第三十七話 新規スキルの把握


 探索を切り上げて紅炎の散策フレアウォーク号に戻ってきた僕たちは、さっそく成長したスキルの効果を確認していくことにした。


 買い取った中古品の中にあった鉄の剣一〇本を使い、『数量指定Ⅰ』の効果範囲を調べるため、一本ごとに僕の二歩幅分ずつ放して地面の上に置いてもらっていた。



「効果範囲がどれくらいになるか次第では、使い勝手に違いができそうな感じだと思われるな。広ければエルサ君の破壊スキルの持つ力が色んな意味でとても強力になる」


「土や岩、木材とかを数量指定して一気に破壊できたり、再生できたりしますからね。開拓とか土木工事とかが一気に完了する可能性もあります」


「ああ、そういった可能性も見出せる力になるだろう。そのために効果範囲を詳しく知らねばならない。能力は詳しく調べて把握した方がよりよく使えるしな」



 ベルンハルトさんの言葉に頷くと、エルサさんの隣に行き、鉄の剣を破壊してもらい『数量指定Ⅰ』を発動させて一〇本を意識した。



 『数量指定Ⅰ』が発動すると、スキルの影響下に入った中古品の鉄の剣が次々にエルサさんのもとに集まってくる。



 五本目までは集まってきたか。


 六本目まではこないっと。


 それに、品質の違う物には反応しない感じだな。


 一番近い場所にあった腰に差してる伝説品質の鉄の剣は反応してないし。



「集まってきたのは、発動起点であるエルサさんの持つ一本目から数えて、五本目までということで、一〇歩幅分くらいの範囲が効果範囲って感じですね。それに破壊したのと異なる品質の品はスキルの影響下には入らないようです」



 自分の感じた感想をベルンハルトさんたちに伝える。



「一〇歩幅分か、まだ『数量指定』には成長の余地があるということかもしれないな」


「ですね。スキル名の下に数字がついてますし、数字が上がると範囲が増すかもしれません。でも、一〇歩幅範囲なら結構使い勝手がいいかもしれません。続いて再生させてみます」



 数量指定でエルサさんの近くに集まり、一気に破壊された鉄の剣に触れ、再生スキルを発動させる。


―――――――――――

 再生スキル

  LV:25

  経験値:90/600

  対象物:☆鉄の剣(分解品)


 >鉄の剣(普通):100%

 >鉄の剣(中品質):98%+10%

 >鉄の剣(高品質):78%+10%

 >鉄の剣(最高品質):48%+10%

 >鉄の剣(伝説品質):28%+10%


―――――――――――


 下に出た+10%の補正は、解放したスキルの一つである『武器防具成功率10%上昇』の効果だろう。


 補正まで入れれば、高品質もかなりの高確率で再生可能ということか。



 88%まで上昇した高品質での再生を意識する。



 まとまって浮かんでいた五本の鉄の剣は、それぞれ淡い光に包まれて、再生を終えると地面に落ちた。



>鉄の剣(高品質)×5の再構成に全て成功しました。


>鉄の剣(高品質)


 攻撃力:+55


 資産価値:五〇万ガルド



 再生を終え、鑑定が終了した鉄の剣は、一本五〇万ガルドの資産価値を持つ高品質の鉄の剣に変化していた。



 これだけで二五〇万ガルドの資産価値か……。


 ベルンハルトさんの伝手を使って販売すれば、僕の借金なんてあっと言う間に返せちゃう。



「これはすごい……。この品質の剣は熟練の鍛冶師が作り出す物だ。それを中古の使い古しの武器から再生して品質まで高められるとは」



 再生された武器を鑑定していたベルンハルトさんも、できあがった鉄の剣の質に驚いた顔をしていた。



「これは本当に外に漏らしたらマズい力になってきてるわねー。ロルフちゃんとエルサちゃんがいれば、軍隊の装備の質を高められるし、鹵獲品も新品にできちゃうし、回復薬も材料だけあれば好きなだけ作れる。お口を堅くしないと面倒な人たちに襲われそうね」


「そういうものなんですか? あたしはただロルフ君と一緒にいたいだけなんだけどなぁ」



 ヴァネッサさんの言葉を聞いたエルサさんが心配そうにこちらを見てきた。



 面倒ごとに巻き込まれてもエルサさんを守り切れる力だけは、早急に手に入れた方がいいかも。


 装備をできるだけ高品質のもので固めていくのもありか。



 自分たちの持つ力を知れば、それを何としても欲しがる存在がいるということを改めて真剣に意識した。



「ヴァネッサの言う通りだ。二人の力のことは生涯口外しないことを誓おう。ロルフ君たちもできるだけ力を使う場所は限定するようにしてくれると助かる」


「できるだけ人目のない場所を選んでやります。『数量指定Ⅰ』の範囲が分かったので、後のは紅炎の散策フレアウォーク号の中でやらせてもらってもいいですか?」


「ああ、その方がよさそうだ」



 実験に使った残りの鉄の剣を拾い集めると、僕たちは成長したスキルをさらに確認するため、紅炎の散策フレアウォーク号の中に入った。

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