第3話 バレンタインデー
理玖と付き合い始めたのは
二年生のバレンタインデイ
バレンタインと言ったら
女子が男子に告白するイベントなのだが
私は逆に
彼からの告白を受けた
それまでは
小学校は違うし
同じクラスになったことも無かったし
同級生だってことは知っているけど
どんな子か?なんて知らなかった
バレンタイン前日
私が下校しようと昇降口へ行くと
他のクラスの女子から声をかけられた
「佐久間さん・・・よね?」
彼女たちは
私の事を品定めするような目で見て
ニヤニヤしていた
正直
気持ちのいいものではなく
私は、不快な表情で
頷いた
「明日、理玖が告るって言ってるけど
どうする?」
その言葉は
思いもよらないもので
どうもこうも思いもできなかった
「理玖の事知ってるでしょ?
サッカー部の・・・えっ?知らない?」
そりゃ
なんとなくは知っている
人気がある男子
男女問わず
だけど
どうして?
私は彼と同じクラスになったことも無いし
話しすらしたことは無かった
「リンちゃん
大丈夫?」
固まったようになっている私に
親友の由香ちゃんが声をかける
ふと我に返り
由香ちゃんの方を見て
次に
ニヤニヤしている他クラスの女子の方を見る
誰かが私の事を好いてくれるなんて
嬉しい
それは
どんな状況でも
どんな相手でも
だけど
その思いを
本人からではなく
部外者から
にやけ顔で聞かされるのは
からかわれているような気持で
嫌な思いしかなかった
「知らない」
私はそう言うと
その場から走って逃げた
結構走った
校門前
息を切らして
ついて来る由香ちゃんに気が付いて止まった
「リンちゃん
足が・・・速い
そんなに早かったっけ?」
ゼーゼー言っている
「ごめん
由香ちゃん」
由香ちゃんは私に近寄って
「理玖くんって
市宮 理玖くんでしょ?」
「由香ちゃん知ってるの?」
「知らない人いないよ
格好いいもん
そんな人から告白されるなんて
すごいよ!!
リンちゃんОKするでしょ?」
由香ちゃんはキラキラした目で見る
私はやっぱり
さっきの女子たちの雰囲気が嫌で
素直に頷けない
「断るの?」
由香ちゃんは険しい顔になる
「だって
その人の事
知らないもん」
ふて腐れるような言い方に
由香ちゃんはなだめるような口調で話す
「リンちゃん
でもさ
好きか嫌いだったら
よくわからなくても
嫌か嫌じゃないかで考えて
嫌じゃないなら、付き合ってみたら?
だって
好きになってくれるってすごいことだし
告白するって勇気だよ!
リンちゃんの何を好きになったとかは
まだ分からないけど
それは
いい加減だって事ではなくて
もっと知ってもっと好きになりたいって言う
入口だって思うの
それを変なプライドとか思い込みで
バッサリ切ってしまうなんて・・・勿体ないと思う
もし付き合ってみて
嫌ならその時に別れたらいいじゃない
もしかしたら
逆に
理玖くんの方が”違った”ってなるかもよ
さっきの女子たちは
ムカつくけど
それは理玖くんとは関係ない
そんな事で
断るなんて
ダメだと思うよ!!」
あまりに真剣な由香ちゃん
いつもは
ふんわりとしている彼女は
こういう時に頼りになる
こういうコメントが出るのは
やはりこの年齢で大学生と付き合っているからなのか?
由香ちゃんは
家庭教師の大学生と付き合っている
そんな
彼女の意見は
説得力があった
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