積みプラ狂四郎
しょもぺ
『積みプラひとつめ:しばれ!亀甲戦記マラグナーの巻!』
オレの名前は、『雲寺 積土 (くもでら つんど)』
またの名を、『積みプラ狂四郎』と呼ばれている!
今日も棚からこぼれ落ちそうなほどの絶版プラモを、フタを開け説明書を見てニヤニヤしているのだ!
いつか作る! そう夢見ながら、数十年。気付けば48歳独身。素人童貞。
でも、オレの積みプラスピリッツはまだまだ燃えているのだ!
そんな時、ひょんな事からプラモの神様が現れ、タイムマシンを授かった。
そして、過去へ戻って絶版プラモを捕獲する!……そんな夢とロマンに満ち溢れた物語である。
しかし、このタイムマシンを起動させるには条件があった。
●最初から任意の時代は選べない。だが、少しずつ遠い過去へと行けるようになる。
●昔の紙幣に換金できるのは3千円まで。また持ち込める硬貨も合計して3千円まで。
●過去へ戻れるのは30分まで。時間を過ぎると現代に戻れなくなる。
●過去へ戻る回数は合計5回まで。
「いやいや、オレの求めているのはプラモ同士でバトルするシュミレーションマシーンであって……」
まてよ? プラモでバトルして壊したらオレの大切な積みプラが減ってしまう……それなら過去へ行って絶版キットを捕獲すれば、ますますオレの積みプラは増える……
「神様! あざーす! 早速絶版モデル捕獲へいってきまーす!」
タイムマシンの起動スイッチON!
「昔の映画でこんなのあったなぁ……ファックトゥザティーチャーだっけ?」
軽いボケをかましつつ、積みプラ狂四郎は過去へと旅立った。
「マスターベーション・ゴー!!」
意味不明な掛け声とともに、タイムマシンは時空を歪めて走り出した。
そして到着。時代は1987年。場所はおもちゃのサカタ。
この模型店は比較的大きな店舗で品揃えも良く、模型コンテストやゲーム機、ラジコンなどもあり、子供から大人まで利用できるホビーショップである。しかし、がめつい店主『サカタ』は、売れ残った在庫を抱き合わせ商法で新商品と一緒に売ったり、ポイントカードを作らせ射幸心をあおらせたり、違法にゲーム機を改造して売ってたりしていた。また夜の風俗経営にも携わっていたり、昼と夜の顔を持つ怪しい人物としても近所で有名であった。両親からはここの店には行くなと止められていた。
積みプラ狂四郎は、子供の頃の記憶を懐かしんでいた。
やっとみつけたプラモを買おうとしたが10円足りなくて泣く泣く他人に譲った事。
プラカラーを買ったら中身がドロドロで泣く泣く水でうすめたら使えなくなった事。(ラッカーなので)いつか買おうとしていたプラモを棚の奥に隠して店主にばれて怒られて親を呼ばれて泣いた事。おやこマシンを1~5号まで順番に買っていったら最後の5号が売り切れて泣いた事。などなど。イヤな思い出しかなかった。
「ふふ……マラグナーのプラモといえば、量産型マラグーンも欲しいが、ここはマンドーラ一択。のちに3千円近くのプレミア品となる。そしてゲロフを3機買いだ! ノーマル、ヤクト、レビにそれぞれ組む!」
もちろん、積みプラ狂四郎は積んどくだけで組まないが、それぞれの形態を揃えたいのは至極当然だった。
「やったー! まずはミッションコンプリート……さて、現代に戻ろう!」
タイムマシンに乗り込もうとすると、目の前には見覚えのある少年の姿があった。
そして、その少年が手にしていたプラモはヒゲオンのSメカEメカXメカ、邪道ガン、ギャラン・ドゥ、アブノーマルの売れ残りプラモだった。
「そのおつとめ品はよせ! ヒゲオンは絶対に買っちゃダメだ! 数十年後とある倉庫から大量に発見されクソ値で出回るんだぞーッ!!」
しかし、その声は少年には届かない。少年はレジへと向かう。
そしてその少年が、後の自分であることに気付いて積みプラ狂四郎は泣いた。
つづく。
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