第2話 ガチャガチャから神様(2)

いつもと同じ帰り道。


仕事帰りにコンビニに寄り、缶ビールにおつまみを買って帰宅する、いつもと何も変わらない帰り道の、はずだった。


けれど、新月な上に曇り空で星さえも見えない今夜は、人っこひとりいない往来に外灯や自動販売機の人工的な灯りだけがやけに目立っていた。




「・・・あれ・・・あんなとこに、ガチャガチャ・・・?」




それは、店舗の軒下でもなく、ポツンと置かれた<ガチャガチャ>。


不自然極まりない。


遠目から眺め、よく見れば、中に入っているものは何もわからない、外装が白塗り。


怪しすぎる・・・。


しかも。




「いっ・・・!!いち、いち、1万円!!!???」




思わず辺りを見回して、これは一般人を騙して笑うドッキリ企画ではないのか、それとも、非合法な怪しい商売に関するものではないかと何度も周囲を見回したが、1人ワタワタとする怪しい私しかおらず、私が静かにしていれば、そこは深夜の住宅街、静寂に包まれていた。




「しがない会社員が・・・こんな、怪しいガチャガチャに1万円なんて・・・はは・・・馬鹿げてる・・・」




しかも、中身がわからないのに。


しかも、ガチャガチャのくせに、お札を飲み込む横一線の口があるのみで、楽しみである回すハンドルが付いていない。




「・・・ふざけてる・・・。」




ガチャガチャの、ガチャガチャたる所以の楽しみが欠けているなんて。


こんな物に構っている場合ではない、明日は休日、今日は好きなだけお酒を飲み、予定のない明日はゴロゴロ、グダグダ引きこもり週末を満喫するのだ。


私はガチャガチャに背を向けて夜道を歩き始めた。




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