笑って、サヨナラを言おう

四季 凪

第1話 朝の日常

「また泣いてる」

暗闇から聞こえたこの声は、見なくてもわかる

「また勝手に部屋に入ったのか未華」

そう言いながら寝起きの目を擦りながら時計を見る。

時計の針は7時ピッタリを指していた

「まだ学校まで時間あるんだから寝させてくれ」

そう言って布団に潜ろうとする、と

「なんで起きたのにまた寝るの」

勢いよく被りかけの布団を俺からはがした。

「遅刻ギリギリで登校してて遅刻しないか心配だから起こしに来たのに、何その言い草は」

無理やり俺の手を引っ張ってベットから出そうとする。

仕方なくベットから降りて、着替え始める。

「ちょっと、いきなり着替え始めないでよ」

そう言いながら未華は急いで部屋から出ていった。

未華こと荒良々木 未華(あららぎ みか)は幼稚園からの付き合いだ。今更裸を見られても恥ずかしくもない。

そう思いながら制服を着て部屋のドアを閉めた時、カラン、と乾いた木が落ちる音がした。音がした方を振り返り落ちたものを拾う。(光希)そう書かれた木製札をドアに戻した。

前は俺の母親、暗気 珠喜(くらき たまき)と俺の2人で住んでいた。何故か苗字の最後と名前の終わりが「き」で終わる名前になっている。別れた俺の父親の名前も暗気 良基 (くらき ろき)と苗字と名前の終わりに「き」が付いている。ほんとに変な家族だな。

そんなことを思いながらリビングに向かう

「おはよ」

未華がキッチンから湯気のたった味噌汁をテーブルに置いた。

「朝飯まで用意したのかよ」

朝早く起こしたのはこれが理由だったのか。

「なんで急にこんなことを?遅刻ギリギリなのは1年の頃から変わってないだろ。」

そう言いながら椅子に座る

「今日から2年生なんだから初日から遅刻ギリギリでなんて1年生達の見本にならないでしょう。だから今日から私が起こしに行くことにしたの」

言い終えると同時に未華も椅子に座る。

「別に俺の事を見本にしようとするやつなんて居ないから心配しなくていいよ。今日からって言ったって未華に無理させる訳にも行かないから今日だけでいいよ。」

「私の心配はいいの。生活リズムが整うまでは起こしに行くからね」

そう言い終えて「いただきます」と言い先に食べはじめた。

「いただきます」

と言って俺は一番最初に目に入った卵焼きから食べ始める。


「「ごちそうさまでした」」

2人で声を合わせて言うと未華が皿を片し始めた。

時計を見てまだ時間があったから未華の手伝いをしようと思い立ち上がると

「課題はちゃんと終わってるの?」

皿を洗いながら聞いてきた

「当たり前だろ、課題なんてもうとっくに終わってるよ」

課題は配られた次の日に全力でやって終わらせてる。面倒事は先にやっておくのが俺の主義だからな。

「そういうところはちゃんとしてるんだから、朝起きるのだってしっかりしてくれればいいのに」

「朝は弱いんだよ、どうしてみんな朝早くにおきられるのか全くわからん」

皿の水気を拭き取りながらふと思った

「今日から学校だけど未華は大丈夫なのか?」

「うん、今日は午前中で終わりだから、大丈夫だと思って」

「そうか」

俺は安心した。去年の12月に未華は倒れ2月終わりまで入院をしていて、退院後は家で安静に過ごしていた。

その間に俺は未華がどこか遠くへ言ってしまうんじゃないかと、本気で心配になり、勢いで病室で告白までしてしまった。

「ふふっ。嬉しかったな私が死んじゃうかもって思ってまさか病院で、『俺は未華がいなくなるのは嫌だ。お前が元気になるなら俺は何でもする。未華が笑ってくれないと、未華がいないとつまらない、だから俺と付き合ってくれ〜』なんて言うんだもん」

告白のときを思い出して一気に顔が熱くなるのがわかる。

「恥ずかしいことを思い出させるなよ。あの時は本気でお前の心配をしてたんだからな。」

2人は最後の1枚の皿を拭き終え棚に戻し、「行ってきます」と俺が小学1年生の時に亡くなった母親の仏壇にいい、家を出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る