一人前のヒーロー

@suiyue116

第1話 ヒーロー戦隊「闘うんジャー」

「俺は戦う、戦う男だ〜、戦う男は強い〜

 強い男だ〜」

ヒーロー戦隊「闘うんジャー」のオープニング曲に合わせて、歌い踊り、最後にビシッと決めポーズをする5歳の僕の隣りで、眩しい笑顔と共に拍手を送っていた君はおさげ髪でセーラ服を着ていた。

その時の僕にとっての君は、ただの優しいお姉さん

だったのかも知れない…。

だが、それは反面して云えば、当時そこに居て然るべき存在であり、そこからいなくなるなんて思ってもいなかった。

今、そこにある幸せは、当然なんていう当たり前でありきたりのものではなかった。

その為に僕は闘う!闘うんジャーレッドになる。


僕(結城要一)は、些か複雑な家に生まれた。

生物学者の父(結城差異)と専業主婦主婦で多趣味な母(結城華)の間のひとり息子として生まれた。

だが、父は仕事が忙しいのか、家で父の姿を見ることは余りない。

また多趣味な母も家を開けている事が多く、家にいないことが多い。

こんな子ども目線から見て親として機能しない両親の下でも、僕が普通に育ってこられたのは、

父方の祖父と叔母のお陰だ。

両親の家の隣に祖父(結城雄一郎)の家があり、

そこを主屋と呼んでいた。

祖父もまた学者で電子工学を専攻していた。

しかし祖父は、若い頃に大学だけでなく、その時はまだ下町の小さな電気工場の皆と共同開発した電動コイルの発明と特許により、それなりに裕福な生活を送っていた。

祖父は発明家という側面からか、新し物好きで自分の興味がある事にはとことん熱中してしまい、周りが見えなくなってしまう性格をしていた。

そうした性格は人の好みにも現れて、電動コイルから半導体の研究を大学で続けていた際に、助手として日々の研究のアシスタントをしてくれていた若い女子学生を気に入ってしまい、遂にはその女子学生と恋仲に成り、彼女を身篭らせてることになる。

祖父にその時妻子がいなければ何ら問題は無かったのだろうが、そんな都合の良いことなどはなく、

当然、妻子はいた。

それが僕の父と祖母(結城高子)だ。

祖母は祖父の研究を支えていたパトロンのひとりで、

最大のスポンサーとも言える電気会社の娘だった。

祖母の兄(佐原健司)が祖父の大学の同期でもあり、

大学卒業後も親友として交友を続けていて、

祖父が研究に打ち込んでいた電動コイルの可能性を高く買ってくれ、研究以外では何も出来ない祖父の代わりに物心共に援助を続けてくれ、最終的には、自分の妹迄も親友の祖父に捧げてくれたのである。

祖父に言わせると祖母はかなり勝気な性格の人であったようだが、その勝気な性格ゆえに、研究以外には

何も出来ない祖父の家庭を支えてくれてとの事だった。

そんな勝気な祖母に祖父は若い女子学生を身篭らせてしまったことを打ち明けねばならない日がやって来た。



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