第一章 咲村さんの物語(前編)

第8話 不良を見つけた

流石に無茶振りすぎているのを自覚したらしく、まずは情報収集から始まった。言い出しっぺの彼女は遠くから見守るらしい。要は怠けだ。そう反論したのに「私は被害者。」って言われた。なら俺は何?という話だ。


「まあ何言っても始まらないし・・・やるか」


素直に命令に従う、これが自分の短所だと反省してるけど、治すめどはたってないんだよな。


はじめにするのは聞き込みとかか。いやでも不審者っぽいか。第三者が中学生に関わろうとするのも色々危なそうだけど、今はギリセーフで。

ともかくまずは何処にいるか、だ。この街って結構広いし、すごく会う確率は低い気がする。そう考えながら、いつの間にかかなり歩いていた。というか喉乾いたな。自販機どっかあるか。探すまでもなく目の前にあった。今日初めてのラッキーだ。


「あっ」


不良、いた。幸運じゃなかった。これどのくらいの確率だ?百分の一とか。でもターゲットじゃないよな。だって一人だし、普通は取り巻きとかいるでしょ。


「ごっごめんなさい」


「は?」


「あはははは・・・それじゃあこれで、さようなら」


あのときもそうすべきだったことをする。戦略的撤退だ。しょうがない。


「ちょっと待てよ」


怖い。今絡まれてるのか


「ちょっとさあ、なんでもするから泊めてくんない?」


「いや、無理なんでごめんなさい。それではこの辺で」


「だからそうあせんなって。ほら、なんでもするつったらさあ・・・」


急に色目を使いだした。かがんで胸の谷間が見える距離まで来た。


「はああ!?お前何いってんだよ」


「なっ、あんだよ急に。やってもいいって言ってんじゃん」


態度急変っていうのか。まあ昔の名残みたいなもんだな。


「見知らぬ誰かにそんな軽く言うんじゃねえよ。馬鹿なのかお前は?」


「好き放題言うなよ。私だって好きでやってるわけじゃねえんだぞ。こうも言ってくれないと泊めてくれねえだろう?」


「そんなもん言わなくても泊めてやるに決まってんだろ、バーカ」


「子供かよ、お前は」


「町中で喧嘩するほうが・・・」


子供だよ、と言おうとした。あっ。急に冷静になった。俺何やってんだ。いい年して町中で女子高生と喧嘩とか。そういえばいつの間にか野次馬ができてるような、、、


「ともかく、速く行くぞ。」


「ああ」


戸惑ってるのか、野次馬に気づいたのか、ちゃんとついてきてくれた。

あいつも冷静になったか。というかとっさに手を握ったけど大丈夫か?でも逃げるかもしれんし、一応な。


こうして俺は、女子高生を連れて帰路についた。

なんかまた巻き込まれてる気がする。ため息出そう




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