幼女とその姉(「幼女とクラスメイトと姉」のおまけ)

まこ

冬の寒い日に


 ケーキ屋からの帰り道。

 まだ雪は降っていないが、コートを着ていても結構寒い。


 私と志乃は今日から冬休みである。

 私は高校生になって初めての冬休み。

 志乃は小学生になって初めての冬休みである。


 今日は冬休みに入ったことを祝って、プリンを買いに行ったのだ。

 売り切れていたら嫌なので、開店する時間に合わせて買ってきた。


 3時のおやつに食べるのだ。


 おかげで今日の勉強のモチベーションは高い。



 家の門の少し手前で、コートのポケットから鍵を………


 ………鍵が無い。


 念のためスカートのポケットも探す。


 ………無い。


 ケーキ屋は家から近いので、財布しか持ってこなかった。


 無いことはわかってはいたが財布の中も見る。


 もちろん無い。


「どうした、加乃姉かのねえ?」


 門の手前で立ち止まり、ごそごそポケットを探っている私に志乃が尋ねた。


 志乃はちょうど門の前に立っている。


「鍵が無い…。」


「それはたいへんだ!」


「どこかで落としたみたい。」


「そうか。加乃姉、しゃがんで。」


 志乃の前でしゃがむ。


「念のためだ。」


 志乃は私のコートについているフードの中を探し始めた。

 この子はとても賢いのだけど時々おかしい。


「そんなところには無いわよ?」


「でも、私はおにぎりが入っていたことがある。」


………犯人は私だ。


「無いでしょ? この辺りに落ちていないか探そう。」


 私はそう言って、とりあえず門の辺りから玄関までを探すことにしてあたりの地面を見回す。


 志乃も一緒になって探し始めたと思ったら、


「加乃姉! あったぞ!」


 志乃が叫んだ。


 志乃を見ると、玄関の方を指さしている。


 やはり家を出てすぐに落としたのかと、玄関付近の地面を探すが見当たらない。


「志乃、どこに落ちているの? 見つからないけど?」


「加乃姉、落ちていない。刺さっている!」


 すぐには意味が解らなかったが、気が付いて玄関を見る。


 刺さっていた。門からでも確認できた。


 志乃と玄関に向かう。


「加乃姉、これだと鍵かけた意味ないな。」






____________________

実話だ。

朝出かけるとき鍵をかけようと振り向いたら刺さっていた。

夜家に帰ってきたとき、鍵を開けようと思ったらすでに刺さっていた。

合計2回、犯人は母である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る