第8話 愛

「この研究所はね、自分たちのお金で運営してるんです。

できた技術を売って、それで成り立っているから

大塚みたいな人間は、入って来れない。

ここにいる限りは、僕も安心です」と、加賀は言った。



「いずれ、日本全体、いや、世界がそうなるじゃろう。もともと、人間は増えすぎたのじゃが。」と、神様。



愛のない、たとえば大塚のような人々は

女の子にモテない(笑)つまり、自分から

地獄に堕ちたがっているので


自然淘汰だ、と神様は言った。



顔を見ればわかる。悪い顔をしているじゃろう、とも。


「でも、大塚みたいなのは生物レベルで生きてるから」と、加賀は冷静に。


「迷惑なんです!本当に」と、ななは

なんとなく、告げる。




そういうのを、昔は大人が制止したのだが

今は、大人がいなくなってしまって。



自分の事しか考えていないから




女の子が困ってても、知らんぷり。




「では、ななちゃんには空を飛べる魔法を

進ぜよう」と、神様はにこにこ。




ひゅ、と右手とステッキを宙に。




空中に描かれた魔法陣に、さっきの

反物質突合式。



model reactive_0d;


modelica.SIunits.phygical.reactive.higgs-environ m;


real R=6.02*10^23;

parameter real P=0.99;


equation;



F=ma;

pV=nRT;



end model;


ななは、風が吹くように

ふわり、と


1cmくらい地面から浮き上がった。




反物質を使って、ヒッグス

環境からマテリアルを解放し

0次元、つまり重力から解放したのだ。





「飛びたい、と思ったら

飛べるんじゃ。空飛ぶシスター、なな」と

神様は楽しそうだ。



「でも、神様。大塚たちみたいな渡来人が

ずっと昔、日本に渡ってきて

戦争を企てて。

わざと日本を負けさせて、アメリカに占領させた。

それで、今、日本経済を侵食している。

税金を上げたり、派遣、なんて

ピンハネを合法にしたり。


それに対抗するには、ここの研究所みたいに

壁の中から、日本以外と仕事するしかないけれど


こんな窮屈な国は、破壊できないんですか??」と、加賀は理論的に述べた。


確かに、いまの日本人の中に

渡来人の文化が混じり込んでしまって。




穏やかな気持ち、思いやりが

思い出されても、急に元に戻るだろうかとも



神様も思う。




「じゃがな、渡来人の文化にも

先祖を敬い、自らを律する、そういうものも

あった。儒教と言うが。



いま、日本にいる渡来人も

それを忘れておる。



争って勝つ、そういう闘争の神経しか

生きておらんのじゃ。



ノルアドレナリンじゃな。君は科学者じゃから

理解できるじゃろ?




それを、オキシとしん系の活性で抑止すれば



渡来人とて、元々好きで闘争しとる訳でなかろう。




刺激に沿っとるだけ、じゃな」神様は

理論的だ。




「この国が嫌なら、わしらの国に来てもいいがのぉ。」と、神様はのんびりしている。




加賀は、その時

心の中に、激しいメロディが生まれて

楽器を弾きたくなった。


チェイスの「黒い炎」のような。


トランペットも吹ける彼である。


いつも、そうして心を満たしていたので

実際に闘争する事もなかった。



神様は言う。「渡来人が愚か、と言う事でもないがな。

自分たちは得したい、誰かが損してもいい。

そういう気持は誰にでもある。


それを、思いやりの気持、オキシトシン回路で補うのが

人間じゃろう。


じゃから、これから国を隔てた争いは減るじゃろ。

国そのものがなくなるかもしれん。

それまで、わが国に来るか?」と、にっこり神様。



宙に、浮いたままのななは、地上に降りて。


「うまく飛べない」と、ひとこと笑顔で。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る