医者としての僕
今日は本編と直接関係のない話をするよ。
僕は仕事柄、いろんな人を看取ってきた。
身寄りがなく、一人で死んでいく人。
子どもたちが看取ってくれる人。
臨終の間際に家族が間に合わなかった人。
危篤状態が何日も続いた人。
早く死にたいと願った人。
家族だけでなく、親戚まで大集合した人。
色んな死があった。
そのすべてが僕の中に蓄積している。
こうして沢山の別れを経験した僕が見つけた一つの真理があるんだけど。
……あ、そうだ。
頭で理解することと、心で理解することは全く違う意味を持つ。
だから、できるだけ心で理解してくれると嬉しいな。
では、話を戻そう。
全てのことにはいつか終わりが来る。
どれだけ裕福でも、地位があっても、成功を収めても、みんなに平等に終わりが訪れる。
だからどれも、真に重要なものではない。
じゃあなにが人間にとって重要か。
それは、『心の土壌の豊かさ』だろう、と僕は思う。
幸せは、目に見えない種のようなものなんだ。
知らないうちに空から落ちてくる。
だから厄介なんだよ。
たくさんの富があって贅沢ができても、心が貧しければ幸せの花は咲かない。
種は芽を出さずに消えて行く。
だから渇いたのどを潤す物質的ななにかを求め、もがき続ける。
逆に、どんな小さな種も実らせることができる、豊かな土壌を心に持っている人は、いつも人に恵まれ、幸せに囲まれていた。
どうやらそういう人は、すべてが祝福に見えるらしい。
本当に価値のあるものは目に見えず、後になってから気づく。
失ってから気が付くのではなく
どんな小さな幸せの種も実らせることのできる
優しく温かい、豊かな心の土壌を持っていれば
僕の人生はもう少し
違うものになっていたのだろうか。
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