転生魔法剣士の居場所探し

犬城たつき

地球の遥か時空を捻じ曲げた彼方

プロローグ

「……というわけなんだ、父さん!」


 輪郭がぼやけて部屋の背景と混じり合った、楕円型の平面な物体が空中に浮かんでいる。

 うっすら曇りがかった鏡にも見える表面に、白金の髪を短く刈り込んだ体格のいい中年男の姿が映し出されている。

 境目がどこか分かりにくい楕円の枠の中から、男が自分の父親の部屋に飛び出さんばかりの勢いで一方的に話をしていた。


「誰かあそこに行けそうな人間を何人かこちらに寄越してほしいんだ、今すぐに!」


 目の前に浮かぶ通信画面の中の小さく縮尺された姿の息子を初老の男は見つめていた。椅子の肘掛けに肘をついて頭をもたれかけ、しばらく思案した後、豊かな銀白色の髭で覆われた口を開いた。


「事情は分かった。だが、お前が断念した場所だぞ。この屋敷にそんな奴がおるわけないだろう。しかもあそこには大っぴらに行けないのだぞ」


「やはり無理か……」


 他に案がないものか考え込んで、その場をうろうろし始めたのだろう。目の前で息子が消えたり現れたりした。

 なんとか助けになってやりたいが……。肘をつくのをやめ、椅子に深く座り直した時、ふと昨日の筆頭執事による報告を思い出した。


「あやつなら大丈夫そうだ」


「誰だ!」


 息子の顔が大写しで迫ってきた。勢い余って向こう側の画面につんのめったらしい。

 

「明日から夏休みで学院の寮から帰ってくることになってる」


「ああ、話に聞いていたあの子か……。しかしまだ若すぎるだろう?」


「とんでもない逸材だから、心配の必要はない。が、念の為、久々にあれをやるか。早速準備せねばな。また後で連絡するぞ、アザリオス」


 老人が指を鳴らすと、宙に浮かんでいたアザリオスの姿はふつっと消えた。

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