僕はただ二度寝をする 〜とある学生の朝に異世界風の味付けを〜
すす
僕が起きるまで
桜が舞い、青々とした葉が景色を彩り始めた頃。あるアパートの一室に僕はいた。
窓から差し込む朝日は僕を照らし、目を開けることすら億劫になる。だが、僕には絶対に確認しなくてはならない大事なことがあるのだ。
早く確認しろと理性が叫ぶ。
瞼はそれに対抗するかのようにどんどん重くなっていく。数ミリ程しかない皮だというのに、僕はそれに抗えない。
動けとどれだけ言っても動かない様子は駄々を捏ねる子供のようだ。僕はその子供の説得にかかる。
「あのな、確認しなくちゃならない事があるんだ。そこを少しどいてくれるかな?」
「やだ」
「本当に少しで良いんだよ」
「絶対に嫌!」
すると、僕の意識がふと無くなった。
どのくらい時間が経ったのだろう。皆目見当もつかない。それでもまだ僕の前にはあの子供が居る。
「ねえねえ、そろそろどいてくれないかな?」
なるべく優しく話しかける。すると、子供は困った顔をした。
「私がここに居るのは私のせいじゃないもん! あれのせいだもん!」|
そう言って僕の後ろを指差す。
するとそこにはSS級魔獣である
人の寝起きを狙って現れ、音もなく深い睡眠へと誘うなんとも凶悪な魔物だ。そして、そいつへの対抗法はただ一つ!
大事な事を確認すればいいのだ。そうすれば、僕はこの睡魔を封印できる。
しかし、そのためには彼女にどいてもらわなくてはいけない。
「少しでいいんだ。ほんの少し退いてくれれば、僕はコイツを封印できる!」
「じゃあ、カウントダウンして。それで0になったら退く!」
「分かった。行くぞ。3、2、1………」
クソッ、また睡魔の奴が余計な事しやがって。僕は早く起きなくてはいけないと言うのに!
「もう一回。もう一回3から数えて」
そう言いながら、彼女は横になる僕を覗き込んだ。
「よし、数えるぞ。3、2、1、0!」
こうして、やっとの事で目を僅かに開けると、すぐに大事な事そう、時間を確かめた。
時計は6時30分を指していた。
「あ、なんだ……まだ6時30分かよ。」
そう安堵した瞬間、また睡魔にあの世界へと戻される。
ハッ
今度は睡魔と対峙する事なく、僕は目を開けて飛び起きる。
慌てて時間を確認する。7時30分だ。
「やばい! 遅刻だ!」
仕方ない。SS級の魔獣だ。そこら辺の学生が敵うわけがない。
「よし、今日の言い訳は何にしようか」
僕はただ二度寝をする 〜とある学生の朝に異世界風の味付けを〜 すす @Kakiran
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