこと?


「えっ?今…」


聞き直すと真田は

あからさまに不機嫌な声になる


「まずいなら

いいや」


ふて腐れる声は、少し可愛い

私は、繕うように


「まずくはないけど」


そう言うと

直ぐに


「今、佐久間の家の前にいる」


窓の外を見ると

門の前に居る


「えっ?」


思わず

驚きが声になる


「出てくる?

俺がいく?」


家に上がるってこと?


学校以外で

二人で会っている所を

誰かに見られたら

ヤバイ


そう言うこと…だよね


「少しなら

来る?」


まだ、お母さんたち帰らないから

こっそり

彼を招き入れることにした


いつから外に居たんだろう?

真田は手を擦り合わせて凍えている


「寒い?」


そう言って

膝掛けをかす


「有り難う」


真田はそれを肩に羽織って

こちらを見て微笑んだ


… …


何?この沈黙


「何か変だね

学校より無口」


「そうだね…寒かったし

佐久間の部屋だし

緊張してる」


そう言って

部屋を見渡す


「あんまり見ないで

急だから、片付いてない

どうしたの?

珍しいね

電話くれたり

家に来たり」


なんだか

目が見れなくて

指先を見ながら話す


「明日は、会えないだろ?

でも、明後日じゃ嫌だから

今日、会いたかった」


そっか…24日断ったから

今日来てくれたんだ


ちょっと嬉しかった


真田は、私に右手を出した

私は、それに左手を乗せるように握った


真田の手・・・冷たい


真田は私を引き寄せた

私はよろけるように彼の腕の中へ

抱きしめられた


ドキドキドキドキと

心臓の音だけが私の中で響く


真田の方を向けない


真田は私の顔を覗きこむ

私は、一瞬、目が合うけど

直ぐに逸らす


「キスしようか?」


何で、そんなこと聞くの?

こたえようがない


しばらく固まって

黙りこむ


「しようか?」


また、聞く


どうすれば良いか分からない


いいの?

私、理玖の彼女だよ

そんな疑問が

頭を巡る


すると

真田は無理矢理、視線を合わせて

ゆっくり

唇も合わせた


体温が、唇から伝わってくる


こういう時って

目を閉じるのかな?

マバタキするのを忘れてしまうほど

目を開けているから

目が乾く


真田もこちらを見ている


しばらくして

彼は少し離れた


そして、ちょっと笑って


「目、開けすぎ」


頬をピンク色にして言うから

可愛くて

私は彼の肩におでこを付けて

抱きついて

クスクスッと笑った


こんなの

反則だよ


完全に、好きになる


真田は優しく

背中に手を回して

抱きしめてくれた


さっきまで冷たくて

さむがっていたのに

もう温かい


私たちは

時間が止まった様にそのまま

二人だけの世界に入り込んでいた

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